1998年4月 今月の印象に残ったワイン


4月の5日に明石大橋が開通しました。全線開通は、我々徳島の人間としては長い間の夢でも有りました。これで神戸や大阪に本当に出やすくなります。

神戸には昔から良いワインバーが有って、昨今のワインブームでその数がまたかなり増えています。私が良く知っている所にだけでも、既に6件を数えますが、皆とても良いワインバーです(と言うより、良い方々です)。

何より、それぞれの店主がとてもワイン好きです。で、皆さん当然個性は違うのですが、不思議なくらい良い奴(良い方)が揃っています。正直な所、私の場合、ワインを飲みに行くと言うよりは、彼らに会いに行く、と言った方が正確かも知れません。

もちろんワインは飲みます。当然何軒か梯子です。で、たまたた店に来ていた方とも知り合いになったりして、ふらふらになりがらも、ご機嫌のていでホテルに帰り着くのです。




Montrachet 1986
Marquis de Laguiche

やっぱりモンラッシェは良いですね、あんまり飲めないけど、、。

このマルキ・ド・ラギッシュは市場ではいつも高く評価され、価格も他の物に比べ高いのが常で、私も飲むのは初めてです。(これは友人の提供です)

1986年はブルゴーニュの白にとって、前年の85と共に80年代のとても良いヴィンテージで、きっと今が飲み頃で有りましょう。

ラベル上にドルーアンの名が見えますが、ドルーアンはラギッシュのモンラッシェの独占販売権を持っているとの事です。それは私も知りませんでした。

色は綺麗な金色で、とても芳醇で有りながら、大変優雅な味わいでフィネスがあります。とても品位があるワインでした。後で飲んだ、ルイ・ラトゥールのシュバリエ・モンラッシェとの比較はなかなか面白かったです。




Chevalier Montrachet "Les Demoiselles" 1985
Louis Latour

このワインはケースで買って、もう何度も飲んだワインです。

ルイ・ラトゥールは良いワインの作り手として有名ですが、特に白ワインが評判が良いようです。
この「シュバリエ・モンラッシェ・ドモワゼル」は同社の看板白ワインと言って良いでしょう。実はここはモンラッシェも作っていますが(評価は常にモンラッシェがほんの少しだけ上)、自社畑でなく葡萄を買って作っています。(もちろんコルトン・シャルルマーニュも大変素晴らしいです。)

この「ドモワゼル」と言う畑は、ちょっと面白い畑で、過去に本や雑誌で読んだ話では、場所的にはシュバリエ・モンラッシェの隣のカイユレと言う畑の一部と言って良いのだそうです。

それを、このドモワゼルの畑を持っていた、ルイ・ラトゥールとルイ・ジャドが「過去にシュバリエ・モンラッシェとして売買された事がある」と異議申し立てをして、シュバリエ・モンラッシェとなったと言うことです。

現在、あとドモワゼルの畑は、アミオ・ボンフィスとコラン・ドレジェからピュリニィ・モンラッシェ・ドモワゼルとして出ていますが、多分昔のドモワゼルの畑のシュバリエ・モンラッシェになれなかった片割れだと思います。

畑の詳細な場所とかは、色々本で見てみたのですが良く分かりません(多分これだろう、とは予想はつくのですが)。詳しい事をご存じの方は教えて頂ければ幸いです。

そんな訳もあって、ルイ・ラトゥールとルイ・ジャドは面目にかけても良いワインを作ろうとしているのか(元々優秀な作り手ですし)、双方とも他の作り手のシュバリエ・モンラッシェに劣らない素晴らしいワインです。

先に書いたとおり、このワインは機会ごとにもう6、7本は飲んでいますが、経路が余り良くなかったせいかボトル差がかなりありまして、中には痛みかかっている風のもありましたが、このボトルは良い状態で、素晴らしかったです。

ヴィンテージの特徴なのかも知れませんが、上記のラギッシュの86に比べて、繊細さは足りませんが、ボールドでよりドラマティックです。




Ch. Prieure Lichine 1953

知り合いの方が来られたので開けた1953のワインです。(何と凡そ45年前のワイン。ラベルは「55」みたいに見えますが、よく見ると「53」なんです。)

自分が59の生まれなもので、古いワインとなりますとそれ以外は奥さんのヴィンテージ位で、55や61とか他のヴィンテージは殆ど買っていませんが、53ではこれだけが手元にありました。

買ったのはずいぶん前なのですが、その買った理由は単に「すごく安かったから」なんです。アメリカのオークションで買った物ですが、当時、諸経費を入れても1本1万円していません。

今だと信じられないかも知れませんが、当時はそんな感じだったんですね。でも、もっと信じられないのが、そのテイストでした。
ワインの性格を考えて、飲む直前に開栓、デカンタせずにパニエに寝かせてサーヴィスすることにしましたが、まずホストテイスティングで、「こ、これは美味しい」と声に出して宣言してしまいました。

優雅で深いテイストと長い余韻。力強さはすでに無いのだけど、素晴らしい広がりと深みが有ります。大満足でした。

3人で飲みましたが、開栓後30分少し位でしょうか、丁度このボトルを空になった頃位から、明らかにテイストから生気が失せ始めました。このワインに関しては、デカンタしない方が正解手順でした。




Mission Jewelstone Chardonnay 1995
Hawke's Bay, New Zealand

飲んだ瓶を店に置いてきてしまって、ワインのラベルが無いので、左は本から取ったピクチャーですが、ラベルの感じは判るでしょうか、、

昨年(97年)行って結構ファンになっていますが、それを抜きにしてもニュージーランド(以下NZ)の白ワインは、価格の割には良いワインがとても多いです。

以前に飲んだコラードのローセイ・シャルドネなんかでとても気を良くしたので、ミッション社のジェウェルストーン・シャルドネを見かけて買って有ったのを、飲んでみました。

ミッション社は、1851年、NZで一番古いワインメーカーの様です。高品質ワインのシリーズとしてこのジェウェルストーンがあり、このシャルドネの他にゲヴゥルツトラミナーやカベルネ・ソーヴィニョン、貴腐のリースリングがあります。

開けてすぐのテイスティングで、「美味しい」と思いました。NZのシャルドネの常で、オーストラリアに良くあるようなオークの樽香がすごい、と言うことは有りませんが、割と生の葡萄果実の凝縮感が全面にでたワインです。

確かにとても美味しいのですが、杯を重ねるに従ってそう言うところが逆に気になってきました。私としては、コラードのローセイ・シャルドネの方が好みです。

有名なクラウディ・ベイのシャルドネは、単純な一次元的比較で的を得ていないかも知れませんが、その2つの中間みたいな感じです。




Garrafeira 1990
Carvalho, Ribeiro & Ferreira

このワインは、講談社の「世界の名酒事典」を見て、地元の酒屋さんに頼んで取り寄せてもらったポルトガルのワインです。定価は3890円です。(ちょっと高いですね)

なんでこのワインを取り寄せたかと言いますと、同じカルヴァーリョ・リベイロ・フェレイラ社のガッラフェイラで、1949年産で1966にリボトルと明記されたワインを(たまたまですが)持って居るからです。私の所有ワインの中でも、かなり珍しいワインで、ラベルの感じも良く似ています。

ちなみにこのインポーターから酒屋さんが商品を引く場合、6本入り段ボール2ケース(つまり12本)以上でないと駄目なようです。私はそんな沢山は必要ないので(単に飲んでみたかっただけですし)、買ったのは3本だけです。残りはお店で売ってくれたみたいです。ワインブームもあってすぐ売れちゃったみたいで、注文した私も一応一安心です。

ところでこのワインの素性なんですが、「カルヴァーリョ・リベイロ・フェレイラ(Carvalho, Ribeiro & Ferreira)」と言うのが作り手になります。ヒュー・ジョンソンのポケット・ワイン・ブッックによりますと、「リスボン北の大手の酒商で優秀なガッラフェイラを扱う、、云々」とあります。でも、今はもう営業していないみたいですね。

次は「ガッラフェイラ(Garrafeira)」ですが、同ブックに依りますと、「各酒商が『私的にリザーヴしている』年代物ワイン」の由です。「通常各会社の最良の物だが、出所が確定できない物が多かった。現在はラベルにそれを示さなければいけない。」と続いています。まぁ「スペシャル・リザーブ」って感じですね。このワインのラベルにも、生産地は明記されていません。

蝋封されていまして、なおかつその蝋が結構柔らかくて、開けようとすると手にひっついて困ります。普通は蝋封するときは蝋封だけなんですが、これは薄いキャップシールの上から更に蝋封して有るんですね。結構珍しいかと思います。ちなみに49のも見たところ同じやり方です。

で、開けたすぐから結構柔らかくて、これと言った際だった特徴などは余り見あたらないのですが、まぁなかなか美味しかったです。決して平板というのでは無いのですね、逆にむしろとても良いワインです。

タンニンは殆ど感じられず特別濃いわけでも無いので、これ以上熟成させるべきワインでは無いかと思いますが、今飲んで、素性のとても良い嫌みのないワインでした。他にエシャゾー1983(モンジャール・ムニュレ)と1985のカルフォルニアワイン(カベルネ)の2本と一緒に開けて飲み始めましたが、「(開けてすぐ)今はこのワインが一番美味しいね。」との評もありました。

あと残っているボトルは、その49年のを飲むときに一緒に開けようと思います。さて、49のガッラフェイラはどうなっていますか、、、


さて、フランスのボルドーに代表される名醸ワインの世界的価格高騰も手伝って、それ以外の産地でのワインの発掘がとても盛んです。イタリアワインがこんなにメジャーになったのはそう昔の事ではありませんし、それから最近はスペインのワインもずいぶん紹介され、入手出来るようになりました。

ある所で、「次はポルトガルかな、ハンガリーも良さそうだし」と言いますと、そのイタリアなりスペインは、暫く前から単なる地酒の醸造と言う範疇から離れ、世界的に通用するような高品質なワイン作りを目指した作り手が増えていたから、これはその結果に過ぎないと、いう話でした。そうかも知れません。

でも、ポルトガルでもマテウスだけじゃなく(マテウスも良いワインですが)、素晴らしいワインが有る由ですし、そのうち、いきなり沢山のワインが紹介されるかも知れませんね。

余談ですが、ポルトガルと言えばポルトですが、ポルトは今後、もう少し日本でも飲まれる機会がきっと増える事と思います。ただ価格が、何故か世界的にみて日本はちょっと高いですね。現在ワインはあまり変わらないのに、どうしてでしょうか?。先の事は、価格がもう少し下がったら、の話となります。