2000年8月 今月の印象に残ったワイン


今年の8月は、本当にもう暑かったですね。連日暑くて(当地では)雨もこの1ヶ月全く降らなくて、言葉通り、ちょっと干上がってしまうような感じでした。

部屋の方は当然クーラーを効かせてありますが、こう世の中が蒸し暑いとあまりワインを飲む気になりにくいものです。日本の夏はやはりワイン向きでは無いです。普通はビールって事になるのでしょうが、私はあまりビールは飲みませんので、、

とはいえ相変わらず、幾らかワインは飲みました。でも良く熟成したボルドーやブルゴーニュにはちょっと手が伸びにくくなり、少々濃いめのワインばかり選んで飲んでましたので、今回はそんなワインばかり並んでいます。(本当はシャンパンなんでしょうが、夜中に一人でシャンパンというのも、まぁちょっと情けないですし)

所で、最近90ボルドーのレポートをあちらこちらの雑誌で良く目にします。90だけでなく、20世紀最後と言うことでしょう、82とかの近年の当たり年(ボルドーだけですが)のワインが、今その世紀末にどうなのかと言うことに関心が向いているのだと思います。

ご存じの通り、82はトップシャトーの幾つかを除いて既に飲み頃、なべて大変美味しいと思います。私はあまり飲んでいませんが、ラスカズ以外のスーパーセカンドやそれに追随している評判の良いシャトーは。今本当に素晴らしいのでは無いでしょうか?。(ラスカズは最近飲んでないけど、もしかしたらまだ早いかも知れない)やはり評判通りの素晴らしいヴィンテージだと思います。

対し90は、82と8年もの差、まだ10年しか経っていないのですが、多くはもう飲み頃なんだそうです。最近のワインスペクテーター紙にそんな記事が載っていました、「何で今飲まないのか」と。(既に捨ててしなまっているので、正確ではないかも、、)

私は90は殆ど飲んだことが無いのですが、今後10年20年、この2つの当たり年のヴィンテージを比べながらワインを飲むのも、また面白いですね。




Saffredi 1994
Fattoria le Pupille

サフレディは、数あるトスカナのVDTの一つと言うことになりますが、あまり見かけませんね。(私だけかも)94と言うちょっと弱いヴィンテージですが、見かけたので買ってみました。(もう1、2年前のことになりますが)

サフレディは飲むのは初めてでしたが、これが大層美味しかったです。生き生きとした果実味があるのは当然として、広がりがあり深遠なワインで、「流石に評判がよいワインだけある、良いカベルネとサンジョベーゼのVDTやなぁ」と勝手に納得してワインを飲んでいたのですが、途中でパーカーのバイヤーズガイドを見ると、サフレディはサンジョベーゼとメルロとアリカンテの混醸と記載されています。カベルネが入っていないのは、ちょっと意外な気がしました。

ともかくとても素性の良いワインでした。この少し前に、同じヴィンテージのオルネライア94を飲んだのですが、そこそこ美味しかったものの、サフレディに比べると平板な印象があります。




Archery Summit Oregon Pinot Noir 1997
Premier Cuvee

アーチェリー・サミットも評判の良いオレゴンの作り手です。ヴィレトン(Vireton)と言う、なかなか素敵なピノ・グリの白ワインも作っていますね。そちらは、もう何本かのみました。

オレゴンの他の作り手と同じく、赤ワインはピノだけです。"Premier Cuvee"となっていますので、このエステイトの一番良いキュベかと思ったら、後で見てみると単一畑のキュベが2種類ほど出ていまして、そちらの方が値も高いみたいです。

ほぼ1年前に買ったワインですが、購入する折、インポーターの方によると「若いけど試飲会ではもう結構美味しくて評判が良かった」との由。そう言うわけで、1年置いてもまだまだ若いヴィンテージのワインですが開けてみました。テイストは、本当にその通りで、開栓の最初からスミレの香りがかぐわしく、若いピノらしい美味しさ充分ですね。「まだ若い」なんて事は、これっぽっちも思い浮かびません。

一杯めは結構気に入ったのですが、時間が経てば経つほど、やっぱりカルフォルニアのピノっぽいです、あ、オレゴンのピノでしたね。ストレートな香りで、軽やかでかつ華やかな果実実をもったテイストで、美味しいです。ただそれはやはりプレーンな美味しさで、深遠さとか言う物とは無縁ですね(若いワインだから仕方ないけど、今後変身するとも思えない)。

ブルゴーニュにもこういうワインは有るかも知れませんが、私の思いの中では、こういうピノ・ノワールはブルゴーニュのワインとは、またジャンルの違った別物と言う感じです。 時代遅れな認識かも知れませんが、、




Beringer Cabernet Sauvignon 1991
Private Reserve

「ベリンジャー」です。昔、アスキーの西さんが週間アスキーの日記の欄に、「ベリンジャーと言うワインが美味しかった」と複数回書かれていたのを、何故か良く憶えています。有名会社が次々に倒産する昨今、過去にあれほど無茶苦茶な投資をして、よくまぁ未だに会社が存続しているものだと思わないではいませんが、その当の張本人が未だに各所に名前を残していられるのは更に不思議です。直接には存じ上げませんが、察するに相当魅力的な方なのでしょう。

全く別の話ですが、雑誌の連続購読期間と言うのを考えてみますと、私の場合、恐らく高校の時からつい2、3年前までずっと購読していた「レコード芸術」が二十数年で一番長いでしょう。何時から読み始めたかはっきりしませんが、その次がアスキーって事になると思います。もう二十年ぐらいは購読しています。レコ芸は止めましたが、アスキーはまだ暫くは購読するでしょうから、その内アスキーが一番つきあいの長い雑誌と言うことになるんですねぇ、、へえー。ちなみにワイン雑誌のヴィノテークも17、8年は購読しています。最初東京に居るときは本屋で買っていましたので、直接購読のリストに載るのはずっと後ですが。

さて、本題のそのベリンジャーのプライベート・リザーブです。当初「91は子供のヴィンテージなので、大切に保管しておこう」などと思っていたのですが、この所すっぱり宗旨変えいたしまして、91といえどもカルフォリニアはもうそろそろ飲んでみないと、、と思っています。

色は大変濃いです。最も最近濃いカルフォルニアワインは世の中に沢山ありますが、テイストはそれらからの予想とはうらはらに、あまり濃いとは思いませんでした。いや、濃い薄いではなく、所謂甘く熟したタンニンや濃縮して熟した果実の果実味と言うようなインパクトに強さはそれほど無い、と言うことです。

そう言う意味では、このワインはカルフォルニアワインを「クラッシック」と「カルト」に分けるとすると、クラッシックの方に分類できると思います。(この分類は以前ロビンソンさんが書いていました。何でもかんでもこの様に一次元軸上に分類してしまうのはどうかと思いますが、結構分かりやすい分類ではありますので、時々使ってます。)

色は濃いのでタンニンは充分有るのでしょうが、滑らかで舌にはあたりません。とても端正なワインと言えます。ですが、ウィークなのとは全く違います。「インパクト」と言う物はありませんが、バランスが良くエレガントで、時間と共にアフターも長くなり、良いフィネスのあるワインです。私は、こういったワインの方が好みでもあります。

余計なことかも知れませんが、西さんもあのバブル期にこの様なワインを飲み始めていたら、映画会社や半導体メーカーじゃなく、カルフォルニアあたりのワイナリーを買っていたかも知れませんね。そうだと、まだ少しは良かったのでしょうけど、、

飲んでいる時に、「もしかしたら、今が飲み頃!?」と思ってしまいました。あと数本有るのですが、子供が成人するまで残っているかどうか、ちょっと心配になってきました。




Ch. Larrivet Haut Brion Blanc 1996

今はどうだか分かりませんが、リリース時に大変評判の良かったグラーブの白ワインです。「ラリヴェ・オーブリオン」でして「ラヴィル・オーブリオン」では有りません。値段も相当違います。これはUSAから買ったので、送料とか入ってちょっと高めについていますが、日本で売られていたこのワインは2、3千円台で、かなり安かったと思います。

ラリヴェ・オーブリオンは幾つかのグラーヴのシャトーがそうであるように、同じ銘柄名で赤と白の両方出しているシャトーです。

1、2年前、グラスでこのワインを飲んだことがありますが、若いけど安価な割にはインパクトのある良いワインと言う印象を持ちました。その時はちょっと味がまとまっていないようにも思いましたが、今回飲んだときにはずっと良くなっていました。

樽の良く効いた、ちょい力強い、とても良いグラーブの白ワインです。ラリヴェのワインは余り飲みませんが、最近赤も良くなっているのでしょうか?(90の赤がセラーに入っているけど)

この文を書くちょっと前、83のオーブリオン・ブランを飲む機会が有りました。何と言うか、滋味に溢れた美味しさで、全く素晴らしかったです。さすがに同じSBの白でも、その延長線上とは考えられない違いがありますね。




Ch. La Mission Haut Brion 1988

この間89のミッションを飲んだこともあり(結構もう飲んでもOKだったので)、この88も友人達が来たときに開けてみました。

10人ぐらいで開けたので、1杯ぐらいしか飲んでいませんし、なにせその日は他にも沢山飲みましたので、詳しいレポートはとても書けませんが、印象としては「プチ89」と言うところです。

プチと言っても89のミッションはかなり大柄なので、プチ89と言っても大した物です、正確には「ちょっとスケールダウンした89ミッション」って所でしょうか。やはり果実味の凝縮した、深いワインで、とても素晴らしいです。

このワインを飲むに至って、オーブリオンとミッションの差を、かなり意図して作っているのではないかと言う憶測がどーも浮かんできました。82以降は殆ど飲んでいないので、えらそーな事は言えませんが、ミッションにパワフルさを意図するあまり、しなやかさや優美さ、フィネスが欠け落ちてしまっている気がします。

そろそろ83以降のオーブリオンやミッションも飲み頃だと思いますので、双方ともこれから少しずつ飲む機会も増えるでしょう。




Chianti Classici Riserva "Vigna del Sorbo" 1995
Fontodi

これは大変美味しい赤ワイン。充分熟成を経た精妙さとは違うけど、官能にダイレクトに作用する文字通りの美味しいワイン。濃いとかパワフルという力押しのワインとは違いまして、リッチでバランスも良い大変素晴らしいワインでした。

先に書いたサフレディも、最近飲んだトスカナ赤の中ではかなり美味しかった方ですが、このワインも負けずに良いです。優美さ、バランスの良さ、など潜在的優秀さではこちらが上かも知れません。(ヴィンテージの違いが出ているのかも知れない)

でもちょっとキャンティっぽく無いけどフォントディだからかなぁ、、なんて飲んでいたら裏ラベルにはカベルネ・ソーヴィニョンとサンジョベーゼの文字。イタリア語は読めないけど、そう言われてみれば、このワインは飲んだ感じではカベルネ+サンジョベーゼのVDTと殆ど変わりないでは無いですか。

「あれ、キャンティってカベルネ入れて良かったんだっけ?」、と思ってしまいましたが、イタリアは法律改正が頻繁に行われていまして、以前に買ったイタリアワインの本も既に蔵入りになっていますので、すぐには調べませんでした。

でも最近出たばかりのワイナートに丁度キャンティの品種規定の表が載っていまして、それに拠りますと、84年から補助品種(普通カベルネとかメルロ)を10%以下、96年よりは15%以下なら使って良いみたいです。

これは95なんで、本来は10%以下なんでしょうが、どうなんでしょう?。でもここまで来ますと、テイスト上の特徴においては、キャンティもカベルネ使ったVDTもあまり違わないように思います。