ワイン図書目録:R.パーカーJr.の本:
Burgundy(邦題:ブルゴーニュ)


ロバート・パーカーJrの「ボルドー」と並び立つ著書「ブルゴーニュ」です。少なくとも私の場合、ある意味で一番有り難い本であったと言えるでしょう。

ブルゴーニュはボルドーにましてその複雑さで人を悩ませているワイン群です。つまり、ボルドーでは「畑(シャトー)」と「年代」で良かったパラメーターが、ブルゴーニュでは更に「作り手」が加わる訳です。しかも「作り手」は数百ケースしか作らない小さなドメーヌから、世界に名を馳せている大ネゴシアンまで、星の数ほど有るのです。

そしてその中では、同じ「シャンベルタン」でも、例えばカミュが作るワインとルソーのワインでは天と地ほどの差があると、多くの人が感じるはずです(そうだった、値段はそう変わらないかも知れないが)。

この複雑怪奇ながら、誠に魅惑的なブルゴーニュワイン探求に向かうなら、やはりまず第一にこのパーカーさんのブルゴーニュを於いて他は有りません。

内容は大まかには3部に分かれていまして、まず最初に作り手毎の解説と評価がなされています。ブルゴーニュは結局の所、作り手の良し悪しを憶えなければ駄目なのですが、その為に参考にする本があまり有りませんでした。
唯一、セレナ・サトクリフのブルゴーニュワインと言うポケットブックが有りましたが(翻訳は今は亡き鎌倉書房から出ていました)、明確な評価は避けていまして、その点ではパーカーさんのは遥かに情報量も多く、かつ分かりやすく実用的であります。

二つ目は地域の解説です。地図が含まれており、大変興味深いし基本的情報量も多く役に立ちます。各部分の解説も(今となれば)大変、当を得たものであると思います。

三つ目がヴィンテージについての解説であり、特に83年以降については各作り手の各ワインについて「ボルドー」の場合と同じく、100点満点法にてスコアをつけて評価をしています。「ボルドー」の所でも書いたとおり、各ワインの評価については、各人の好みも有ることだしあまり「がちがち」に考えることは無いでしょうが、大まかな評価、たとえはヴィンテージについてなどは、結局の所、彼の指摘する所は概ねその通りと思える所、大です。

ちょっと残念なのが、89年以降を除いて白ワインのワイン個々の評価が無いことです。もっともただでさえ厚い本、それらをも含めると2分冊にしなければいけないでしょう。この部分は「バイヤーズガイド」にて補われます。

結局の所、魅惑的なブルゴーニュワインを探訪するにあたって、現在欠くことの出来ない本と言えます。読み物の部分が多いので、翻訳が出ているのは大変有り難い事です。監修のシンガーさんと出版元の飛鳥書房さんに感謝いたします。