声楽のリサイタルは久しぶりとなります。雑誌等で来日に演奏家の予定覧を見る度に、ううむ、、と唸りつつ、東京と大阪の近郊にお住まいの方が、心より羨ましくなります。
小濱さんは、私がまだその名を知らない演奏家でした。パンフレットの写真と、舞台に出てきた方とのギャップがかなりあったのですが、その分「期待できそうだ」とおもいました。
プログラムは以下の通りです。
- R.シュトラウス: 万霊節、セレナーデ、明日、悪天候
- ラフマニノフ : リラの花、夢、美しい人よ私の前で歌わないで、至福、春の水
- プッチーニ : 「ラ・ボエーム」より、私の名はミミ
- シベリウス : 夕べ、それは夢だったのか
- 中田喜直 : サルビア
- 小林秀雄 : 落葉松
- プッチーニ : 「蝶々夫人」より、ある晴れた日に
声楽のリサイタルの場合、プログラムの最初は余り調子が出いのが普通で、後半からぐっと乗ってくると言うパターンが殆どなのですが、最初の1曲目から良く声が出ているのに感心しました。
声質は、素直な発声の張りのある声で、何しろとても良く前に出てくる声と言う気がしました。ホールの座っていた席の場所のせいもあるのでしょうが、目を閉じているとヘッドフォンで聴いているごとく、すぐ至近で歌っているように聴こえました。どの曲も楽々と声が出ている感じで、とても安心して聞くことが出来ました。
最初にあまり聞き慣れない歌曲が続き、休憩のあと「私の名はミミ」になりました。オペラのアリアでも充分余裕ある感じでしたが、ただちょっと気になったのは、音楽の流れがプツプツと切れてしまうのです。
そこまでの聞き慣れない短い歌曲では気にならなかったのですが、それはミミの曲になってとても気になりました。要するに曲全体としての物語性、連続性が無く、ここ、あそこのフレーズだけで音楽が途切れてしまう印象を強く受けました。
もちろん実際の音自体ははそんなことは無いのですが、アリアとして音楽を聴いた場合に、その様に、曲としての構成力が全く無い様に思いました。ですから、箇所箇所には上手く歌っているのですが、アリア全体としては感動がとても薄く感じられます。
それは例えばその後のプログラム、「サルビア」等でも顕著で、歌1曲が一つの物語になるべきなのに、全くそうなって居ません。最後のプログラム、「ある晴れた日に」でも全く同じ様な印象を受けました。とても上手いのに、その点ちょっと残念にも思いましたが、素質的には良いソプラノでした。今後に期待いたします。