1996年7月 今月の印象に残ったワイン


昔私がワインを飲み始めた頃、ワインは今ほど安くなく、(とりわけブルゴーニュは高かったので)ブルゴーニュの事も良く知りませんでした。そんな中、たまに思い切って買った高価なブルゴーニュを1、2年して開けたところ、それはまたとても美味しくて、ブルゴーニュはかくも素敵なワインなのか、と改めて知った事がありました。

そんな事が有ったものですから、どうしてもその銘柄に思い入れが有ります。それは「Beaune Greves Vigne de l'Enfant Jesus 1979」(ボーヌ・グレーブ・ヴィーニュ・ドゥ・ランファン・ジェズゥ)で、ブシャールと言う大きなネゴシアンが作っています。このGrevesと言う畑は、ボーヌで一番良いと言われている1級畑です。

パーカーさんなどの評では、87年まではブシャールは大したことがないらしいのですが、それからオークションなどで見かける度に(評判が良くないのであまり高くない)買ってみまして、1978、1985、1986と手元に有ります。

何時も、「昔の感動をもう一度」と期待して開けるのですが、(噂通り)期待はずれの多いワインです。7月はこの3種を一通り飲んでみましたが、大体今までと同じ印象で、78と86はかなり酸化が進んでいる感じで、あまり楽しく飲めません。85も以前はまぁまぁ良かったのですが、すでに酸が目立ってきていました。

ワイン自体の問題かも知れませんが、私の所にあるボトルの経路での保存が悪かった可能性も充分有りますので、これだけでは判断できません。


次もブルゴーニュで、

Vosne Romanee "Le Malconsorts" 1985
(Cathiard Molinier)

このワインは結構安かったので(小田急ハルクのセールで買いました)幾らか買った中の何本か目です。

もし手元に資料等が有りましたら見ていただきたいのですが、ヴォーヌロマネ村でこのLe Malconsortsと言う畑はラ・ターシュの南隣の1級の畑です。良い作り手が作れば、特級なみの素晴らしいワインが出来る由。

ついでに記しますと、エシェゾーとロマネ・サンヴィヴァンやリッシュブールの間にある"Le Suchots"もまた、作り手次第で特級と同じ素晴らしいワインが出来る畑かと思います。

今までに開けたボトルが、総じて何だかオーバーライプ(over ripe)な感じで締まりがなく、購入は失敗だったかなぁ(若しくは、保存が悪かった)、と思っていたくらいでしたが、このボトルはしっかりしたストラクチャーを持った良いワインでした。

ワインと言うのは、わかっているつもりですが、本当に一本一本ニュアンスと言うか表情が違う場合が有りますね。


ある日、ふとセラーの床を見ると、濡れている所が有ります。不思議に思ってよくよく調べてみると、有るボトルの口が濡れていて、そこから滴り落ちている様です。「エエェ」っとボトルを見るとそれは、

Vieux Chateau Certan 1961

でした。古いワインなので、コルクが弱ってワインが漏れ始めたのでしょう。来たときは確かハイショルダーだったと思いますが、すでにミッドショルダー。「こいつはいかん、もう死んでいるかも知れないが、とりあえず飲もう。」と、すぐ飲みました。

味はさすがに酸化しかかった程を見せていましたが、力がまだ有って、それでも充分美味しく楽しめるワインでした。ボルドーと言うのは、ブルゴーニュとかに比べてやはり強いですね。

ブルゴーニュでは80年代のワインでも、保存やコルクが悪くて、飲むのがつらくなってしまったワインに時折遭遇しますが、ボルドーでは余りそう言うのに当たりません。如何にも危なそうなワインでも、結構楽しんで飲めたりします。

それにしても、やはりこれはちょっと残念でした。61のワインは59より総じて高価で、私は59の生まれなので、「61買うなら59」と言う思いが有り、61のワインは殆ど持っていないのですから。