オークション時計購入事例.3
1910年頃のミニッツリピーター懐中時計


この時計も、落札して実際に品物が届いてから、色々大変だった時計の一つです。

Huguenin-Breguet, Swiss, crca 1910

Interesting 14ct. gold keyless minute repeating dress watch.

カタログ説明文はイタリア語で書いて有るので、転記しませんが、まぁ先の事例と同じく大した事は書いて有りません。

実際送られてきた時計は、見た目は大変状態が良さそうでした。早速ネジを巻いて動かせてみましたが、ちゃんと作動しています。所が、楽しみにしていたミニッツリピーターの音を聞こうと、リピーターを作動させますと、時間とクオーター(15分)を表す音しかしません。

ちなみに、一般的なミニッツリピーターの機構は、2つの音の違うゴングとそれらを叩くハンマーがあり、まず時間を一方の音で知らせて、クオーター(15分おきの時報)を2つのゴングを同時にならすことで知らせ、それに加えるべき分をもう一方の音で知らせます。

その最後の分数を知らせる音がしないのです。裏蓋を開けてムーブメントを観察してみました。一方のゴングが途中で修理して繋いだ後がありますが、ムーブメント自体は悪くない感じです。分表現のハンマーは動いているのですが、それが、もう少しの所でゴングにあたっていない様でした。

おまけに、そうしている内に風防がぽろりと取れてしまいました。(あれ、あれ、、)早速いつも行っている修理店に持ち込みました。普通風防はちょっと大きめのをはめ込んで有るらしいのですが、これは接着剤で止めてあったらしいとの事です。

そしてテンプ回りのオーバーホールはしてもらいましたが、このミニッツリピーター関係の所は、「複雑で簡単には手が出せない」との事で、やむなく東京のデパート等に何店か時計修理店を出している、三起と言う店にもっていきました。

まえここに行った時は、良く知っている方が応対してくれて良かったのですが、この時対応してくれた若い人は、ダイアルに"Huguenin-Breguet"と書いてあるのに、いきなりブレゲのカタログをとりだして見始めました。要するに、普段は預かった時計を正規代理店に取り次ぐ事しかやっていないと思われました。

「初めにも言ったけど、これは1910年くらいの時計で、ブレゲでも無いと思いますよ」としつこく言うと、こんどは「修理できるかどうか分からない」と言い出しましたが、とりあえず預かってもらいました。

暫くして技術の方から電話があって、鳴らない理由は歯車がかなりすり減ってしまっているから、との事です。歯車から別に作らなければいけない(確か二枚くらい)から、時間がかかるとの事でしたが、修理してもらいました。修理価格は九万円でした。これはしかたが無いところでしょう。

私自身はこれはあまり失敗事例だとは思って居ません。修理代はかなりかさみましたが、結局は気に入った時計が手には入ったからです。価格も、修理代を考慮しても普通にミニッツリピーターの懐中時計を買うよりは幾らか安いでしょう。オークションでも、東京のショップで買った方が安いよ、て言う様なのも結構ありますから。

ただ、この様に、その時計に明らかに欠陥があっても、カタログにもコンディションレポートにも記載されないと言うことは結構有る、と言うのが私の経験です。恐らくそういう事が有るから、書面による入札の私が比較的安価に落札出来たのでしょう。