冷蔵庫を利用して、簡易ワインセラーを作る。
家庭用の電気冷蔵庫をちょっと改造して(改造と言うほどでも無いけど)、ワインセラーとする事は、以前から結構試されている事で、その話も時折聞き及びます。私のセラーは離れの棟に有るので、夏には手元に小さくて簡易な物で良いですから、温度を14度位に固定できるワイン保管庫が前々から欲しくありました。
白だと出してすぐ飲める温度、赤だと夏出してデカンタする(デカンタもその温度にしておくのですが)と丁度飲み頃になる温度に、いつも管理しておくととても便利ですから。それに、飲み残したワインを手元に保管しておくのにも、良いですね。
そう言う訳でこの夏、小さな冷蔵庫改ワインセラーを作ってみましたので、以下に報告しておきます。先にも書きましたとおり、こういう事は先人の方々が既に以前からやられている事ですので、私のは単なるその一例にすぎません。
「冷蔵庫改ワインセラー」の作り方
基本的に、「冷蔵庫改ワインセラー」の作り方は非常に単純で、普通の冷蔵庫に温度によって電源をオン・オフする制御装置をとりつけるだけです、とても簡単ですね。本当なら冷蔵庫に付いている温度コントローラで制御出来ると良いのですが、普通の冷蔵庫の場合、十数度に設定するのはちょっと無理みたいです。
そこで問題は、その制御装置をどうやって作るかですが、自分で設計できる「電子回路に思いっきり詳しい人」以外は、秋葉原なり日本橋に行って、その目的に合ったキットを買ってくるのが一番簡便です。
私はこの前大阪に行ったので、日本橋の共立電子で温度計モジュール「TX-100」と、その制御用基板キット「TM-01」を買ってきました。この組み合わせはなかなか高機能で、温度計としては 0.1度刻みで計測し、ある温度以上、またある温度以下でのオンオフの制御、時計の機能、華氏での作動、加えて外部へデータをシリアルデータとして出力できコンピュータにも接続できます。
実際にはそんな色々な機能は必要ないのですが、他に適当な物が無かったのでこれにしました。それでも、あと必要なケース、電源、その他こまごました部品を合わせても1万円はしなかったと思います。ただ、キットですので、最低半田ごてが使えないと組み立てられません。あとシャーシ加工の経験も必要です。
ここで、私が使用した品物をちょっとまとめておきます。
必要な物リスト
- 1ドアタイプの冷蔵庫(安い物で1万円位)
- 温度計測モジュール、TX-100(カスタム)
- 専用制御基盤キット、TM-01(ワンダーキット)
- 5V電源、シャーシ、その他部品
上記部品の入手先ですが、ワンダーキットのTM-01は、日本橋か秋葉原の色々なキットを取り扱っているお店で入手可能な筈です。カスタムのTX-100は、TM-01が置いて有る所には有るはずです。良く覚えていないのですが、TX-100が4千円位、TM-01が2千円位だったと思います。
上記部品が見つからない方や、地方の方は、大阪日本橋の共立電子シリコンハウス(06-644-4446)に連絡してみて下さい。通信販売が可能です、「ワンダーキット」は共立電子が作っていますから。
本来なら、TX-100専用の外部センサーが必要ですが、売っていなければ、本体から取り外したセンサーで使えます。ただしケーブルは1m半くらいが無難です。
あと、5Vの電源としてDCアダプタ、シャーシ、それともし温度設定等を、シャーシを開けずにフロントパネルでやるためには、その為のプッシュスイッチが必要になります。
左が、組上がった温度制御コントローラーです。このシャーシ加工を含めた組立は、大体半日で出来ます。
温度計モジュール「TX-100」はセンサーのサーミスタが内蔵タイプの為、外部温度を測るときは内蔵センサーを外してオプションの外部センサーを取り付けるように説明書に有ります。
私はそれを買い忘れた為、取り外したサーミスタを使いましたが、とりあえずは問題は無い様です。(キャリブレーションは必要です)
余談ですが、温度センサーには何種類か有りますが、ここで使っているサーミスタはあまり温度に対してリニアでないと言う話です。ただこういった使用目的には、それはあまり関係有りませんね。
それとある本によると、TX-100はサーミスタの検出に高周波を使っているそうです。従って、あまりセンサーケーブルは長くしない方が良いでしょう(多分2mくらいまで)。ケーブルにあまり容量があると誤動作するそうです。
この制御装置は、要するに温度によってスイッチをオンオフできれば、とにかくどういう物でも良いので、同じ様なキットや完成品があればそれを利用しても良いです。秋葉原や日本橋の詳しそうな所で聞いてみて下さい。
使用する為に利用した冷蔵庫は、小さい立方体様の、とにかく一番安い(1万2千円程でした)1ドアタイプの物です。こういう場合はとにかく安物で、機能が単純な物が良いですね。
取り付けは全く簡単で、センサーを冷蔵庫内に入れて、その冷蔵庫の電源をオンオフ制御するだけです。私の場合、センサーケーブルは細いので、堂々とドアの所から入れています。
運用経過は非常に良好で、設定温度14度の場合、13.8度から14.0度の間で完全に安定しています。その割には電源のオンオフはあまり頻繁ではなく、夏期でもそのサイクルは1時間弱の様です。
「冷蔵庫改ワインセラー」の適材適所
ワイン専用の冷蔵庫は以前から売られていますが、価格が高いのが難点です。最近「24本入りの低価格ホームセラー」と広告された専用庫も発売されましたが、それでも定価9万8千円です、少なくとも私には「低価格」とは考えられません。(2割引で買えたとしても消費税を加えて82320です。ワイン1本当たり、3430円になってしまいます。)
これは一般用冷蔵庫の価格を考えると、明らかに割高です。当然ワイン専用という事で、湿度や振動の事を考慮しあるのでしょうが(それでも大した事はやってない筈なので)、それを考えた上でも高いと思います。
私はそれらワイン専用の冷蔵庫を所有して居ないので、自分の意見は持ち合わせて居ないのですが、その様なワイン冷蔵庫でも「保管は可能だが、そこで熟成させる事は無理」と言う、ワイン上級者の方々の一般的な意見です。(理由は分かりません)
もしそうだとしたら、専用市販品は冷蔵庫改ワインセラーと何処が違うのでしょうか?。温度変化はセンサーが優秀な為非常に安定しています(0.3度以内)。そのセンサーのサーミスタは殆どむき出し状態で測定していますので、ガラス瓶の中のワインでは更に温度変化が少ない筈です。
湿度は庫内に水を張っておけば、概ねOKとの事です。最も私の場合は、一時保管という事で割り切っていますから、特に何もしていません。振動はあまり無い様なので、全く気にしていません。そこで熟成させるほど長く置くのが目的ではなく、飲むときまでの保管とすれは、どちらにしろ気にするレヴェルでは無いはずです。
以上、冷蔵庫改ワインセラーの薦めみたいな事も書きましたが、ここでその長所と短所を考えてみます。何と言っても一番の長所は、とにかく安くあがることです。私は最も安い冷蔵庫(1万2千円位)を使いましたので、総額2万円ほどで出来上がりました。
今一つは、当然ながら、後で不要だと思えば、ちゃんと冷蔵庫として使えることです。何かちょっと馬鹿らしいですけど、でもこれって凄く意味が有ることだと思います。
反面、短所は収納がうまくできない(要するにあんまり入らない)という事ですね。家庭用冷蔵庫はいろんな出っ張りがあって、ワインはうまく入りません。
色々考え合わせると、ある程度以上(おおよそ20本以上)のワインを保管したい時の主たる装置としては、やはり市販のワイン専用庫が多分良いでしょう。先に「24本入りの低価格ホームセラーの場合、ワイン1本当たり3430円」と書きましたが、10年使用、夏を越すためとして年1回転と考えると、ワイン1本あたり340円少々となるわけです。
でも以下の様な場合には、冷蔵庫改ワインセラーも是非検討してみて下さい。
また、逆に以下の様な場合には、さけた方が無難でしょう。
- あんまり入らなくて良いから、とにかく安く(2、3万で)保管庫が欲しい場合。
- 使っていない冷蔵庫が有る場合。
- 手元に一時的なサブの保管庫が欲しいが、高い専用機は買えない場合。
- 電子工作が出来ない人。
- そこに長く(1年以上)、同じワインを入れておく予定の人。
- 心配性の人。