1997年11月 今月の印象に残ったワイン


Clos Vougeot "Musigni" 1985 (Gros Frere et Soeur)


クロ・ヴジョ(畑は正式にはクロ・ド・ヴジョ[Clos de Vougeot]なんですが、ワインの銘柄はこちらが多いですね、実際のところはどちらでも良いみたい)は作り手が多いのですが、グロ・フレール・エ・セールは最上部のミュジニに隣接する畑を持っていまして、恐らくこの"Musigni"はその畑からのものでしょう。「クロ・ヴジョの一番良い部分」、と言って良いでしょう。

グロ・フレール・エ・セールのワインはこのクロ・ヴジョの83、85と、リッシュブール85を買っていまして、それらを今までに何度か飲んでいます(確か全部一人で飲んでいます)。

それらは、どれも極めて似通った印象があります。端的な表現をすると、何だかとても甘い、って所です。リッシュブールは変に甘くて、クロ・ヴジョはそれがエギゾチックなテイストさえします。

共にパーカーさんの評論がありますが、どれも比較的評点が高いですね(83のクロ・ヴジョが92点、85のクロ・ヴジョとリッシュブールが89点と90点)。彼の弁によれば、グロ・フレール・エ・セールのワインは、「通常大いに甘くて香り高く、殆ど行き過ぎなくらいにチェリーとカシスの香りがする。云々、、」との事です。

実はこれらのワインについての私の印象も、全くその通りです。先にも書いたけど、それが行きすぎて本当にエギゾチックといえるくらいです。そしてそのおかげで、いつも「一杯目は大変に美味しい」ワインです。パーカーさんの評点が良いのも当然と思われます。

ただ、2、3杯でいつも次第に飽きてしまいます。最初は「美味しい」と思っていた特徴的な香りやテイストが、だんだん単調に思えてきます。どうも複雑さに欠けているように思えて、あまり杯を重ねる気がしなくなります。

「不用意に甘い」のも気になります。パーカーさんのリッシュブール85の評論に、「かなり補糖してあると舌に感じる。極めて甘いが、含まれている果実のエキス分はかなりなもの、、」とあります。これを読んで、この甘さは補糖によるものかと納得しました。後半のエキス分についての意見も、全く同意見ですが、私の場合、かなり人工的な脚色が感じられ、一人で一本飲んで飽きないか、という点には疑問を感じます。

ただ、数人のワイン会などで出しますと、大好評の美味しいワインに違いありません。事実、当月後半に数人でレストランにて食事をした折、最後にこのグロ・フレール・エ・セールのリッシュブール85を出しましたが、なかなか好評でした。

ただ、その前に出した、モメサンのシャルム・シャンベルタン90が大変良かったので、人気はどちらかと言えばそちらでした。モメサンだからって甘く見てはいけませんね。このワインについてはまた書く機会も有ろうかと思います。


Brunello di Montalcino 1990 (Col d'Orcia)


最近人気のイタリアワインですが、珍しいのも色々輸入されるようになって面白いのですが、価格の方も本当に高くなってしまいましたね。昔からのイタリアワインファンは価格高騰に眉をひそめている事でしょう。

人気はいわゆる「スーパー・タスカン」と呼ばれる、トスカーナで作られるカベルネやメルロを主体としたワインなのですが、私は結構サンジョベーゼやブルネッロのワインが好きですね(この2つのブドウ品種は親戚同士、と言うか、ブルネッロはサンジョベーゼの一種と言って良い)。

トスカナの近年の当たり年は90年です。(その後は93がまぁまぁ良くて、95はなかなか良さそうです。ロッソ・ディ・モンタルチーノ95がもう出ていますね。)

その90も出たときは安かったのですが、ボルドー高騰に連動して、うかうかしている内に値が上がりはじめたので、モンタルチーノなんかを中心に幾らか買ってあります。(すでにもう90は見ないですね)

イタリアもやはり、ワインの質は「作り手次第」でありますが、この Col d'Orciaは昔からモンタルチーノの作り手としては有名らしいのですが、(実は買ってから知ったのですが)パーカーさんはあまり評価していません(知ってたら買わなかったかもしれない、結構高かったし)。

これは2本目です。先のボトルの時も思いましたが、豊かで滑らかで、美味しい良いワインでした。私の好みなのかもしれません(モンタルチーノ自体、私の好みですし)。

90もモンタルチーノは、あと2、3種類買ってありますが、来年ぐらいからぼつぼつ開けようかと思っています。それらの比較がまた楽しみですね。


Vina Magana Gran Reserva 1982


実は私はスペインワインは昔から結構好きです。正確に言うと、昔良く有った、(果実味が大して凝縮していないのに)アメリカンオークに入れすぎたオーバーライプなのは好みではないのですが、良く作られたテンプラニーリョはとても好みです。

スペインワインの作り手についてはあまり知識がなかったのですが、良いスペインワインが色々輸入されているみたいなので、出張したときワイン店に行って、「テンプラニーリョで作った美味しいワインで、どれが良いですか?」と聞いて買ったのがこのワインです。(最初はアリオンを勧められたけど、飲んだことがあるのでパスした)

で、楽しみにして開けてみて飲んでみて、「あれ、ちょっとテンプラニーリョと印象違う、いやぁ作り手が違うと、さすがに味も違うなぁ、」なんて変に納得していましたら、ラベルに"Cabernet Merlot"と書いて有るではないですか!、いやいや。

その後、飲みながらこのナヴァラのボデガ・ヴィーニャ・マガーニャについて、タンザーの雑誌なんか読んでみますと(最近そういうパターンが多いなぁ)、ここでは早くからヨーロッパの品種を入れていて、特にメルロについては良いようです。(最近ぱっとしないみたいですが)

と、言うわけで、最近メルロ・レセルバ(前も書きましたが、スペイン語では「レセルバ」です)の方を買ってみました。イタリアのオルネライア・マセート(メルロだけで作ったオルネライア)と飲み比べるのも、面白いかな?。


Brunello di Montalcino 1978 (Castelgiocondo)


先にも書いたとおり、モンタルチーノは私、好きです。90だって既に見かけないのに、78と言うヴィンテージを結構安く(8千円位)で売っていたので、1本だけついつい買ってしまっていました(最近は複数本買う元気があまりない)。

きれいなラベルで最近の蔵出しか、と思いつつ開栓しました。コルクを抜いてびっくり、「これは、ボジョレ・ヌーボーかよ」と言ってしまいました。色も真新しいコルクに、ワインと接する下だけちょっと赤くなっているのですから。明らかにごく最近コルクをしたボトルです。

「うーん、こいつは怪しい」と思いながら飲んでみましたが、テイストは綺麗に熟成したモンタルチーノのイメージそのままで、あまり違和感無い美味しいワインでした。

蔵出しの際、リコルクしたのでしょうか?、それともタンクか樽に入れてあったのを最近瓶づめして出荷したのでしょうか?。イタリアでの習慣については良く知らないので、私には良くわかりません。


Mazy Chambertin 1985 (Philippe Naddef)


ナデフのワインは初めて飲みます。もともとの生産量はそれほど多くないようで、全てのワインを合わせて千ケース少ししか作っていないようです。その中の最良の地所がマジ・シャンベルタンです。

ブルゴーニュにしては新樽比率が高いらしく、このマジ・シャンベルタンでは殆ど新樽とのことです。

色は明るく透っています。テイストもそれに準じてか、凝縮感はあまりなく、どちらかと言えば軽めなのですが、充分に熟成した質の良いブルゴーニュワインのストラクチャーは感じられます。


Grands Echezeaux 1984 (Mongeard Mugneret)


このワインもまた、先月のクロ・サン・ドニ83と同じく、私にとって「思い入れのあるワイン(ボトル)」です。

買ったのは本当にずいぶん昔、私がワインを買うようになった初期、赤坂のカーヴ・ド・ヴァンで買った物です。1万4千円と記録にあります。

その初めてカーヴ・ド・ヴァンに入った時の驚きは、今も良く覚えています。当時どこのデパートに行っても、ワインは大した種類は売っていませんでした。何かでその存在を知って、初めて赤坂見附の駅に向かったのでした。

「入っていいんですか?」と受付の女性に聞いて入った、セラーの大きさと、ワインの種類の豊富さに、それはそれはびっくりしたものでした。本でしか見たことが無いワインらを初めて見て、暫く出てこれなかったのを覚えています。

このワインを買った頃は、作り手の名前は勿論のこと、ブルゴーニュのヴィンテージについてさえもあまり知識が無い時でした。ただ以前から名前が格好いいので、エシェゾーにはあこがれていまして、たんにエシェゾーの割にはこのワインが特別安かったので(それでも1万4千円!)買った訳です。

そのときは、この余り品のないラベルをみて、「安いのは作り手が悪いからだろうか、、」と思いながら買ったのですが、やはり当時は無知でしたね。作り手は非常に良いのですが、ヴィンテージが悪かったので安かったのでしょう。

色はとても濃い色を呈しています。私は一般に評価の高い、同作り手の83年のグラン・エシェゾーやエシェゾーを飲んだことが有りますが、それらよりかえって色が濃いと思います。

テイストは最初、揮発的な酸が立っている感じでしたが、すぐ消えて果実実は衰えているものの、骨格のしっかりした、とて美味しいワインでした。「84でどうしてこんなに美味しいの」と思うくらいです、思い入れ故でしょうか。実のところ私は、一般的に評価の高い、83よりこちらを好みます。全く個人の好みだとは思いますが。