今年(1998年)の6月に、ワイン評論家のR.パーカーJr氏が初来日しました。折しも空前とも言えるワインブームの日本にあって、色々なイヴェントが催されまして、彼もずいぶんと忙しかった様です。私もどれかに参加しようと思っていまして、当初25日夜のブラックタイ・イブニングを考えていたのですが(24日夜のイヴェントよりは人が少ないから)、事情で家を空けられなくなってしまい、一時は行くのを諦めていました。
6月になって、24日午後2時からの「パーフェクト・ワイン・テイスティング」に、「席が空いている」と言う事と、「人が少なく芸能人とかあんまり来ない」と情報を受けました。
横浜の2時からのイヴェントなら、徳島からでも日帰りで何とか可能なので、暫し考慮の末(会費が大層高いので)、知り合いも何人か参加の事ですし、行くことにしました。
画像は、テイスティング記録用紙を挟んであった台紙に、後でサインをして貰ったものです。
このテイスティング会は、過去にパーカーが100点満点を付けたワインばかりを10本集めて、パーカーさんのコメントと共にテイスティングしようと言う、まぁバブル時期を彷彿とさせるテイスティング会です。
ワインのリストは試飲した順に以下の通りです。(右画像は、そのワインリストです。ちょっと読めないですね。)
- Mazis Chambertin, Hospices de Beaune cuvee Madeleine Collignon 1985 (Leroy)
- Cote Rotie La Landonne 1985 (Guigal)
- Hermitage La Chapelle 1978 (Paul Jaboulet-Aine)
- Chateau Haut Brion 1989
- Chateau Beausejour Duffau-Lagarrosse 1990
- Chateau Latour 1990
- Chateau Leoville Las Cases 1982
- Chateau Cheval Blanc 1982
- Chateau Mouton Rothschild 1982
- Harlan Estate Proprietary Red Wine Napa 1994
実際には、90のラトゥールはパーカーさんは確か98+とかの評論で、これだけは100点満点ではありませんが、それ以外は本当に100点をつけています。まぁラトゥールにしても、一般的な評価がパーフェクトに近いので、何の文句も有りません。
上記ワインの写真は、
「試飲パーフェクトワイン、ラベル写真集」
をご覧下さい。
待つこと暫し、2時過ぎに前の雛壇に現れたのは、向かって左から、主催のA.シンガーさん、通訳役の堀賢一さん、そしてR.M.パーカーJrさん、次にトロロン・モンドのマダムのクリスティーヌ・バレットさん、ボルドーのネゴシアンのドミニク・ルナールさんでした。
まず、クリスティーヌ・バレットさんの話、そしてドミニク・ルナールさんの話があって、やっとパーカーさんの話です。
ワイン評論家になったきっかけなどの話がまずあり、その後「偉大なワインはどの様にしてつくられるか」についての話、続いて「偉大なワイン(パーフェクトなワイン)とは、どうあるべきワインか」について話が有りました。
まず「偉大なワインはどの様にして作られるか」ですが、これには4つの条件を挙げていました。実は概ねは、最初にクリスティーヌ・バレットの話であった事とほぼ同じなのですが、
注目すべきは[4]です。良く、某ワインコンサルタントが指導したワインは、皆同じ様なワインになってしまう、と言われていますが、その様なことは余り良くないと(実はやはりパーカーさんも)思っているようですね。
- 偉大なテロワールで有ること。
- 収量の制限をしてること。
- 葡萄が完熟していること。
- 作る人の考え、姿勢。(これが、畑の個性を引き出す。)
どういう姿勢かと言うと、大切なのは「人があまり関与しない」と言うこと。没個性になる様な、醸造テクニックを使わない、と言うこと。ただ、比率的には、[1][2][3]が90%で、[4]が10%だそうです。
次の「偉大なワインとはどうあるべきか」と言う命題は、いかにもパーカーさん的表題でもありますね。8つ(+1)の条件を挙げていますが、こちらも内容を箇条書きにしてみます。
- 口で飲んで素晴らしい以外に、知性に訴える物がないといけない。 (単に美味しいだけでなく、複雑で、多面的でないといけない。)
- 常に興味を惹かせる物でないといけない。
- 凝縮したテイストでありながら、重く(heavy)あってはいけない。
- 口に含むごとに、ますます広がって美味しくなってゆかなければいけない。
- ボトル熟成の可能性が無くてはいけない。
- 独自の明確な個性を持っていなければいけない。
- 普遍的な魅力を持っていなければいけない。
- ワインの中の色々なテイストが渾然一体となって、調和を持っていなければいけない。
- [追加分]テロワールをうつす鏡でなくてはいけない。
同列に並記する事などとかに、少し疑問も無きにしもあらずですが、まぁまぁ妥当な所でしょう。でもパーカーさんが、[3]を挙げたのはちょっと意外でした。「カルフォルニアを含めたニューワールドのワインは美味しくはあるが安易に重くなりがちで、今後そう言う風にならないように望んでいる。」との事でした。
「カルフォルニアワインでは、100点は2回しか付けて居ない」と言っていました。いわゆる「パーカー好み」には高得点は付けるけど、100点はさすがにボルドーやローヌ程にはなかなか付けないんですね。
さぁ、お話がここまで終わって、やっとお待ちかねのテイスィングです。
いずれ劣らぬ素晴らしいワインのオンパレード、「テイスティング・レポートも念入りに」と思うのですが、まぁ、こんなワインに私などがどうのこうの言ってもしょうがないので、省略します。(ホテルの名が入ったワイン・テイスティング記録シートが付いていまして、書くことは結構書いたのですが、、)
参考までに、ワインは全てデカンタされた後、元のボトルに戻され供されました。デカンタは、入室した1時半の時点で、先のワインリストの後半の5つはデカンタ済みでした、前半の物を1時半頃にデカンタしていました。
大方の人の感想とは違うかも知れませんが、一番ジーニアスな点を感じたのはマジ・シャンベルタンでした、そして、ジャブレのシャペルです。
お話が終わり、試飲が始まったのは4時位かと思います。後の方の、若いボルドーは良いのですが、マジ・シャンベルタンはもうちょっと遅くデカンタして欲しかったです。出てきたときはまだ良かったのですが、出来れば、ここまでの過程のテイストも味わいたかったです。
私は、ある種の金属的なテイスト、また過度にスパイシーな後味などから、「シラー嫌い」を自認していましたが、今回のこの2つのワインを飲んで、(この様な素晴らしいシラーに関しては)この旗は降ろさざるを得ませんでした。
会が終わって、パーカーさんにサインとかしてもらった後、通訳の為、殆どワインを飲んでいなくて、後で試飲していた堀さんと少し話をしました。私の質問にもちゃんと答えて戴き、とても楽しかったです。
所で殆どの方が、グラスに半分位ワインを残していまして、残したまま帰られて居ました。
大体の方が帰っても、私たち数人はしつこくワインを飲みながら話していまして、その時、知り合いの方のアドヴァイスを受けて、余っているワインを集めて(各ワインをミネラルウォーターの瓶に詰めるのです。100点ワインのスペシャルブレンド!!)持ち帰りました。
もっと皆と話がしたかったのですが、最終の飛行機の時間に間に合わなくなるので、泣く泣くホテルを後にしました。
持って帰ったワインは、翌日夜、うちの奥さんと飲みました、さすがに凄く美味しかったです。もっと集めて帰れば良かったなぁ。