最近のボルドーの高騰ぶりはどうでしょうか!。1年ちょっとで2倍、いや3倍になった銘柄も珍しく無いように思います。そろそろ春のワインフェアのシーズンですが、リストを見てもボルドーに関しては、低価格なワインを除けば、どうも買っておこうかと思わせるワインは皆無です。(しかしこれは世界的傾向でして、暫く前から海外の市場も非常に高くなっていまして、オークションなどでも非常に買いずらくなっています。)
ボルドーを買う気がしなくなると、何だか飲む方もボルドーから疎遠になってしまいます。今月はボルドー以外ばかりです。
まずは、94年の暮れに買った、
Volnay premier cru 1989
Emile Bouley
です。「ヴォルネイのエミール・ブレー」と言いますと、ワインの本を色々読んでいらっしゃる方は、「あれ」と思われるかもしれませんね。
このワインは、写真家の辻啓一さんが94年に出された本
「ブルゴーニュの黄金の丘で」
に取り上げられています、「ブレーさんの所」のワインなのです。
副題「ブレーさんのワイン造り12カ月」
この本は、現在写真家で、学生時代にかの畑で葡萄摘みのアルバイトをした筆者が、主に90年一杯、度々にわたりブレー家を訪ね、その仕事ぶりやヴォルネイの風景を、写真と文章で綴った本で、ブルゴーニュの小さなワイン醸造家の様子が分かって、大変興味深い本です。
装丁上、各ページに余分な空白が多いのが少々気に入りませんが、ブルゴーニュに興味が有る方は、是非読んでみて下さい。ホーム社発行、集英社発売です。
でも本当に日本のインポーターって大したもので、欲しいと思われるワインはどっかがちゃんと輸入してきてくれるから不思議です。ただ本の取材の優れた年の、90年のワインでないのは残念ですが。
このワインは、ほぼ1年前に1本目を飲んでの2本目です。前のはほんの少し堅い感じもしたと思いますが、既に飲み頃となっていました。明瞭にその地所を主張する秀逸さは望めませんが、きちっと作られた大変良いワインであると言う感じは前回飲んだ時とほぼ同じです。
私の記録によれば、価格は2850円となっています。今考えても大変お買い得なワインです。本が出版された94年のみのインポートでなく、90も欲しかったな、と思われます。本では息子のロランさんは、シャトー元詰めには興味がなく、ヴォルネイの畑の70歳を越える老木も全て植え替えてしまう意見である由。ちょっと残念な気もします。
ワインを飲みながら、久しぶりにこの本を読み返し、まだ行ったことのないブルゴーニュの様子に想い馳せる夜でした。
Barbera d'Asti 1990
これは、人から頂いたワインですが、最近イタリアワインにも興味が有ることから、開けるのを私は大変楽しみにしていました。(このワインはバルベーラと言う葡萄から主に作られているのですが)正直言いまして、バルベーラのワインを飲むのは初めてではないかと想います。
イタリアにもフランスと同じようにワイン法があり、統制原産地呼称(DOC)が適用されています。その頂点は現在14のDOCGで、その下に240余りのDOCが有ります。このワインの、Barbera d'Astiはピエモンテ州のDOCの一つです。ピエモンテ州と言えば北イタリアで、有名なバローロ(DOCG)の産地としても有名ですね。
その名前は、「Asti近くの特定エリアで、バルベーラ種から作られたワイン」と読むことが出来ます。(イタリアのDOCにはこういう表記が多く見られます。その他イタリアワインについての詳しいことは、関係書籍にをご覧下さい。)有名なバローロはネッビオーロと言う葡萄で作れられていまして、バルベーラで作られたワインは一般的には低く見られがちですが、「ことにアスティ周辺の限定された畑からの熟成したバルベーラに関しては、ネッビオーロの赤に並び称される」と、イタリア貿易振興会発行の小冊子にも記されている通り、評判の良いDOCでもあります。
飲んでみたワインは、時間と共に開いてきて、開栓1時間くらいしてテイストに広がりとこくが出てきて、大変美味しく思えました。でも、香りは今まで経験のない香りで、うまく表現出来ませんが独特でした。葡萄の素性は香りに出るようです。
Romanee St.Vivant 1976
畏れおおくもDRCのロマネ・サンヴィヴァンです。安かったのでこの76のDRCを結構多いロットで買いました。最初の1本こそまだチャーミングで飲めましたが、後のはどうも飲み頃を過ぎているか、傷んでいるかで、楽しめません。全体的に痩せていて、既に酸が目立っています。「今度こそは」は毎回思うのですが、、、(それでもちゃんと全部飲んでいます)
DRC
色々な方の噂では76のDRCはどうも濃縮度が今一との事です。ロマネ・コンティも凄く色が薄いとの事ですが、このワインもかなり薄い色を呈しています。ブロードベントさんの本では、結構評価は良いのですが、色々飲んだ方から聞いた話とパーカーさんの意見は結構一致していまして、「70年代DRCは不調であって素晴らしいのは78年から」との事です。私が買ったこのワインは、単に経路が悪かっただけかも知れませんので、私自身としては正確な判断は出来ませんが、、
では1976年はブルゴーニュの赤ワインにとってどういう年だったのでしょうか?。ブロードベント著の"Wine Vintages"では評価は"***(*)?"(最高星5つ)で"A very welcome vintage....etc"と有ります。一方パーカさんの本では、「偉大な当たり年とされたが、(中略)多くの失望を味わった。細心の注意で望みたいヴィンテージ、(後略)」と言う具合です。
誰が正しいか判断するのは、結局我々が飲んだワイン次第と言う事になるでしょうが、無難に言えば「悪いヴィンテージでは無いけど、危ないのもある。」と言う所でしょう。
そう言う訳で、今月は76のブルゴーニュをもう一本飲みました。
Chambertin 1976
Philippe Remy
Pilippe Remyとは知らないドメーヌで、ちょっと怪しくもあったので一人で飲みましたが、これが全く素晴らしいワインでした!。開けた直後のテイスティングで、結構性質の良い果実味が有ったので、「これはいけるかな」とは思いました。
もっとも、そのまま落ちてしまう可能性もありましたが、1時間を過ぎてますます良くなり、テイストに広がりと味わいが出てきまして、香りもますます広がるばかり、、この一年くらいの間に飲んだ中では最高のブルゴーニュと思えます。全くワインとは開けてみるまでわからないですね。(その傾向は特にブルゴーニュに強いですが。)
Quarts de Chaume
Chateau Belle Rive 1959
私のヴィンテージ、1959年のカール・ド・ショームです。詳しい事は他のワイン本を読んでもらうとして簡単に説明しますと、カール・ド・ショームとはフランスはロワール地方、コトー・ド・レイヨン内のACです。
コトー・ド・レイヨンは、有名なアンジュ・ロゼの産地アンジュ地区の中にありまして、シュナン・ブランと言う葡萄を用いて甘口の素晴らしいワインを作っています。その中の独自ACが、カール・ド・ショームとボンヌゾーです。私はこの甘口ワインが大好きです。
オークションで買って国際宅急便で送られてきたこのワインは、電灯に透かしてみると「真っ赤」でして、一瞬「カール・ド・ショームって、赤ワインは確か無かったよなぁ、」と確認したほどです。
一般に熟成した白ワインは色を帯びて褐色になるものですが、こんな赤い色しているのは初めて見ました。でも実際には多分にボトルの色が影響していた様で、グラスに注ぐと違うことは明白でしたが。
ずっと飲みたいワインでしたが、大阪から知り合いがみえられて開けました。同席した方の意見では、「いってしまった奴だね」との事ですが(当然私も同意見です)、実は私はこういうのは大好きです。凄く美味しいと思いました。