音楽メディアあれこれ:LPレコード


私と同時代の多くの方がそうであったでしょうが、初めて手にした音楽メディアはレコード(LP若しくはEPレコード)でありました。いまでは、「アナログ・レコード」と書かなければいけないかも知れません。

それは子供の頃、父親に買って貰ったテレビアニメのEPであるかと思います。事、クラッシック音楽については、もう少し後になりまして、ふと聞き及んだ「未完成交響曲」と言う曲がどんな音楽なのか是非聴きたく、徳島市内に父親に連れていってもらった時に、ねだって市内のレコード店に連れていってもらい、そこで買いました。(地元にはレコード店は無い)

シューベルトの「未完成」と、もう一つのカップリング曲は良くある「運命」じゃなくて、「新世界」でありました。その時初めて知ったこのドヴォルジャークの「新世界交響曲」にはいたく感激し、何度も聴きました。この曲が、クラッシック音楽が好きになった元かも知れません。

演奏は、ピエール・デルヴォー指揮、コロンヌ管弦楽団と言う、以後見たことも無ければ、おそらく誰も評論もした事も無い盤なのですが、フランスの香りを漂わせた演奏で、今でも素晴らしい演奏だと思っています。また、この演奏は以後の私の好みに影響を与えたかも知れません。

学生時代は東京での下宿生活だったのですが、お金がないのでレコードは欲しくても余り買えませんでした。徳島市内ではろくな品揃えのレコード店が無かったので、初めて秋葉原の石丸電気に行ったときはまさしく感動物でした(今とも大分違います)。買うのは廉価盤ばかりでしたが、その内石丸で輸入盤を買い始めたりしました。でも学生頃は余り余裕も無く、たまに無理して1度に3枚もレコードを買った日には、かなり興奮して帰ったものです。

そのうち、東京で就職したりしますと(ほんの少しですが)余裕もでき、近くにWAVE六本木と言う輸入盤が豊富にあるレコードが出来たこともあって、買うLPに枚数がかなり増えました(当時は、飲みにも全く行かないし、買う物と言えばレコード位でしたから)。

更に家に帰って仕事をするようになると、次第に枚数が増えて行き、シュワン(USA)、ビーレフェルダー(ドイツ)、ディアパゾン(フランス)ら各国のレコードカタログを買って読みふけり(読むって言うのも変な表現だけど、そんな感じだった)、たまに東京に行ったときなど、石丸とかWAVEで外盤をまとめて十数枚、二十枚と買っていました。既にメディアがCDに変わりつつある頃でした。

10数年扱い親しんでなお、LPの取り扱いには気をつけることが多く、常に悩みの種でした。それに比し、CDの優位は明白で、早晩主流がCDに変わることは当然と思いましたが、中には「依然としてLPは主流として残る」と強く主張する方がいらっしゃいましたね。

「LPをかける」のには、非常に多くのことを考え合わせなければいけないのです。考え方によっては、それが楽しみでもありますね。ただ、私も昔からオーディオには興味がありましたが、音楽愛好家で有るよりその前にオーディオマニアであったことは一度もありません。それでもLPはカートリッジにより、凄く音が違うので、安物ばかりですが幾つか持っていて、曲によって変えていたりしていました。

カートリッジを選んで、針先をルーペでチェックして時にはクリーニングして、温度等も考えて針圧を整えて、レコード盤の埃を取って、、諸々。レコードを上手くかけると言うことは、かなり経験と熟練を要する事なのです(「作法」が必要とも言えます)。CDになった今ではそれが逆に懐かしくなってきますから不思議です。そう言う意味では、「LPを演奏する」と言えるかも知れません。

そういう意味では、CDの時代になってこそ、LPは面白いのかも知れません。最近そう思うようになりました。LPの様に取り扱いの難しい、かといって逆にそれが楽しくもあるメディアって、そうありませんから、、昔は嫌でしたが、今となっては結構好きなメディアです。