2000年5月 今月の印象に残ったワイン


私が、知り合いの方に誘われてニュージーランド(以下NZ)はオークランドに行ったのは3年前の1997年。元々はゴルフと釣りが中心目的の旅行だったらしいのですが、私だけ単独行動で、オークランド近郊のワイナリー巡りをした報告が、「xiphioのNZワイン・エトセトラ」です。

その時、各ワイナリーを巡って、NZにおけるワイン作りの活気を目にし、それ以後ずっとNZのワインについて注目しています。

旅行中に買って持ち帰った数ケースのワイン、10冊近くのNZのワイン関連本を元として、それ以後も年に一度ほど、NZのワイン屋さんに現在注目されているワインを教えてもらいながら、そこから新しいNZワインを幾らか送ってもらっています。また、その時に毎年発行されるNZワインの現状を評価した本も送ってもらっています。

今年も、お勧めや注目ワインなど知らせていただいてから、この5月に、やはり今年出たばかりのそのワイン本と共に2ケースほど送ってもらいました。

NZの殆どのワイナリーの紹介と、特に優れたワインの紹介をしているガイド本、"Cuisine Wine Annual" は毎年毎年、目に見えてどんどん厚くなってゆきます。それだけワイナリーが増えているんですね。

ざっと読んでみましても、いつも新たな変化が有る様で、とても楽しいです。ざっと気が付いたこの頃の傾向としては、北島にては、今まで人気だったカベルネ・ソーヴィニョンに対して、メルロがかなり増えてきたこと(それもプレミアムクラスのが)です。

それと、南島の冷涼な地方でのワイン作りがかなり盛んになってきたことですね。気温の関係で、赤ではピノ・ノワールが中心です。以前から作られてはいたのですが、この所ワイナリーがかなり増えてきた感じがします。

また最近はコンクールで賞をとったりと、世界的な評判もかなり良いみたいです。昨年お会いしたエンプソン・コーポレーションのエンプソンさんも(実はNZの出身)、とても良いと言っていました。私はこのあたりのピノはまだ飲んでいませんが、今回初めて幾らか買いましたので、1、2年後に飲んでみてレポートすることでしょう(それじゃぁ遅いですか?)。

つい先日、知り合いのワインバーで、「次のプロヴィダンスと言われているらしい」ということで、Obsidianと言うNZワインを見せてくれました。聞いたことがあるなぁ、と思っていましたが、調べてみるとワイヘケ島で最近作り始められたワインです。

NZでは有名な2つのヴィンヤード、クーパーズ・クリークとキム・クロフォードのオーナーが経営者3人の内の2名になっていまして、キム・クロフォードがワイン作りをしています。93年植え付けで97年よりワインを出しているそうですから、真価を発揮するのはこれからでしょう。でもまぁプロヴィダンスと言うよりは、「目指せ、お隣のストニィリッジ(今月取り上げています)」でしょう。日本での価格は分かりませんが、どこかのワインの様にバカみたいな値段で売っていましたら気をつけましょう。

所で、このレポートを書いているのは6月も中旬になってからですが、6月6日より8日まで、東京にて日本で初めてのVINEXPOが開催されました。数ヶ月前から、「どうしても行くんだ!」と予定を決めていまして、6、7日の両日行って参りました、とぉっても楽しかったです。そのVINEXPO2000の報告も近々書きますね。




Fontalloro 1985
Fattoria di Felsina

イタリアワイン好きには有名な「フォンタローロ」ですが、まずはこのワインは何処が作るどういうワインか?、イタリアワインの場合はそう言うところから知りませんと、先が見えませんね。

このワインは、イタリアワインのガイド本、ガンベロ・ロッソでも、トッレ・ビッキエーリ(3グラスの最高評価)ワインの常連と言えます、フェルシーナ(フェルジーナ?)の作りますサンジョベーゼのVDTです。

フェルシーナは他にもキャンティ・クラシコと、マエストロ・ラロと言うボルドーセパージュのワインを作っていますが、作っているワインの殆どがトッレ・ビッキエーリと言う高評価のファットリアです(ガンベロ・ロッソに好まれているとも言えますが)。

有名VDTとして昔から名の知れたワインですが、さすがに良い年の85は綺麗に熟成したサンジョベーゼの程の良さがとても良く出たワインで、美味しかったです。




Ch. Gruaud Larose 1975

NZやカルフォルニア、イタリアあたりのワインばかり飲んでいる訳でないのですよ、、って事で一応ボルドーも取り上げてみました。

割と状態良く熟成した75年のボルドーで、期待通りののテイストでした。美味しかったです。テイストのレポートと言っても、ここらのボルドーは自身の予想通りだし、それ故あまり取り立てて書くことが思いつかないのが、ちょっとつらくもありますね。

でも、私は今までグリュオ・ラローズでは外れが多かったので(単に状態が悪いボトルだったのだと思う)、これは嬉しかったです。しかし「グリュオだよね、やっぱりこれは!」と言う基準は、今の私にはまだ無いです。




Stonyridge Larose 1996

今月も登場のNZワインですが、先月のクメウと今月のストニィリッジの2品は、これまでのNZワインの中でも特別と言えます。

オークランド近くのワイヘケ島で作られている、NZでは知らぬ者のないボルドータイプのプレミアム高級ワインです。普通日本でプレミアムNZ赤と言いますと、プロヴィダンスらしいのですが、NZ国内では一般的ワインガイドにも全く載っていませんし、殆ど無視されている様です。最もプロヴィダンス側で国内を考えていないのが、本当の所かも知れませんが。

そのワインを除けば、赤で一番高いのがストニィリッジでしょう。数年前にNZに行ったときにはショップでNZ$110でしたが、最近ではNZ$150だそうです。(向こうの人も、ちょっと高すぎる、と言っています。もっともプロヴィダンスに比べればかなり安いですが、、)

このワインは、何と日本で買った物。知り合いの人が、「東京でこういうワインを売っているのだけど、、」と教えてくれましたので、喜んで買いました。NZの酒屋で買って送ってもらうよりは安かったです。

若いワインなのでデカンタしましたが、そのデカンタ中より香しいかおりがして、期待大。その通り、大変素晴らしいワインでした。美味しくて飲みやすいNZワインは他にも有りますが、さすがに時を経るに従って複雑さがまして成長します。そういう中にも品があって、へたなボルドーよりずっとボルドーらしいかも、、

NZワインとしてはかなり高いけれど、やはりそれくらいの価値はありそうです。ただ「お買い得」と言えるかどうかは?です。




Cortaccio 1990
Villa Cafaggio

このワインもまた、先々月のラトゥール76に引き続いて、とても怪しいワイン。もちろんラベルはコピーじゃありませんが、1990と言うことで買ったのですが、ラベルのどこにもヴィンテージの表示が有りません。

最初は、裏ラベルかなとも思いましたが、裏にはイタリア語の解説のみ。2本買ったのですが、もう1本のボトルにはラベルの上の方に「1 9 9 0」の表記がありましたが、こちらには有りません。

「ノンヴィンテージなんやろか、でも90と言うことで買ったぞ」と言っても遅いので、早々(それも半年以上は寝かせた)に開けてみることにしました。

コルタッチオはイタリアはトスカナの作り手カファージョ(Villa Cafaggio)がカベルネ・ソーヴィニョンを主体とし作る、所謂スーパータスカンです。

で、飲んでみた「ノンヴィンテージ・コルタッチオ」ですが、とても良かったです。90にしてはちょっと熟成が進みすぎているきらいもありますが、大変素晴らしい、トスカナ・カベルネと言えます。(私は熟成が進んでいる方が好みなので、どうしてもこういう評価になります)

コルクにはちゃんと1990と焼き印されています。一番予想される事柄は、単にヴィンテージ印字をされていないラベルを使ってしまっただけ、と言うことです。多分結局はそんなところでしょう(だって、イタリアだし)。




Lewis Merlot Reserve 1997

とどまるところを知らない、新興カルフォルニアワインの次翼とも言われているルイスのワインです(本当のところは知らないけど)。ワインスペクテーターあたりではそこそこなんですが、どこかで凄くほめてたので買ってみました。ご覧のように、"L"の透かしの特徴的なラベルですね。

ここは結構色々なワインを作っていまして、カベルネ(Napa Reserve)、メルロが2種(Sonoma,Reserve)、シラー、シャルドネ3種(Russian River,Sonoma,Napa Reserve)それと、孫の名前を付けた、カベルネ、シラー、プティ・ヴェルドを使ったアレック(Alec's Blend)が有ります。

一番高価なのがメルロ・リザーブですが、メルロですし、最近の幾らかの経験から、若い97と言えども充分飲めるだろうと思い開けてみました。(幾らかの他の優秀なメルロは96で完全に飲み頃ですし、、)

で、実際は予想とは全く逆。メルロなのに凄く堅い感じがします。香りもあんまり立っていないし。タニックと言うより、とにかくしっかりしていて堅い感じ、ちょっとメルロとは思えません。多分とても良いワインなんでしょうが、今の段階ではちょっとよく分からないです。

このワインを1本だけ(それもこんなに早く)飲んだだけの印象ですが、「すぐ飲んで美味しいし、熟成も(多分)する。」と言う、流行の他のカルフォルニアワインのとは、作りがちょっと違うようにも思いまが、如何でしょうか?。どなたか飲まれた方がおられましたら、感想も知らせて下さいね。




Michele Satta
Piastraia 1998

恥ずかしながら、私は知らなかったトスカナはボルゲリ(サッシカイアやオルネライアが作られている所として有名ですね)の作り手ミケーレ・サッタですが、このワインはなかなか素晴らしいワインでした。

セパージュは分からないのですが(多分裏ラベルあたりに書いてあった筈なのですが憶えていません、すいません)、多分カベルネ+サンジョベーゼ位でしょう。それとシラーが少し入っているらしいです。そう高いワインでは無いのですが、あまり入ってこないワインらしくて1本試飲しました。

私は98と言う若さ故、それほどは期待していなかったのですが、美味しくてびっくりしました。ただ、濃くて甘いだけではなく(実はあまりそう言う印象はない)、ちゃんとワインとしてすでに完成された所があって、とても感心しました。しかし、98がもうこんな感じでちゃんと飲めるとは、ちょっとこちらの方でも驚きでしたが。




Ch. La Mondotte 1995

うーん、出ました、ラ・モンドットです。トロロン・モンドのセカンドで、定冠詞の付かない同じ名前のワインがありますが、そちらと間違えないで下さい。。

何年か前、瓶詰めしたばかりのボルドー、1996の試飲会(毎年春ぐらいに、ボルドーで有るらしい)において、センセーショナルと言えるほど大評判となったのが、ラ・モンドット96です。

最も、パーカーさんだけ誉めているのだったら、私も「ああ、またかいな」とも思わないでは無いですが、複数の評論においてそれまで全く無名だったこのワインが、96のボルドーで殆ど1番と言い得る評価を得たわけですから、私も驚きました。

作っていますのは、カノン・ラ・ガフリエールも持っていますナイペルグ伯爵です。前から作っていた様ですが、96から作り方を変えたそうです(どういう風に変えたかは、推して知るべし)。

以前海外制作の何かのワインのTV番組でここが少し出ていましたが、醸造は一緒の所でやっているみたいでした。その番組の中でも、ラ・モンドットが96より急に評判になって、伯爵自身ちょっととまどい気味だった様だと、記憶に残っています。

「プリムール、安いといいな」と思っていましたが、やっぱし高くて大体1本400ドルもしました、これじゃあ買えないですよね。でもまぁ96のラ・モンドットは今でも大体400ドル位です。

しかし96で有名になったせいか、それまで見たことも無かった、95のラ・モンドットが売りに出されて居たので、幾らか買いました。さすがに「96から変わった」のは誰も知っているので幾らか安いのですが、それでも結構なお値段でした。

今回、ちょっと早いかな、とも思いながらも、試しに開けてみました。4、5人での席で開けたので、それほどきちんとトレース出来ていないと思うのですが、印象としては昔から良くある風な、サンテミリオンの良品と言う感じです。ヴォリューム感よりも、繊細さやエレガントさを持ったワインで、恐らく、カノン・ラ・ガフリエールもこんな感じでしょう。

今回、先に開けたピアストライアとの比較で良く分かったのですが、やはり一日で何杯か飲む場合は、ある程度の濃さとインパクトを持ったワインを美味しいと選んでしますのは、仕方ないように思いますね。

その場では、ピアストライアの方を素直に美味しいと思いましたが、このワインも印象には残ったワインでした。あの96モンドットの95版と考えないで、単に素晴らしいサンテミリオンとして見た方が、その真価が分かるかも知れません。