xiphioのワイン雑記帳
97年秋冬、ワイン特集雑誌&ムック本、総まくり
97年の秋から年末にかけては、各雑誌のワイン特集や、ワインに関するムック本がとても多く出版されました。これもワインブームの現れですね。
で、何の因果か、「しょーもない気がする」と思いつつも、見かければついつい、偶然見かけなくても噂を聞けばどうにか探し出して、その手の雑誌を色々買ってしまいました。今になって数えてみると結構有るんですね。
一応「総まくり」と大風呂敷をたたいていますが、本当はまだ幾つか有りまして、「手にしたけど、本当にしょうもなさそうだったので、流石に買えなかった」とか、「こちらでは売っているのを、結局見つけられなかった」、とか言う雑誌が3、4種有った様に思います。
本当言いますと、そんな過去に出たワイン特集をやった雑誌やムックの「総まくり」をやっても、誰の何の役にも立たないですよね。ムック本は大丈夫だけど、雑誌の方は手に入れにくいですし、、
実はこれらの雑誌本、私の所には置いておく場所が無いので、常々「捨てよう」と思ったのですが、これだけ揃っているとなかなかふみきれず、「HPに簡単な感想を書いてから捨てる事とする」、としたごく個人的な理由に依って書いています。
タイトルにも有るとおり、ここは97年秋冬刊行の、一般雑誌のワイン特集号及び、ワイン特集のムック本を取り上げています。ワイン専門のワイン雑誌につきましては、ワイン雑誌図鑑のページをご覧下さい。
「ワインの研究」暮らしの設計No.233
内容はまた別として、まず、総ページ数140ページ足らずなのに「何でこんなに高いの?」と思いたくなる本です。でもこの手のムック本は写真と空白ばかりで、内容自体は「スカスカ」な印象の本が多いのですが、その点この雑誌、内容自体は良くまとまっていますね。
中央公論社(¥1995)「新版」と名が付いている事から、以前にも同じ様な特集があって、その改訂かと思われます。そのせいか、内容はオーソドックスなもので、ワインについての一通りの知識と、またお店なども網羅していまして、派手さは有りませんが結構情報量も多く、今回紹介するこの手のムック本のなかではいちばん良くまとまっていて居るのではないかと思います。
最初に田崎さん、浅田さん、麹谷さんら、各有名人の記事が数ページづつありますが、今時の雑誌っぽいのはそこらまでで、あとは良く出来たワイン入門書の呈で、ワインを楽しみ始めた人手も、また幾らかワインを飲んでいる方でもそれなりに役に立つ雑誌かと思います。
「ワインの真実を教えよう」、Tarzan10/22号
マガシンハウス(¥400)ターザン(Tarzan)なる雑誌は初めて買いました。特集は「ワインの真実を教えよう」と銘うたれていまして、「オールアバウト」みたいな印象ですが、実際は「今興味がある(と思われているであろう)所を、ちょっと詳しく、、」って感じです。
特集は雑誌の約半分、50ページ程で、話題の赤ワインのポリフェノールの事や、新世界ワインの実力は?とか、ワイン用語の研究とか、その他、ワインを幾らか飲みつけた方が、少し気になっているような事をピックアップして取りあげて居ます。そういう意味では私は読んで面白かったです。なんだか、ブルータスのワイン特集の続きみたいな感じです。
雑誌の特集では紙面が多く割けないのが普通なんで、取り組み方が2つあって、一つが入門的な解説を並べる事、もう一つはこの様なトピック的な事を取りあげる事ですが、事雑誌については、後者の方が良いように思います。
「イタリアワインの逆襲」、GEO12/1合併号
同朋社(¥990)日本でも人気のイタリアワインについての特集です。元々写真によるインパクトを全面にだす雑誌のようで、イタリアわいんについても、大判のとても素敵な(だけどあまり意味がない)写真が並んでします。
記事の内容は、「ゲスト」によって進めるやり方で、まずはこれもまた大きな写真の、大岡玲と勝山晋作との対談、あと湯目さんや荒井さんら数人の人が書いたページが並ぶだけ、という、お手軽な作りです。
従って、必然的に雑多なエッセーの集まりになっていまして、イタリアワインの勉強にはあまりなりませんね(大きなイタリアの地図が入っているくらいですか)。もっとも、良く読めば、「この人がここでこう言っているから、**なんだ」とか読めますけど、、
特集としても、写真がページを結構埋めていて45ページ、内容に対談とか、エッセー風の文が多いため、気軽に読めてしまいます。まぁ、ワイン専門雑誌でないので、気軽な紙面が良いのでしょう。
「カジュアル・ワインブック」、DIME増刊11/30号
小学館(¥430)DIMEの増刊でだされた雑誌で、一冊まるごとワイン関係。DIMEってこれも買った事がない雑誌なんですが、どういう雑誌なんでしょ?。このワイン特集の増刊号は、そのまま家庭画報とかのファッション女性誌にはめ込んでワイン特集に出来そうな、感じです。
つまり「ファッション」第一ですね。巻頭のワインショップガイドでも、東京の数件のお店は、綺麗なモデルさんを連れてって、グラス片手ににっこり、と取りあげています。
またご多分にもれず、その手の定番の、各界著名人登場の記事が載っていますし(武豊が、液面の相当下がったロマネ・コンティ69を手にしている。多分値段の方は、"相当"高かったんだろうけど、、)、いかにも「取材しました」って感じの4組の読者(?)も、ファッション雑誌の様相で登場です。最後は、田崎さんの「家庭でワインを楽しむ5ヵ条」と言う、3ページで文字の少ない項目で締めです。
明らかに対象は女性の様に私には思えました(「彼女に送りたいワイングッツ」と言う項も有りますが)。あまり難しいことは何処にも書いて居ません。中程に、「ワインの馬鹿」という4ページ程のパロディの記事がありますが、そこがいちばん難しいかな。ちなみに私もここが一番面白かったです。それと「ワイングッツ・コレクション」は結構色々取りあげられて、知らないのも有ったりして興味深かったです。
「ワインを愉しむ」、太陽12月号
平凡社(¥1000)中央に山本益博、両端に田崎さんと小林シェフと、これまたなんともインパクトのある表紙写真で、本屋で初めて見た時、ついつい「おっと」と声が出てしまいました。
これだけの人を集めて、記事になっているのは、食事をしながらの良くわからん対談だけ、ってのは無いでしょう?(表紙の写真を取るのが唯一の目的でしょうか)。
対談の内容も、食事をしながらの、「これが合った、あれがどうだった」ぐらいのもので、読んで「はぁそうですかぁ」とは思いますが、それ以外には大して面白い物では有りません。まぁ私が子供の為に買った、トカイ・ニュラソー・アスー1991、5プットニョスが今飲んでも大層美味しいらしいのが分かったくらいですか。
あとは山本さんのお店のガイドが数件続いて、あとは雑多。特集としては100ページあるけれど、お店の紹介とかでかなりな紙面を埋めていて、そのあとなぜかオーストリアのワイン紀行が続く。
内容全体として、大きな写真と短い文章、雑多な軽い印象です。
「イタリア・グルメ&ロマン紀行」、日経ムック
日本経済新聞社(¥1890)「木村尚三郎監修」で、副題が「世界の遺産を訪ねる旅」とありまして、背表紙にのどこにもワインと言う文字は出てきませんが(表紙にも少し出てるだけ)、実は内容記事のほとんどが(イタリア)ワイン関連であります。
その監修の木村氏は、東大名誉教授だそうですが、巻頭の本間さんとの対談で(ワインに関して)変な事を言っていると、某ワイン関連の会議室で話題になった事がありますが、まぁその方の専門家ではないし、ここの記事もワイン専門と言うわけでは無いので、大目にみてあげましょう。
私はそれよりも同ページに載っている、ワインを注いでいる写真の方が気になりました。キャップシールを瓶の口の所で切ってありまして、それがまた綺麗に切れていないので、注いでいるワインに触れていますね。誰が開栓したのか知りませんが、他の誰も気にならなかったのでしょうか?。私はこちらの方が恥さらしだと思うけど、、
この雑誌登場の有名人は、辰巳琢郎、水野真紀それと田崎さんの3人での銀座エノテカ・ピンキオーリでのディナー対談の記事のみと、最近の雑誌としては控えめ。でもいつもながら、「この手の記事が何の役に立つのやろか?」と思うのですが、辰巳琢郎はもとより水野真紀さんも何となく品があって、写真を見る分には素敵。
この雑誌での「売り」は何と言っても、日本の各インポーターの協力を得て、トスカナ、ピエモンテやヴェネトその他の地区の著名な醸造所を、幾つも取材している事です。だたその内容がいかにも寂しい。個人的な好みで言わせてもらうと、その解説文は「なんやこれ」って感じです。
ワイナリーの紹介なのに、どんなワインを作っているかさえもちゃんと解説及び記述せずに、適当に文を綴ってあります。「単なる個人的な紀行文だな。」と思ったのですが、良く良く考えてみると、本のタイトルは「グルメ&ロマン紀行」でした、失礼しました(ううむ、でも不満は残るなぁ。)。
まぁ私なぞは、あのガッビアーノのアニアの写真を見れただけでも(キャンティの作り手ガッビアーノ{ガッビアーノはお城の名前、所有者の名はアルケーニ}には、アニアと言う子供と同じ名前のVdTワインが有って、結構有名)、この雑誌の価値は有ったかな、とは思いますが、やはり全体としてちょっとつっこみ不足の感も幾らかあります。(この記事では旅行ガイドにはならない、と言う意見も聴きましたが、その通りかも知れません)
この雑誌を作ったのは、佐藤由起さん(プラネード)です。直接には面識有りませんが、ワイン関係ではとても有名な方で、お名前は何かにつけ良くききます。さすがにワイン関連の記事が多いはずです。
「ボルドーを究める」、Gillie1/2合併号
TBSブリタニカ(¥490)タイトル通り、ことボルドーに関しての特集ですが、各題材の取り方は悪くはないと思うのですが、内容がどうもどれも中途半端な感じがして感心しません。
巻頭の田崎さんの「ボルドー・シャトー紀行」にしても、5つのシャトーだけ、文章も田崎さんは書いていないと思います(要するに写真だけ)。
もう一つの目玉は、「メドック各付け全61シャトーの試飲報告」です。出回っていた1994の格付け全61のワインの評論なのですが、(日本のワイン評論の常ですが)これが短くて、読んでも良いのか悪いのか、もう飲めるのか、のみ頃は少し先なのか、それともずっと先なのか、コストパフォーマンスは良いのか悪いのか、全く解りません。
いっそのこと61本、ブラインドテイスティングして、独自ランキングでもしてみれば面白かったのに、とも思います。強いて言えば全てのボトルの写真が載っていますので、普段はまず見かける事の無い、フェリエールとかのラベルが見れて良かったですが、、
「ボルドーを知るためのコラム集」も中途半端、「味わいを表現する用語集」では、なんと4つの言葉しか取りあげていません。個人的にとても期待した「スチュワーデス座談会」もこれまた、期待を裏切る中途半端さでした(残念)。
「田崎真也のワインライフ、創刊号」、日経ムック
日本経済新聞社(¥1260)この日経ムックの雑誌は、この後季刊で出るらしく、これがその創刊号となっています(次号は98年3月発売予定)。
表紙の何処にも書かれて居ませんが、この雑誌の画期的と言える点が一つ有ります。それは(たぶん)日本の雑誌で初めてワイン評論にその得点を併記した点です。この号では例の94年のボルドーはメドック格付け全61ワインについて評論を行っています。また、後のページで、シャンパンやチリのワインについても同様の評論をしています。
外国の雑誌はごく当たり前(と言うか、評点なり星が付いていない評論はまず殆ど無い。)ですが、日本ではとても珍しい事です。
スペクテーターやアドヴォケイトなどは100点満点、ワインジャーナルが20点満点、イギリスのデカンターやフランスのレヴィユー・ド・ヴァンなどは星の数で評点しています。C.コーツさんは20点満点で、評点を書かない場合も多いのですが、文章の中で5段階評価位の評価は必ず下しています。
500円のワインも、5万円のワインもなべて、「こんな香りがして、あんな味がして、これこれの料理にあいそう、、」のワインパターンで済ませて、良いか悪いかのランク付け(大まかで良いのですが)も、飲み頃予想の表記も無い評論は、日本以外ではまず見かけません。(そういう評論はかなり深読みしないと役に立たない、と思うけど、そこまでする気力は無いわなぁ)
まぁ日本の場合、独立したワイン評論家っていませんから、それぞれ評論される方々にも色々事情が有るのでしょう。その点で言えば、日本はまだワインジャーナリズムが無い所だとも言えます。この雑誌では、著名4ソムリエ氏の平均得点を載せる事にするなど、誰にも直接責任が降りかからないようにうまくやっています。
ただその他の記事は、いかにも「今風の流行ファッション雑誌」していまして、どうして出てきたのか脈略の良く分からない有名人が多数登場して、残りのページの殆どを埋めています。更にその写真の脇に、「何とかのスーツ**万円、バック**万円、etc」とありますのは、一体どういう雑誌を作りたいのか、疑問に思ってしまいます。
強いて言えばそのハイブリッドを狙っているのかも知れません。またまた登場の辰巳琢郎のファッションにもしっかりブランドと価格の表記が有ります。(ううむ、やはりゼニアは私の好みだなぁ、最近はワインと時計で色々ものいりで、服を買う余裕は無いが、、)
どちらにしろ、事私にしてみれば、今回紹介した雑誌の中で、一番読むべき所の少ない雑誌でした。当然ながら読者層によっては、女性ファッション誌の無理のない延長として受けるのかも知れません。
新しいワイン漫画も連載開始です。個人的好みから言うと大歓迎なのですが、「ソムリエ」に負けてます。もうちょっと良い漫画家、いなかったんですかぁ?
この雑誌を作っているのも、先の「イタリア、グルメ&ロマン紀行」と同じく、佐藤由起さん(プラネード)です。色々問題もありますが、今後季刊から月刊へ、頑張って良いワイン雑誌に仕上げて下さい。陰ながら応援しています。
あ・と・が・き
所で、年末は例によって忙しくて、このページは元旦に書いています。こんなしょうーもないページでも、筆者は昼から夜中まで、かなりな時間をかけて書いていますので、(出来る方は)同情して下さい。(校正等に更に半日かけました)
今日はお正月なので、スペシャルワイン、DRCのグラン・エシェゾー1986です。今日開けたのは92年に今は亡きミツミから買ったワインです。DRCにしては大層安くあって(12kと記録してあります)、驚喜して買ったワインです。
あのビーズ・ルロアさんがDRCと仲たがいをした理由は、ワインのその売り方だったらしく、1ケースのセット売り(要するに抱き合わせ販売)が建て前だっただけど、それをばらしてロマネコンティのみを(主に高島屋経由で日本の顧客に)売ってしまったのが理由だと、聴いた事があります。(ここは記憶に頼っていまして確認して居ません、違うよ、と言う方は指摘してね)
そのばらした残りが安く出た様でして、このワインを買った当時はそんな事知らなかったのですが、確かにこれも高島屋経由で、恐らくその由来のワインかと思われます。(感慨深いですね)
私なら、馬鹿高いロマネ・コンティなどは買わずその他の安めのDRCのワインを買いますが(と言うか、安いのしか買えない)、そうで無い人も多い様です。
で、86のDRCのグラン・エシェゾーですが、余りに美味しいので、これらの文を書きながらついつい1本全部飲んでしまいました(普通は一日にボトル半分か2/3にしています)。さすがにDRC、今まで飲んだ86のブルゴーニュの中では一番です。