1997年5月 今月の印象に残ったワイン


Montevertine Le Pergole Torte 1987

某所から売り込みの電話があって、「そんじゃあ」と買ったワインの内の1本です。その時は「モンテヴェルティーネ」と言うワインを知らず、私「それ、どんなんでしたっけ?」、相手「ええっと、版画みたいな女の人の絵がラベルになっている奴です」、との返答に、勝手に「ヴェネガッツ」と勘違いしてしまっていた私でした。

モンテヴェルティーネはキャンティクラシコに有り、サンジョベーゼ100%で作られているワインです。つい最近まで、法律でキャンティは白葡萄を混醸せねばならず、サンジョベーゼ100%で作ったワインは、キャンティの名では売れず、デーブルワイン、ヴィノ・ダ・ターボラ(VdT)となっていました。

そういうシステムに早々と見切りをつけ、キャンティの名を捨てて、VdTでワインを売り始めた先陣が、このモンテヴェルティーネである由。レ・ペルゴーレ・トルテとなるサンジョベーゼは、良い区域の中でも樹齢の高い木から作られるのだそうです。またこのレ・ペルゴーレ・トルテのラベルは、ムートンのそれの様に毎年変わります。ただ、作者は同じ方のようで、作風は同じですので、すぐ「レ・ペルゴーレ・トルテ」って判ります。

ワインは、とても美味しいサンジョベーゼと言う感じで、大変楽しめました。強いて言えば、今一深みにが足りない感もありましたが、ヴィンテージが悪いので仕方がないでしょう。


Taylor Vintage Port 1966 (half)

ここにポートが出るのは初めてですね。実は私、数年前までポートは全く飲みませんでした。それは、例えばカルフォルニアワインへの接し方と全く同じで、「良いのは知ってはいるけど、とりあえず私が知っている範囲のワイン(フランスとドイツ)で充分間に合っている。」と言う理由に依ります。

私は純然たるアマチュアのワイン愛好家ですから、何も世界中のワインを知っていなければいけない理由など何処にも無いのです。ワインを飲む機会も限られていますし、敢えて冒険をせずとも、テロトリー内でいる方が「美味しい」確率が高い訳ですから、、

それがカルフォルニアワインの場合、別項でも書きましたが、娘の91ヴィンテージを集める事からカルフォルニアワインを色々知る事となり、知れば知ったでまた興味が湧いてあれこれ買ったり飲んでみたりする羽目になるわけです。

ヴィンテージポートもそんな理由で、数年前、友人に「フォンセカ1963」を飲ませてもらうまで、殆ど飲んだことが無かったと思います。でも思えば変ですよね、ヨーロッパやアメリカでは大変人気が高いのですが、日本ではあまりポート(特にヴィンテージ物)って人口に膾炙していませんね。デパート等のセールでも殆ど見かけません、売ってないから手に入れる術も無いと言えます。未だに「赤玉ポート」の醜悪さが尾を引いているのでしょうか?。

飲んだフォンセカの63は、私の目をいきなりポートに向けさせるのに充分でした。以来ヴィンテージポートを少し(日本では売っていないので)海外のオークションで購入しました。一人で飲むことが多いので、フルボトルは(幾ら、ポートは開栓後数日はもつとは言っても)ちょっときついので、ハーフを探して買ったのがこのワインでした。

Taylor(テーラー)はFonseca(フォンセカ)と並んで、共にイギリス系の高名なポートの作り手です。以前フーデックスでポートワインのミニ講習会に出たとき、ポートの 作り手は「イギリス系」と「ポルトガル系」の二つに大きく分けられ、「それぞれ別の特徴が有る」と言う話を聞きました。

この66年は非常に良い年です。ヴィンテージポートは毎年作られる訳ではなく、出来の良い年のみに作られます。作り手に依りますが、例えばテーラーの場合、今飲み頃を迎えている60、70年代では、60、63、66、70、75、77が有ります。詳しくはH.ジョンソンの「ポケット・ワイン・ブック」等の各書物を参照して下さい。

またポートワインについて、詳しく知りたい方は、ICEP(ポルトガル投資・観光・貿易振興庁)が刊行しています、

「ポートワイン」(ICEP)

と言う本が最良です(と言うかこれしかない)。

ただこの本、政府刊行の本ですから、「何処々々の作り手が良い」とかの記述は有りませんから、ポートワイン購入ガイドが必要な場合、パーカーの「バイヤーズガイド」か前述の「ポケット・ワイン・ブック」等で補完する必要が有ります。

書店ではあまり見かけませんから、ICEP(tel:03-5474-4400)か編集制作を行ったグループ・ヴィノテーク(03-5563-9091)に問い合わせ下さい。またヴィノテークに購買案内がのってます。

前振りが思いっきり長くなりましたが、このポートを開けるのは3本めです。夜飲むために、夕方5時くらいに開栓しデカンタしました。先のICEPの「ポートワイン」には「ヴィンテージポートは最低1、2時間前に開栓デカンタせよ」と有りますが、普通もう少し前に開栓する事が普通(時間に余裕が有る場合)かと思います。前日に開栓デカンタする例も少なく無い様です。(私は経験が浅いのでどの位が良いか、明確な判断は出来ません)

ポートは澱が多いので、デカンタにはフィルタのついた「デカンティング・ファネル」(つまり網付きの漏斗です)が有った方が良いでしょう。日本ではあまり見かけませんが、広尾ガーデンプレイスのカーヴ・ド・タイユバンで売っていたので買いました(ちと高い!)。無ければ、清潔な布やコーヒーフィルターで良いそうです。

ハーフのポートを二夜で飲むのが最近の私の習慣です。ワインと違って、ヴァキュヴァンを使用すれば、次の日でも殆ど変わりが有りません。いつもながら、大きなボディ(アルコールの高さからもくるのですが)、それに負けないしっかりしたテイスト、そして広がりのある芳香。やっぱりヴィンテージポートって良いですね。


ポートで長々と書いてしまったので、後は簡単にしませう。大阪在住の、「関西ワイン愛好家の総元締め」とも言える方が徳島に見えられ、その方が先に私の所に送ってきて、一緒に飲んだワインの一部です。


それに79のシャンパンと47のタルボ(マグナム)だったと思います。
その他、私が持っていたのが、
Musigny Blanc 1979 (Vogue) と Echezeaux 1983 (M.Mugneret) でした。

中でもポール・ロジェの69が極めて印象的でした。泡もまだ力図良く、またワインとしても力図良いものでした。こう言うのを飲むと、風評に反してシャンパンも長く寝かしたくなります。

マヤカマスは、ジンファンデルのこんなに古いのは初めてでしたが、まだその葡萄の特徴をしっかり持っていて、面白かったです。最後のリッジは、極めて完熟したジンファンデルを集めたのでしょう(詳しい製法は良く知りません)、「最初の糖分が40.5%、このワインにしたときの残余糖分が10.5%」とラベルに記載されています、甘口赤ワインです。これ、美味しかったですよ。

こんなワイン達には、普通にはまずお目にかかれませんが、こう言うのも大変魅力的ですよ、と言う位で止めておきます。(はまると、相当こわいですよ)