2000年6月 今月の印象に残ったワイン


本年の6月と言えば、東京でひらかれたVINEXPO2000ですね。私もその為に東京に行きました。VINEXPOの報告は「xiphioのイヴェント報告」の方に書きましたので、宜しければご覧下さい。

東京に着いたその夜、知り合いの方のワイン会が丁度有るとのことで、誘われて出席しました。ワインは殆どブラインドで出まして、色々議論しました。殆どが初面識の方々でしたが、そこはワイン好きがとりもつ間柄、すぐうち解けた楽しい一晩となりました。

まずはシャンパーニュ。これは銘柄を当てるのは難しく、まずはその作りを判別する事になりました。ここはブラン・デュ・ブランとあてる事が出来て、まずは一安心。と言っても事実上2者択一なので、全然大した事はないんですが、、

答えは、
Champagne Perrot-Boulonnais Fils Brut Blanc de Blanc (Magnum)

ここから、同じ地域の赤が3種出ることが告げられます。

まずは1本目。
面子や場の雰囲気から、まずフランスワインであろうと踏みました。香りをかいで、私は即座にボルドーと判断しました。まぁ、誰も驚かない一番普通な選択ですね。よせばいいのに、ついでに「そう、カベルネだよね、」とも言ってしまいました(これは墓穴だった!)。

香りは、全くボルドーをイメージさせます、それも大変若い。でもそう思って、色をよくよく見てみると、若いはずなのに意外と濃くない色に違和感を感じます。「ううぅ、もしかしたら、ブルゴーニュかもしれん」と一瞬思ってしまいました。私はブラインドで、ボルドーとブルゴーニュを間違えたことが2度有ります。

口に含んでみましたが、テイストでは何も解りません。ただ香りはボルドーです。回りの方も、大体ボルドーと言う意見ですが、あまり確信が持てない方も多いみたいです。

1本目の私の公式意見は、「若いボルドー」です。

2本目がでました。こちらは良く熟成しています。丁度飲み頃か、それを過ぎた頃です。私の感覚では、とても美味しい良いワインですが、ちょっとウィークです。私はこれも、香りだけでボルドーと判断しまして、従って先のワインでの判断を追認した形となりました。ただ、「やはり、先のもこれもブルゴーニュだ」と意見を変える方も、何人かおられました。

2本目の公式意見は、「78あたりのボルドー」です。

3本目、
これは全く素晴らしいワインでした。熟成の様は先のワインと良く似ていますが、作りが違います。恐らく先のより古いワインでしょうが(出る順番から考えても、ね)、威厳があります。ここまで来ますと、酔った勢いもありまして、訊かれもしないのに色々喋っていまして、「完全にグランヴァンの作りである」と公言しました。

3本目の公式意見は、「ボルドー、作りとしてグランヴァン、66くらいかも知れない」です。

さて3本おわって、トータルの意見を聞かれました。つまりより詳しいエリアです。 私はACまでは、さっぱり分からないので、とりあえずサンジュリアンにしておきました。(カベルネだと思っていました)

答えは以下の通りでした。
Ch. Le Pin 1993
Ch. Feytit-Clinet 1982
Ch. La Conseillante 1970

「うげぇぇ、メルロやんけ!」と言う感じですね。まぁ、ボルドーは当たっていたから、良しとしますか。

でも、1本目はル・パンだったんですね!、あの、若いはずなのに紫の見えない柔らかそうな色、そして時間が経つとより顕著になる独特な香り。うーん、ル・パンかぁ、と考え込んでしまいました。
とにかく素晴らしく特徴的、ル・パンは昔88を何度か飲んだことありますが、以前に飲んだのは、こんな感じじゃ無かったと思うのですが、、

言い訳、
ボルドー飲む時は、ポムロルを飲むときもメルロを余り意識せずに、ボルドーのワインとして飲んでますから、結局はそのワインに近いと感じたのでしょうね。それから、最近メルロと言うと、イタリアあたりの本当に滑らかなメルロメルロしたワインの印象が強いんですね。でも、ボルドーのメルロはそれらとはやっぱり違います。

次は白ワイン、
「シャルドネじゃないよね、あとは分からない」と言ったのですが、
答えは、
Chateau Woltner Frederique Vineyard 1989

これも大外れ、ただしこのワインは元々の状態に少々問題が有ったと思われます。出した方には悪いのですが、これは当たらなくて当然でしょう。確か「SBでなかろうか」、と言ったかも知れませんが、往々にして傷んだシャルドネをSBと取り違える事があるんですね。(沢山経験のある方でも、そうみたいです)

7月になって、東京のレストランでシャトー・ウォルトナーの白を飲みました(もう少し若いヴィンテージだけど)、これは大変素晴らしかったです。カルフォルニアのシャルドネは、なべて大柄であまり好きにはなれないのですが、とても気に入りました。

次はまた赤、
やはり香りをかいで、「こりゃ、ブルゴーニュに間違いない!」と断言してしまった私ですが(そろそろブルゴーニュがでてもよい順番でもあるし)、ブラインドの席で優秀な成績をあげようと思ったら、あまり断定的意見を言ってはいけませんね。(私は酔うと抑制がきかなくてダメなんです)

答えは
Tignanello 1987

再び、「ええぇぇ!」です。でもまぁ、よく考えれば、良く熟成したサンジョベーゼはブルゴーニュに似てくる物なので、これはしょうがないかな、と自己弁護。(まぁ他に当てた人も居なかったし)

でも本心としては、イタリアワインで90年以後ぐらいのしか飲んでいない人なら仕方ないですが、私はこのあたりのサンジョベーセはよく飲んでいるので、この位は当てて然るべきではなかったかと、自分についつい要求してしまいますが、、

最後は甘口。
ここまで進みますと、どうも饒舌は止まりません。「こりゃ、真っ当なソーテルヌに違いない!」と再び大声で断言してしまいました。このワインばかりは、後の方で、もしかしたらドイツワインかも知れない、と言う意見も出ました。恐れ多くも、私はついつい反駁してしまいました。

で、果たして、答えは
Wehlener Sonnenuhr Beerenauslese 1976 (Joh Jos Prum)

3たび、「うげげぇぇぇ!」です。しかも今回は当たっている人も居て、かなりショックでした。(その意見に反駁までしているし)

76あたりの良いドイツワインは、私も結構飲んでいます(好きです)。ですから知らないわけは無いのですから弁護のしようもありません。結局その特徴をあまり意識せずに飲んでいて、ちゃんと把握していなかったのですね。

くしくも、ここらの優秀なドイツワインについて、「素晴らしいソーテルヌとあまり変わらない」と、思った事、書いた事がありますが、その差違についてはどうも記憶に留めなかった模様です。こういうブラインドをしますと、その時々のワインの感じをかなり鮮明に記憶するので、「次は、間違えないぞ」って思います。(でも、自信はない、、)

実はその次に、当日私が徳島より持参したワインを出してもらいました。

Bernkasteler Doctor Spetlese 1959

またまた古いドイツワイン。私の生まれ年のドクトールですが、悲しからずや、すでに半分死んでいました。シュペトレーゼクラスでは、状態によってはここまで保たないですね。

その後、
Grappa di Muller Thurgau(Segnana)
とコーヒーを戴いてお開きです。

いや、本当に楽しかったです。
ブラインド・テイスティングに於いては、ゲーム的楽しさ(コンクール的、とは敢えて書かない)がある上に、普段は「あぁ美味しい美味しい」だけで飲んでいるワインの特徴やイメージを、楽しいながらもしっかり記憶に残しておくことが出来ますね。

でも、こういうブラインド・テイスティングで一番大変で、一番つまらないのは、当然ながら主催者です。招いて戴いたIさんには感謝致します。こういう会を、ほぼ毎月やってるんだそうです、東京はいいなぁ、、、、




Chevalier Montrachet 1989
Dom. Jean Chartron

89はブルゴーニュの白としては大変評判の良い年。私もそう思います。86と比べられる事も多いですが、何故か86はあまり飲んでいないので分かりません。でも90よりは(まぁ物によりけりですが、全体として)好きです。

シャルトロンは売っているのは余り見かけませんが、飲むワインは何時も美味しくて、割と大手みたいなんですが、私は結構気に入っています。とても綺麗で特徴あるラベルで、遠目にでもすぐ分かりますね。

この機会にシャルトロンの事を調べたところ、Chartron et Trebuchet と言うネゴシアンと、Jean Rene Chartoron が有りますが、どうも一緒みたいです。Chartron et Trebuchet のシャルトロン分のドメーヌ物が Jean Rene Chartoron みたいですね。(でも、このラベルには、Jean Chartoron となっている)

Jean Rene Chartoron の所有はこのシュバリエ・モンラッシェが1ha、その他ピュリニーモンラッシェの1級畑を幾らか持っている様です。

流石に89のシュバリエ、なかなか気に入りました。最初ちょっと冷え気味にして開栓し、すぐ飲み始めたのですが、その頃は悪くないもののちょっと軽めな感じがしていたのですが、時間が経って温度も少し上がると、良くなる良くなる。

テイストに膨らみと幅が出てきまして、かといって元々の構造ははっきりしていてと、とても良いワインでした。




Brunello di Montalchino La Casa 1985
Tenuta Caparzo

このラ・カーサは、カパルツォと言う所が作っています、ブルネッロ・ディ・モンタルチーノのスペシャル・キュベです。結構有名でもあり、値段も現在では、それなりに高いです。(このラベルは最近の物と違います)

でも、カパルツォはラ・カーサしか見かけないので、普通のモンタルチーノって有るのかな、と思ってガンベロ・ロッソを見てみますと、単なるブルネッロ・ディ・モンタルチーノも作って居るんですね。(知らなかった)

85のブルネッロと言えば、最近はリシーニを何度か飲んでいまして、自身の評価も高いですが、このラ・カーサもとても良いです。

まず、非常に明るくまだまだ元気な色に驚かされます。15年たったブルネロですが、大変アライブで健全です。テイストもその色に沿った物で、果実味等は落ちていますが、香りもエレガントでチャーミング、まだ若々しいとさえ思えます。

和食の席に持って行きましたが、とても良く合っていました。(最近私は和食でもいつもワインです、ただし御飯が出るまでです)

リシーニと比べてどうか、と言うことになりますと、こちらの方が断然若い感じでアライブでチャーミング、ただちょっと線が細い感じがしまして、広がりや複雑さの点ではリシーニでしょうか。




Corbans Cottage Block 1994

3年前、ニュージーランドに行ったとき、持ち帰ったワインの内の1本。(昨年ぐらいから、そろそろ開けはじめています)

ワインショップでなく、確かオークランドのスーパーマーケットの酒売場で買った物で、その中で一番高いワインでした。(それでもNZ$50はしなかった)

コーバンスも結構大きな作り手で、色々なワインを作っていますが、赤で一番のプレミアムなのが、このコテージ・ブロックです。コーバンスは日本にはあまり知られていない、と思っていたのですが、この間出たばかりの WINE Magazine に紹介されていますね。

このワイン、最初に飲んだ時から酸がとても高いので吃驚しました。酸と言っても、古くなったりしたワインのあの酸では無く、まだ若いワインが持つ酸です。成分的には物は違うんでしょうけど、私は詳しくは知りません、

とにかくメルロとカベルネの果実味の中に元気な酸がありまして、全体としてはちょっと背骨がすきっと立ちすぎている感じすらします。低酸のボワァっとしたワインは沢山ありますが、こういうのはとても珍しい様に思いました。(少なくても私は類型を知らない)

暫く置いて、幾らか飲み易くはなっても、酸がしゃきっと(しすぎている?)のは変わりません。でもバランスがとれるだけの凝縮感も有りまして、私には結構美味しいですし、良いとも思いますが、万人受けするかは微妙です。




Beringer Napa Valley Chardonnay
Private Reserve 1994

このワインは、憶えている方もいらっしゃるかも知れませんが、何年か前、ワインスペクテーターの記事の何かの順序つけで、堂々1等賞になりまして、ちょっと有名だったワインです。

このワインを買ったのは96年12月と記録してありますから、多分96年発行分のワインスペクテーターですね。(WSはすぐ捨ててしまうので、手元には有りません)

最初開けたばかりの時は、温度が低めだったこともあってか、良く言われる色々なフルーツを思わせる要素が有るのですが、それが各々ばらばらな感じで、「何だぁ?」と思っていたのですが、開栓後時間が経って、温度も少し上がった頃は、纏まりも広がりも有って、飲み終わる頃は、「流石にWSが一番にしただけはある!」と納得してしまいました。

でも、カルフォルニアのシャルドネで有ることには、やはりその通りです。




Ch. Figeac 1979

79とか81とかは、そろそろ20年を過ぎていまして、ボルドーとしては格付けクラスのシャトーですと、熟成も充分進み結構お勧めなんです。(状態の良いのが安く在れば、、)

このフィジャックも、一般的評価は余り良くありませんね。パーカーさんは83点になっていまして、あまり良く書いていません。飲み頃も、"Now,may be in decline" だそうです。

そうでありながらも、このワインは本当に素敵だった。確かに良く熟成していて、果実味の厚さなんて無いけれど、その深みと広がりは魅力的で、やはりとてもチャーミング。

最近こういうパターンが多いですね。どうもこういうワインを高く評価するのは、私自身の個人的好み故かも知れないのですけど、これはやはり素晴らしいワインだと思いました。