地方コンサート批評

戸田弥生
ヴァイオリン・リサイタル

1997年6月24日 徳島市にて


久々の「地方コンサート批評」ですが、別にコンサートに全く行かなかった訳でなく、大物ではマイスキーを始め徳島でも幾つかコンサートは有りまして、それらには少しは行ったのですが、あまり書く気がしなかっただけです。

戸田弥生さんは真っ赤なステージ衣装で登場です。諸資料から察するに戸田さんも20代後半、いつまでも二十歳位の写真を使うのもどうかと思います。今だって、凄く素敵なのに。

プログラムは以下の通りでした。

前半に興味深いソナタが並び、後半は殆どそのアンコールピースみたいな、ちょっと変な選曲ですね。で実際も後半は前半のアンコールみたいな感じでした。

戸田さんは1993年にエリーザベト王妃国際音楽コンクール・ヴァイオリン部門で優勝されて、大変注目されました。私は今回、戸田さんの演奏を初めて聞きましたが、なかなか良かったです。コンクール優勝から4年、女盛りと言いますか(何か言い方変だな)、心身共に充実してきた様が何となく見て取れます。

全体として、そんな意気込みの熱の入った大変良い演奏でした。コンサート出だしから安定した透った音色で、テクニックも全く問題なく強く演奏を支えていいました。細かくは、まず曲の全体的な捉え方が、大局的に捉えられていて、結果としてスケールの割と大きなきちっと出来になっていて良かったです。そういう意味で曲が良くまとまっていていました。

曲演奏自体は、各フレーズが非常に流れよく演奏されてゆきます。そこが流麗で見事でもあったのですが、細部においてもう少し自由な動きが有っても良かった様な気がしました。ルバートとか思わせぶりな音楽の「間」が、も少しあったら良かったかな?、とも思いましたが、そういう所は個人の好みもあるし評論には難しい所でしょうか。

演奏会終わりになるに従い更に熱気を帯びて、曲によっては後半爆走気味なのもありましたが、今が充実している証拠でしょう。大変好ましく聞けました。ピアノも良く合わせていて、久しぶりにとても楽しめた演奏会でした。また徳島に来て欲しいと思います。

最近の日本人女流演奏家はどなたも、昔の一時期の印象の様な、線の細い所は全く見られなくなり、とてもしっかりした大きな演奏をする様になりましたね。(今頃書くには、既に時代遅れの認識だと思いますが)事クラッシック演奏家については、日本は完全に女性の天下です。(私はその方が良いですが)

一般的に徳島の様な地方の聴衆は、東京とかの聴衆に比べて品の悪い事が多いのですが、だたこの市民コンサート徳島の主催するコンサートにおいての、曲後の拍手の仕方だけは大いに自慢したいと思います(聴衆が少ない事も有るんでしょうが)。

ピアノが最後なら、その音が完全に消えるまで、ヴァイオリンが最後なら、弓を放してその弓を下にさげてしまうまで、暫く緊張した余韻と沈黙が続き、それから拍手となります。はっきり言ってとても気持ちが良いです。

東京の聴衆ってせっかちなのか、それとも「ここが終わりだって知ってるよ」と自己主張したいのか、我先に拍手し始める様に思うのですが、如何でしょうか?。オーケストラの演奏会になると、変な「ブラボー屋」が必ず居るし、、どちらにしろ他人に不満が尽きない私なんですが。