2000年10月 今月の印象に残ったワイン


以前、テレビドラマの原作にもなった「ソムリエ」と言う漫画がありましたが、その漫画の連載終了後に、同じ雑誌に新たなワイン漫画の連載が始まっていまして、未だに続いています。

まぁ、言っては何ですが、つまらない漫画で、むらは有りましたが「ソムリエ」の方がずっとましだったと思います。最初は「ちゃんと立ち読み」していたのですが、最近では立ち読みさえしなくなりました。

でも、その漫画の後に、堀賢一さんが「ワインの自由」と言う1ページのコラムを書いていますが、そちらは読むようにしています。この項は「ソムリエ」に時代からあったもので、まとめて同じ題名の本にもなっていますね。

この間読んだ「STEP97」は「ワイン業界のマーフィーの法則」と言う題でして、ちらと読んだ所結構面白かったのですが、その中で

「ワインセラーが一杯になるまでは安いワインを買うが、一杯になったとたん、レア物に走る。」

という項を読んで、その雑誌を買うことにしてしまいました。(まるで自分の事だったものですから、、「安いワイン」と言うのは、「値がリーズナブルでお買い得な良いワイン」と意味を取っています。)

買って良く読んでみると、まぁ変なやつも有るのですが、中には結構面白いのもあるので一部紹介しますと、、

ボルドーやブルゴーニュの生産者が言う「素晴らしいヴィンテージ」とは「平年並み」の事である。

彼らの言う「世紀のヴィンテージ」とは「ちょっといいヴィンテージの事である。

彼らの言う「平年並み」とは、「最低の年」の事である。

まぁ、その通りですね。

レストランのワインリストの厚さと、その利益率は比例する。

残念ながら、そう言うところが多いのが実際みたいです。その怖い物見たさで、一度ぐらいは銀座の例のイタリア料理のお店に行ってみたい気もしますが、、

昨晩飲んで感動したワインにパーカーが高得点を与えていると、「パーカーもなかなか良く分かっているじゃない」と思い、点数が低いと「やっぱりケチャップの国の批評家なんてあてにならない」と思う。

「ケチャップの国の批評家なんて」とは思わないけど、「やはり、短い時間で多数テイスティングしなければいけないパーカーには、こういう素晴らしさは、なかなかわからないよね」とか、時々思いますが、、ハハ




Chambertin 1990
Dom. Adrien Belland

アドリアン・ベランと言うサントネの作り手は、私はこのワインを買ったとき以外は見たことがありません。パーカーのブルゴーニュと言う古い本に載っている限りで、あとは最近のバイヤーズガイドにも、C.コーツさんのコート・ドールにも載っていませんね。

ワインはなかなかインパクトのあるものです。濃くそして何より力強いのが第一印象と言えます。色はまだかなり濃く、クリアー。果実味にフレッシュさがあまり有りませんが、それは熟成故でしょうか。つまりピノらしいチェリー香があまり無く、素直に魅力的と言えないですが、かなり強いグリップがあって、心動かされます。

時間が経つと幾らかアフターものびてきますが、へたる感じは有りません。このワイン、明らかに濃密で長熟傾向のワインです。今より早くに飲んでもどうだったのでしょう?

いずれにせよ、一口目から強いアルコールとインパクトを感じるワインです。今これにストラクチャーと広がりが有れば良いのですが、、今後の更なる熟成で、そう言った感じが出れば最高ですが、どうなるかは私には分かりません。




Gevrey Chambertin "Clos St. Jacques" 1988
Dom. Armand Rousseau

アルマン・ルソーはジュヴレイ・シャンベルタンで良いワインを作ると評判のドメーヌ。ここのシャンベルタンとシャンベルタン・クロ・ド・ベーズは常にシャンベルタンのトップに評価されていますね。

さてそのルソーのクロサンジャックの88年です。地図をお持ちの方は場所を是非確認してほしいのですが、高価な特級ワインに対して劣らないワインが出来る1級畑が(作り手次第ですが)、クロサンジャック、ラヴォーサンジャック、カズティエらです。(このくらいの名前は憶えておいてよいかも)

自宅ではこの所続けてブルゴーニュばかり飲みましたが、最もバランスがとれて素晴らしいワインです。色はクリアー、少々熟成して色が薄くなっていましょうか。開けたばかりのトップノーズも全く素晴らしく期待できました。

少し時間を経るとアフターも長く見事、複雑で魅力的なアフターです。確実なフィネスを持っているワインで、丁度熟成頂上の感じ、私のイメージとしてブルゴーニュらしいブルゴーニュワイン。

杯を重ねるごとにそのエレガンスと素晴らしさ、そしてフィルムな所に感心します。明確な果実味が有るわけでも濃いわけでも無いのですが、良いワインとはこういうワインでしょう!。




Puligny Montrachet "Les Demoiselles" 1993
Michel Colin-Deleger

ピュリニー・モンラッシェ村のレ・ドモワゼルと言いますと、ルイ・ジャドーとルイ・ラトゥールのシュバリエモンラッシェ・レ・ドモワゼルがとても有名です。この二つの銘柄、実は元々はレ・カイユレの畑の一部なのらしいですが、昔その両社がここは過去にシュバリエモンラッシェとして売られた記録がある、と言うことで申し立ててシュバリエモンラッシェにしてもらったらしいです。

そう言う経緯故か、ルイ・ジャドーとルイ・ラトゥールは面子にかけても特級にふさわしいワインを作らなければいけないわけで(共に自社畑)、実際特級として全く恥ずかしくない(と言うか、更に良い)ワインを作っています。

さて、その特級にしてもらった以外の地区のドモワゼルが、たぶんこのピュリニー・モンラッシェ・レ・ドモワゼルだと推測されます(確証は無いのですが)。

C.コーツさんのコート・ドールと言う本に拠りますと、「ピュリニー・モンラッシェ・レ・ドモワゼルはレ・カイユレのル・モンラッシェ側の30畝、シュバリエモンラッシェの下側にあたる」と書かれています。モンラッシェの回りの畑の地図を、是非ご覧下さい。ただし普通レ・ドモワゼルと言う畑名は地図には記載されていません(カイユレに含まれる)。

場所的に、一級ワインとしては最良の所で、現在その所有者はアミオ・ボンフィス(Amiot-Bonfils)とこの、コラン=ドレジェです。

そして、今回開けたこのワイン、内容からみると全く特級と言えます(ただし値段も、下手な特級並ですが)。素晴らしい白ワインです、最近飲んだ白ワインの中では出色と言えます。




Cain Musque 1998

5角形のラベルで有名なケイン・ファイブを作っているケインセラーズが、最近作りだしたソービニョン・ブランの白ワインが、このケイン・ムスクです。

大阪から来た知り合いにブラインドで出したのですが、「ソービニョン・ブランだなぁ、カルフォルニアかな、、」と、何と一発で当てられてしまいました。常々、ブラインドと言う物は、「まず当たらないものである」と確信していた私には、結構驚きでした。(私は、CAのSBは殆ど飲んだことが無いので、当てようにも当てられないけど)

じっくり飲んでみましたが、このワインとても良かったです。カルフォルニアの白ワインにしては、力押しの感じではなく(樽香もいびつではない)、優雅でまとまりがあり、エレガントでもありました。

総じて上品ながらとても美味しい白ワインで、とても気に入りました。私は割と安く買ったように思うのですが、先日東京に行ったとき、店頭で8千円少しで売られているのを見て目を疑いましたが。




Garrafeira 1990
Carralho Ribeiro & Ferreira




Garrafeira Particular 1949
(Rebottled 1966)
Carralho Ribeiro & Ferreira

およそ40年のヴィンテージ差の有るワインを、飲み比べてみました。事の起こりは、とあるオークションにてこの49年のガッラフェイラを買ったことによります。(1966年にリボトルした、とラベルに記載されています)

古くて珍しいと言うだけで、正直何だか良く分からないで買ってしまったワインですが、後で世界の銘酒事典なる本を見ていますと、良く似たラベルの同じ様なワインが売っているので、こちらも近所の酒屋さんに注文して買ってみました。

この2本のワイン、ラベルの画像では一方が透明接着テープでラベルをはがした物をスキャンしたため、幾らか感じが違っていますが、実際に見た感じではとても良く似ています。

ボトルも、ブルゴーニュタイプをちょっとずんぐりさせた様なボトルで、良く似ていますし、封も、鉛のキャップシールをした上にさらに蝋で封をするという、あまり類型のないやり方で双方同じです。おまけに、その使用されている蝋が結構低温で溶けやすく、すぐべたべたくっついて大変扱いずらいのまで同じでして、長い間変わらぬやり方なのに、ちょっと吃驚します。

買ったときから、この2本を並べて飲むのを楽しみにしていたのですが、今回機会あってかないました。

まずは、ワインの説明をしておきますと、このワインはポルトガルのワインです。「ガッラフェイラ」と言うのは、各酒商スペシャルのリザーブワインにあたるらしいです。つまりその酒商の最良のワインにあたるようです。

その酒商名が、Carralho Ribeiro & Ferreira(カルヴァーリョ・リベイイロ・エ・フェッレイラ)になりますが、この会社はポケット・ワイン・ブックの解説に拠れば、もう営業していないみたいですね。この伝統有る、ガッラフェイラもこの90あたりで最後でしょうか?

その90ですが、目の覚めるような鮮やかな赤色が印象的で、テイストもすぐりやチェリーの様な木の実の要素が強い結構魅力的なワインです。ボルドーにもブルゴーニュにも、よく飲まれるワインのどれにも余り似ていないながらも、なかなか美味しいのが面白いです。ただストレートなテイストで、深淵さとか複雑さとかは持ち合わせて居ないですね。

一方、生きているかなぁ、、とドキドキでテイスティングした49の方ですが、かなり熟成していますが、これが全く健全な素晴らしいワインなのにおどろきました。「すごぉい、美味しいじゃないこれ、、よっく熟成したポルトみたい、、」と言った後で、66年にしたリボトルの際に、ポルトでも入れたんじゃないかなぁ、、と疑念がちらと沸いてきましたが、感激物の素晴らしいワインだったので、まぁ気にしないことにしました。

有名な世紀のワインの1つである、47のシュバルブラン(当然そんなワインは飲んだことがないけど)なんかは、良く「、、ポルトのよう、、云々」と評される事があるのですが、もしかしたらこんな感じじゃあ無いのでしょうか??

どちらにしろ、時折こんな素敵なワインにあたったりするから、古いワインって楽しいです。




Niersteiner Auslangen Christwein Eiswein 1962
Kurfurstenhof




丁度一年前、1999年10月のレポートで、"Dreikonigswein"と名の付いたドイツワインをレポートしましたが、それと同じロットで買った、ドイツワイン、"Christwein"を開けました。(ラベルもとても良く似ています)

"Dreikonigswein"については、昨年10月の記述を見てもらうとして、この"Christwein"は恐らくクリスマスの日に収穫された葡萄のワインであろうと思われます。ですからアイスワインになっています。ラベルにも、何とサンタさんの絵が描かれています。

珍しいワインには違いないのでしょうが、昔のドイツワインにはこういうワインが時折有るらしいですね。聞いた話では、年を越してから収穫したアイスワインで2つのヴィンテージが併記してあるのも有るらしいです。最近のドイツワインには、こういう表記のワインは無いんでしょうね(見かけないし)。

テイストは間違いのない美味しいアイスワイン。こういうワインをのみますと、やはり甘いワインは、色が幾らか濃くなってからでないと、、などと思ってしまいます。