1998年1月 今月の印象に残ったワイン


冬はワインを飲むには良い季節です(春や秋は、初春や晩秋でないと結構暑いときもありますし)。この1月、私の部屋は(寒い時は軽く暖房を入れて)、足下で13度、机の上くらいで17、8度ですから、赤ワインには丁度いいですね。

セラーは10度少しになっていますので、「シャンブレして」と言うことになります(ロアルド・ダールの有名な短編を思い出しますね)。誰でもご存じかと思いますが、「赤ワインは室温で飲む」と言うお話は、室温がそれなりの温度であった場合のみ有効です。

とりあえず「怪しいワイン」は、また夏に飲む事として、この時期には自分でも楽しみにしているワインを中心に飲むことにしています。




Grands Echezeaux 1986
D.R.C.

ワイン雑記帳の「97年秋冬、ワイン特集雑誌&ムック本、総まくり」にもちょっと書きましたが、お正月に飲んだワインです。昔、今は無きミツミから12kで買ったワインです。

長らく我が家に在ったワインですが、そう痛んだふうでもなく、流石にDRCのとても素敵なワインでした。今まで86のブルゴーニュにはあまりいい思い出が無いのですが、間違いなくその中でのトップクラスです。

既に10年以上、果実味たっぷりと言うわけではありませんが、良く熟成していて、しっかりしたボディに、魅惑的なストラクチャーを見せていて、見事な物です。お正月から縁起がいいかな?、でもDRCですから当然とも言えますが、、




Clos Vougeot 1985
Robert Arnoux

だいぶん前に4本ロットのオークションにて落札した物です。液面が下がっている順に概ね2年で3本飲んで、最後の1本です。

同じ経路のワインの中で、割と素直にワインの状態を示すのがその液面の高さの様に、私は思います。逆は必ずしも真では無いでしょうが、同じ経路で着たワインの中では、液面が下がってない方が良いことが私の経験の中では殆どです。

このワイン最初の1本は、どうかな?、と思ったぐらいのワインでしたが、ボトルが進むごとに次第に良くなってきて、最後のこのボトルでは、先のDRCほどしっかりした構成力はありませんが、こちらの方はより豊かな感じで、共に甲乙つけがたい美味しさでした。

私はアルヌーのワインを日本では見たことがありませんので、インポートされた価格は分かりませんが、アメリカなどでは以前はそれほど高くなかったこのドメーヌも、最近はちゃんと評価されてきたらしく、結構高いですね。(もう、買えないなぁ)




Cerro Anon Reserva 1975
Bodegas Olarra

私のページに時々登場する「読んで下さる方も、まず今後見ることがないワイン」の系統のワインです(すいません)。(こう言うワインを買うようになったのも、大阪のI氏の影響です)このワインも、飲むまでは、私も全然しらないワインです。

調べたところ、リオハのワインですね。使用葡萄は、恐らくテンプラニーリョが主でしょうが、この様に20年以上熟成すると、ワイン自体からは明確には判別出来ないですね。

このボデガはパーカーさんのバイヤーズガイドには、"Average"の範疇に入っています。その下はほとんどないので、事実上「凡庸」もしくは「良いとは言えない」と訳すべき範疇です(最も20年前はどうだったか分かりませんが)。

そんな訳で余り期待しないで開けたのですが、テイストもしっかりしていまして、結構それなりに美味しかったです。私としては、そこらのカルフォルニアワインなどよりずっと楽しめました。

今見かけるスペインやイタリアの古めのワインは、蔵出しが多くて、うがった言い方をしますと、「本当に全部そのヴィンテージのワインなの?」と疑いたくなるワインも結構あるのですが、このワインはラベルやコルクからして、当時リリースされた物をずっとどっかで保管してあったものの様ですね。

多分リリース時の価格は非常に安かったでしょうし、普通の人はこれほど保管しておこうとは思わないでしょうね。「私の所に来る前は長らくどう言う所に居たのか、前の所有者はスペインワインフリークだったのかしら、、」などと、ボトルを眺めながらついつい考え込んでしまいました。(それもまた楽し)




Taurasi 1987
Mastroberardino

イタリアはカンパーニァ州の高名なワイン、タウラージです。今でこそ南イタリアの有名なワインも出ていますが、以前はこのタウラージ位しか知られてなかったと思います。

ただこのカンパーニャ州はDOCワインの比率が0.5%に満たず、イタリアでは最低の由で、このタウラージの他には、白ワインのフィアーノ・ディ・アヴェッリーノとグレーコ・ディ・トゥーフォが優秀と見なされているだけの様です。

ちなみに、最近「ソムリエ」と言う漫画に出てきた、ラクリマ・クリスティ(キリストの涙)と言うワインは、このカンパーニャのDOCヴェスヴィオの中に含まれていまして、ラクリマ・クリスティ・デル・ヴェスヴィオというDOC名も使えるようです。

ただ、タウラージの名声は、このマストロベラルディーノ醸造所に依るところが大きいと、言われています。事実我々のタウラージの選択は、そのマストロベラルディーノに限られることが多いですし、またそれは最良の選択でもある様です。

タウラージが際だっているのは、その使用葡萄です。ギリシャから移植されたと言われている、アリアーニコと言う葡萄を主に使用して居ます。多分この葡萄はここだけで使われているかと思います(確認はしていませんが)。

1987と言うヴィンテージは、北イタリアでは大したことがないヴィンテージの様ですが、タウラージにはとても良いヴィンテージだったらしいですね。

その飲んだ印象ですが、確かにとてもプロポーションの良い、造形のしっかりした高品質の美味しいワインでした。10年を越える熟成に耐えられると言われているのは、正しい見解であると言えます。しかし少し、真の深み複雑さと言う物にやはり不足している気もしました。もっとも南イタリアのこのワインにそれは望むべきで無いでしょう。





Ch. Leoville Barton 1976

雑言無用、ボルドー優秀シャトーの見事に熟成した美味しいワインです。偉大と言うほどではありませんが、"Full Mature"の魅力に溢れています。

最近では新世界のワインを中心に、早く飲んで美味しいワインが多いですが(確かに美味しいです)、時を経て花開いたワインの素晴らしさもやはり捨てがたい物があります。(ただ個人的な好みも大きいとは思いますが、、)

76は傑出したヴィンテージではありませんが、優秀なシャトーに於いてはなかなか素敵なヴィンテージです。私は現在ボルドー優秀シャトーの飲み頃ヴィンテージと言いますと、76、78、79、81をあげます。

このレオヴィル・バルトンは、有名なレオヴィル3兄弟(ラス・カーズ、バルトン、ポワファレ)の一員です。推察の通り元々は1つの畑で、ラツゥールのすぐ隣になります。テロワールとしてはとても良いところですね。

この3兄弟の詳細な畑の配置図が手元にあります。見てると結構面白いので、いつか書き直してホームページにUPしようと思っていますが、未だにやっていません。そのうちやりますので、お待ち下さい。




Morey St Denis 1 er Cru
Hubert Lignier

モレ・サン・ドニの高名な作り手、ユベール・リニエのワインです。リニエと言えば特級クロ・ド・ラ・ロッシュが大層有名ですが、ただ、0.8haしかないので、あまり見かけることはありません(リストで見つけても、注文したときにはたいてい売り切れている)。

このモレ・サン・ドニ1erはパーカーさんの本に依ると 3ha、リニエとしては一番出荷量の多いワインですね。しかしそれは、90と言うヴィンテージの良さもありますが、優秀な作り手の特級ワインとまごうぐらい、村名1級ワインとしては破格に見事なブルゴーニュでした。

私はこのワインを94年に3千9百円で買っていますが、これは本当にお得でした。残念ながら、今では最近のヴィンテージでもこんな価格では買えないと思いますが、、。今月はブルゴーニュの当たり月と言えます。