2000年12月 今月の印象に残ったワイン


毎度のことですが、感想を書くのが遅くなりまして、「さて書かねば!」と思ったときには、「どんなワインだったか、とんと記憶にない」って事になってしまっています。そう言うわけで、どうも生彩のない感想になってしまっていますのは、ご勘弁下さい(本当に毎度の事かも知れませんが)。

話は変わりますが、変なハイジャック事件が起きたせいかもしれませんが、暫く前から飛行機の機内持ち込みがちょっと厳しくなりました。ナイフ類(カッターを含む)は全て持ち込み禁止と言うわけで、何と!ソムリエナイフさえ、機内持ち込み禁止です。

ワインが好きな人は、旅行とかに行くときは必ずソムリエナイフを何処かに携帯していると思います(普通そうですよね、きっとあなたもそうしている事と思います)。

確かに高級なソムリエナイフの中には、肉さえ綺麗に切れそうなフォイルカット用ナイフが付いていますが、私が飛行機などに乗るときに持ち歩いているソムリエナイフは、ニュージーランドのマチュアヴァレーと言うワイナリーでもらった物で、このナイフの部分で物を切るのはかなり難しいです。通常のソムリエナイフは、大体そんなものですよね。

「これは機内持ち込みできません」と件のソムリエナイフを見つけられても、最初のうちは、「こんなのじゃぁ、どうやったって切れないよ!」と実演して見せたりして、抗議もしたのですが、どうも受け入れられませんでした。それで、今度は収納場所とかを色々工夫してみましたが、X線検査で必ず発見されてしまいます(しかし良くわかるなぁ!)。

さすがに、毎回鞄の中を探し回されたあげくに没収されるのにはうんざりなので、「要するにナイフが付いてなければ良いのだろ!」と言うことで、この前のV&Sのドゥマス・ガサック試飲会でもらった、「ナイフでないフォイルカッターの付いたソムリエナイフ」を携帯する事にしました。

そして飛行機搭乗口、案の定「ビー」と言う音がして、「鞄を調べます。」との事。「どうぞ」と私。《おーおー存分に調べてくれ!》

暫くして、「これは持ち込みできません。」と取り上げられたドゥマス・ガサックのソムリエナイフ。「これにはナイフとかは付いていないのですけど」と私。《何ゆーてんねん、よーみてみんかい!》

暫くパチパチと開けたり閉めたりしたあと「そうですね。」と返答。「じゃあ、いいですね」、「は、はい」、と言うことで無事携帯して搭乗できました。

しかし、通常「親指の先ほどでまったく切れないナイフ」のついたソムリエナイフでさえ、刃物の形状をしていると言うだけで危険物扱いにされてしまう画一性には、あきれてしまいます(強いて言えばむしろスクリュウの方が危険かも)。あんなものが危険なんだったら、鉛筆だって万年筆だって鞄の留め具だって、何でも危険なんじゃ無いでしょうか?。




Ch. Leoville Las Cases 1981

随分昔(もう12、3年くらい前になるかな)、このワインを何処かで買って、レストランに持ち込みさせてもらって、友人数人で飲んだことが有ります。その頃はこんなワインはまだそんなに飲めなかったのですが、そのせいかとても素晴らしくて感激したのを、良く憶えています。

やはり熟成が進んだせいか(買った経路も違いますし)、その頃の印象とはすこし違うのですが、良く熟成した美味しいボルドーでした。

古酒の印象を纏うようになったワインも良いのですが、ボルドーでも割と元気な内に飲んでみるのも、また良いかなと、ふと思ってしまいました。




Goldwater Cabernet and Merlot 1994

97年(もう昔ですね)、NZに行ったとき買って帰ったワイン。ストニィリッジと並んで有名なワイヘケ島のワインです。

全く、期待通りのテイスト、期待通りの美味しさに、充分満足でした。私にはこの様なNZのカベルネ主体のワインは、明らかにボルドーともカルフォルニアとも違うように思うのですが、やはり気のせいでしょうか?。

かなり早くから飲めることはカルフォルニアなどと良く似てもいるのですが、あれほど一般的に厚化粧っぽいところもなく、濃さを全面にだしたワインでも無いように思います。

あまりごてごてした所が無くて、それでいて、酸と果実味のバランスが良いのでしょうか、美味しく飲めてしまいます。飲んでいる時の記録には、「ブラインドならトスカナのサンジョベーゼ+カベルネと言ってしまう可能性大である」と書いてあります。

結構色々なNZのカベルネを飲みましたが、流石に噂に違わず、このゴールドウォーターはその1、2を競うほど良かったです。大変品位が高いというか、フィネスを持っていると言っても良いと思います。




Ch. Magdelaine 1982

このワインもまた、82と言う素晴らしいヴィンテージを体現している、期待通りの良いワインでした。

色は充分です。中央はまだ濃いもののエッジには熟成の呈、さすがにオレンジが見えます。熟成をへてテイストには力強さは無いものの、エレガントさがあり、アフターが大変見事。余韻が柔らかく甘く、長く立ち上がり、素晴らしく魅力的。これに特別な複雑さがあったら、それこそグランヴァンです。

余韻が見事なので、時間が経つに従って一口一口が少量で、長くなってしまいます。やはりこういうワインは良いです。




Nuits St.Georges "Aux Allots" 1989
Dom. Leroy

ルロアの中でも比較的買いやすい、ニュイサンジョルジュ・オーザロです(リエゾンしますので aux Allots と書いてオーザロって読みます)。

実はこのオーザロと言うのは一級畑では有りません。特級でも一級畑でもないのに畑名を書くのは珍しいですね。普通の作り手なら、単なるニュイサンジョルジュとするでしょう。

昔買ったワインなので、買ってからの一時期温度管理の無いところに保管してあったのですが、このボトルに関する限りは痛んだようなところは見受けられません。上手く熟成した真っ当なワインです。

最初の感想は「深く深遠で複雑、少々小ぶりであるけれど、見事な調和もあって良い」と記録してあります。また暫くしての感想では、「男性的(小ぶりだけど)、フォルムがしっかりしている、、素晴らしい、素晴らしいが、小さいか」と続けて書きました。

確かに大変見事なんですが、見事故に時間が経つに従って、やはりテロワールの限界を見るような気がしまして、自身少しびっくりしました。




Ch. Lafleur 1970

この年は世紀の変わり目で、「今年最後のワイン」である以上に「今世紀最後のワイン」であるわけで、普段ワインを飲んでいる人は、どういうワインにしようか、悩んだ方もいらっしゃることでしょう。

私は年末は予定も何もたてられないので、何も悩まなかったのですが、結局このワインが20世紀最後のワインとなりました。そして、それに恥ずかしくない堂々たるワインでもありました。

ラフルールは生産量も余り多くないおかげで、あまり飲む機会もありません。最近では高すぎて、私などには殆ど購入不可能と言えますね。それに、何だか、ロバン姉妹が作っていた頃のワインを追想したい気もしますし、、

このラフルールは、大変濃い色。グラスでの中心部の濃さなどは70と思えないくらいです。テイストの凝縮度も素晴らしいもので、堂々たるワインです。

ただ、その先を言うならば、何というか完成度の高い「見事さ」と言う物にはちょっと足りない気もしますが、無理を言いすぎでしょうか?。クライブ・コーツさんのこのワインの評論の中で、「明らかに、昔からの作り、をされたワインである」と書かれています。実際に飲んだことがある者には、とても納得できる評論ではあります。