最近のカリフォルニアワインの過熱ぶりにはやはり注目せざるを得ません。私はそれほど飲んで居ませんが、事実品質も、特に90年以降めざましく良くなっている様に思います。
ヘレン・ターリー(Helen Turley)やトニー・ソーター(Tony Soter)、ハイディ・バーレット(Heidi Barrett)ら、その他のワイン醸造コンサルタントが活躍し、非常に評判の高いブティックワイナリーが次々誕生しています。それらカルフォルニアワインにつきましては、是非春名さんのホームページを見てみて下さい。
さて、何時だったか病院の待合い室、長く待たされている間たまたま鞄に入っていたThe Wine Journal誌を取り出して、普段は読み飛ばす様な箇所を読み直していました。そこに取り上げられて居たのが、カルフォルニアのGrace Family, Hartwell, Moraga, Vineyard29の各ワイン。共に評論を読むと激賞されていました。
Grace Familyのワインは以前から有名で、オークションでも良く見かけるし又無茶苦茶高いので、ひとまず無視するとして、他のワイナリーについては、その生産量の少なさも手伝って大変興味をひかれました。Hartwellは465のレギュラー3本パックと200本のマグナム、6本のダブルマグナムと3本のインペリアルのみ、Vineyard29は250ケース以下、とあります。
さて、生産量の大変少ないブティックワイナリーのワインを確実に手に入れる方法としては、そのワイナリーのメーリングリストに登録して、リリース直後にそのワイナリーから直接買う方法が有ります(当然ですが、そういう方法でワインを売っているワイナリーに限りますが)。
人間やはり(良い物で)珍しい物は何とか手に入れたくなってしまうもので、HartwellとVineyard29にワイナリーから直接買えないかと、メーリングリストの申し込みの手紙を書きましたが、Vineyard29からは返事無し(元々メーリングリストは無い様です)、Hartwellからは「今一杯で、ウエイティングリストに載せた」との返事でした。
でもまぁ、探せばどっかにある物で、インターネット上でUSAのワイン屋を色々見ていますと、Wally'sと言うワイン屋で共にリストに載っているのを発見しました。先に見た雑誌ではリリース時は共にせいぜい、3、40ドル位らしいのですが、見つけた小売価格はその2.5倍くらいになっていました。
結構高い(へたをするとボルドーの一級が買えてしまう価格)ので、一瞬躊躇しましたが、結局問い合わせをした後HartwellとVineyard29をあわせて1ケース買いました。92が中心で、評論で良かった93は無かったのが残念ですが。
買ったのは昨年(平成8年)11月ですが、さすがに92は飲むには若いんでは無いだろうかと1本も開けずに置いてあったのですが、あちらこちらで聞くレポートでは、カルフォルニアの有名どころを92、93と言わずリリースされたばかりの94でさえ、皆さんどんどん開けている様ですね。
私はワインを早飲みする習慣は有りませんが、一般的に早くからも飲めるように作っているらしいとも聞いていますので、ついに我慢できず1本だけ開けてみました。
Vineyard 29 Cabernet Sauvignon 1992
ラベルのピクチャーしか有りませんが、このワイン、見た目からして大変格好良いです。イタリアで良く見られる、スラリと背の高い少々肩の張ったボトルで、口はモンダヴィの様にキャップシールが無くコルクの上にシールを張って有ります。見た目からして、期待を持たせますね。
このワイン、解説に依りますと、グレースファミリーが使っていますボッシュ・クローンのカベルネソーヴィニオンを、近くの畑(北 St.Helenaの緩やかな斜面)植えて収穫し、醸造その他は、グレースファミリーがやっている様です。使用葡萄はそのカベルネ・ソーヴィニオン100%、その後フレンチオークの樽で、30カ月熟成された由。
醸造と瓶詰めはグレース・ファミリーでやっていますので、ラベルにグレースの名前が見えますね。
葡萄の木は比較的若いかも知れませんが、言うなればグレースファミリーの異ラベルと言え無くもないと思います。この92のワインは最近ワインスペクテータに評論が載っていまして、「もう飲める」と書いて有りましたのが、飲もうかな、と思うきっかけです。因みにその時の評点は86点と、あまりぱっとしない点数がついています。
期待していたテイスティングですが、紫色が顕著で、やはり「まだ若い」って色をしています。濃縮度は割とある方だと思いますが、噂に聞く Colgin等の「向こうが見えないくらい濃い」ってことは有りません。
確かに今飲んでも大丈夫だとは思いますが、結構古いのを飲んでいる私からすると、まだちょっと広がりが足りないかな、とも思います。まだちょっとタンニンが当たりまして、もう暫く置いておいた方が面白いかと思いました。
7月中旬に2、3日出張に出かけました。出張先で、ここにもワインバーは有るはず、と本屋で立ち読みして調べて行ったワインバーで飲んだワインが、
Ch. Montus cuvee Prestige 1988
でした。このワインの88は結構珍しいかと思います。
1996年11月のレポートでも取り上げたワインでして、(普通あまり馴染みの無い)AC Madiranの今大変注目されている評判の良いワインです。
先年、作り手のアラン・ブリュモン氏が来日したりして日本にも知られ、レストランのワインリストやショップで見かける様になりましたが、それはせいぜい1991以降のヴンテージです。現在買うことが出来るのは92ですね。(私も買いました)
"Cuvee Prestige"となっているワインは、「タナー」と呼ばれるマディランで以前から作られていた葡萄のみから作られる由。(ただのCh. Montusは確かカベルネか、その他の葡萄が混じっている筈)1988年の Ch. Montus、それも"cuvee Prestige"は珍しく、今ではまず見かけることは無いワインですね。
全然カベルネっぽく無いのですが(当然)、ボルドーの良い作りのワインの様に、うまくまとまっていて、力強く有るのですが、ちゃんと洗練されたところもあって、やはり良いワインです。そのワインバーでは値段も安く、恐らく現在売られている92の Ch. Montus cuvee Prestigeの小売価格よりほんの少し高いだけかと思います。まぁ、「あまり出ないワイン」らしく、この2年間でたった4本目だそうです。
このワインバー、最近のワインバーブームで出来たお店かと思ひきやさにあらず。もう9年になるんだそうです。それで、以前に安く仕入れた時の価格を基準にして売っていますので、他のワインも(特にボルドーなど)大変安く感じます。良いお店でした。
ボルドーが高くなった、安かったイタリアワインも結構高くなった、カルフォルニアもえらく高い、、と来れば、あとワインを多く作っている国で残るのは、ニューワールドと呼ばれている新興ワイン産地のオーストラリア、チリ、南アフリカ等の国々と、そしてスペイン、ポルトガル、ハンガリー辺りですね。
そう言うわけで、次にスペインが注目されるのは「極めて順当」な訳で、そう思っていましたら、輸入会社もスペインワインに注目している様で、色々なワインが入ってきていまして、これからが楽しみです。(その次はポルトガルか)
事実最近のスペインワインは(あまり飲んでいる訳では無いけど)、とても良くなった様に思います。今年(1997)の春のフーデックスでワインを色々試飲して回り、一番印象的だったのはスペインのワインの品質の良さでした。
現在東京の方では色々なスペインワインが売られて居る様ですが、まだどれも買っていません。そんな中、地元の酒屋で見かけたのが、
Senorio de Nava Riserva 1990
Ribera del Duero
です。良く覚えていませんが、確か価格は千円と少し、多分この欄で取り上げた中で一番安価なワインでしょう。
このクラスのワインは沢山ありますが、まず目を引いたのは、"Ribera del Duero"と言う地域名です。(覚えておいてよい地域名です)
そして"Riserva"も。これはスペインにおいては(「レゼルヴァ」でなくて)「レセルバ」が正しい発音の様です。赤のレセルバは最低樽で1年、ボトルにて2年、熟成させたワインとの事です。因みにグラン・レセルバ(Gran Reserva)となると、樽で2年、ボトルにて3年以上となります。
スペインワインと言うと、まず有名なのが「リオハ」ですが、最近良い品質のワインをが作られる地域として注目を浴びているのが、この「リベラ・デル・ドゥエロ」です。以前から、スペイン一の最高級ワインと知られているベガ・シシリア(Vega Sicilia)はこの地区の作り手ですし、R.パーカーが紹介して有名になったペスケラ(Pesquera)もこの地区になります。
ワインは非常に好ましいフォームをしています。開けて30分ほど経った方が、香りもテイストも少し広がるようで、なかなか素敵で大変良いワインです。ただ悲しいかな、そのスケールや凝縮度がやはり値段なりなんですね、当たり前なんですが、、。と言いましても、このクラス(二千円未満)では出色の出来なのでは無いでしょうか?。食事と共にするワインとすれば、これで充分では無いかと思います。
やはり、今後スペインは注目ですね。しかしこのワインは安いですが、売られている中には、ちょっと高すぎる様に思われるのが多いのが気がかりです(気のせいでしょうか)。ボルドーやブルゴーニュにおいては、既に日本のワイン価格は、フランスやアメリカのそれとほぼ同じでありまして、その代わりに、ここらで内外価格差をつけて、、なんてことにならない事を祈ります。
日本でワインが顕著に安くなるちょっと前、同じヴィンテージの同じワインで一番多く飲んだのは、ラ・ミッション・オーブリオンの84と、
Ch. Lanessan 1982
位です。 共にはずれのない、とても美味しいワインでした。当時としては比較的安くもありました。私としては、とてもなつかしいワインです。2本ほど残しておいた一本を、久しぶりに開けてみました。
買ったのは92年です。当時、豊かで美味しかったワインですが、5年後の今は果実味もかなり落ちてしまっていました。
それなりに美味しかったですが、このワインに関しては、以前に飲んで居たときの方が、私は良かったように思いました。
もっともその間の2、3年間、セラーの無い状態で保管して有ったので、怪しいことは怪しかったのですが、熟成がかなり進んでいるのは確かな様です。やはり飲み頃って有るようですね。
地元の酒屋さんのセラーで見つけたのが、入荷したばかりのポムロルの
Ch. Clinet 1970
です。それと同時に、同じクリネの75も入荷していました。共にPT(ピーター・ツーストラップ)経由のワインです。多分1万円程だったと思いますが、クリネの75は以前に飲んだことがあったので(これはとても美味しかった)、70の方を買ってみました。
最近リリースのクリネは大変評価が高いですが、80年以前のクリネがどんなのかはどうも不明です。パーカーさんの本にも84年以降の評価しか載っていません。
ただ、1、2年前に飲んだクリネ75(これはオークション経由)はポムロルらしい滑らかなテイストの中にも力強さがあって、予想外に美味しかったので70も期待して開けてみました。
ラベルは(一緒に入荷していた75も)大変綺麗です。また、ラベルのヴィンテージの数字はは印刷ではなく、あとからプリンタで打った文字です。察するに最近の蔵出しだと思われます。最も、経路によっては怪しいワイン(偽ワイン)である可能性も、当然有るわけですが、まぁPTなら安心でしょう。
シャトーでワインを保管しておいて後で蔵出しする場合、普通ラベルを付けないで寝かされていて、出荷時にラベルとキャップシールを付けて出す様です。ですから、妙にラベルが新しい場合、最近の蔵出し、と推察することが可能です。
で、そのワインの中身が、ラベル通りのワインであるかどうかは、コルクの焼き印で確かめる事が出来ます。ラベルが黴などで読めなくなってしまったワインの場合、そのワインの名とヴィンテージを確かめる唯一の方法はコルクの焼き印です。(当然リコルクしてない場合です。リコルクについては色々有りますので、またどこかで書きませう)
ちょっと前の、水で簡単にラベルが剥がれていたワインなどで(80年代になってからお湯や水で剥がれないようなラベルが多くなった)、「ラベル張り替え」と言う誰にでも簡単に出来る不正が無いことを確認するのも、コルクなんですね。
レストランで、開けたコルクをわざわざコルク皿において見せてくれるのは、コルクの状態を提示する意味もあるますが、「確かに指定した通りのワインである」と言う事を、客に確認してもらっている訳です。(香りは、すぐ飛んでしまうので、開けてすぐで嗅ぐので無いと良く分かりません。)
余計なこと色々を書きましたが、開けてみましたそのクリネの70なんですが、とてもしっかりしたテイストで、うまく出来上がっていて美味しく有りましたが、先に飲んだ75の様には、ポムロル&メルロの特徴は少々希薄な感じがしました。
デカンタ後、30分後くらいの方が良かったです。ただ、性格が全く違いますが、一緒に開けたルロアのヴォルネイ・サントノ1969の方が、広がり、アフターとも優れていましたね。
Chambertin Cuvee Heritiers Latour 1988
Louis Latour
このワインについては、最初書くつもり無かったのですが、今年はルイ・ラトゥール200周年だそうですし、また結構美味しかったので、ちょっと書いておきますね。名前も良く似てるし、共に有名なネゴシアンなので、良くルイ・ラトゥールとルイ・ジャドは良く比較されることが有ります。
白のルイ・ラトゥール、赤のルイ・ジャドと言われる事も有りましたが、ある程度分かりますが、一概には言えませんね。しかし共に充分信頼に足るネゴシアンかつ作り手で有ることは確かです。
事実ルイ・ラトゥールの白は良いワインが沢山あります。それに比べて、赤はそれほどには見かけませんね。でも、このシャンベルタン・キュベ・エリティエ・ラトゥールはとても美味しかったです。(シャンベルタンなので、美味しくて当たり前なんですが、、)