1998年6月 今月の印象に残ったワイン


健康に良いからと、赤ワインなんだそうですね、昨今は。「何々が健康によい」とか言う話は、(お昼の番組じゃないですが)世の中に溢れています。そのお題目が無いと売れないのでしょうか、事実、ついに「白ワインは健康に良い」と言う話さえ出始めました。

「何々が健康によい」と言う説を、試しに全部網羅してみたら、恐らく身の回りにある物は何を食べても「健康によい」って事になるんじゃないかと思う位です。何か変な話です。

私の所の在庫は、実は殆ど赤ワインなのですが、何故か今月取り上げるワインは(別に世の中に反発している訳ではないのですが)、半分以上が白ワインになってしまいました。




Puligny Montrachet Ez Folatieres 1989
Domaine Leflaive

ルフレーヴのフォラティエールです。綴りが何故か"EZ FOLATIERES"となっています。普通は"LES FOLATIERES"なんですが、冠詞にあたるところがEZになっています。

フランス語の辞書を調べたのですがどうしてだか、ちょっと判りません。ルフレーヴのフォラティエールはいつもこういう綴りになっているのでしょうか?、これも良く分かりません。

暫くぶりの美味しい白ワインです、ルフレーヴはやはり私の好みだと言えると思います。「ああ、美味しいな」としか思わなかったです。




Ch. Haut Brion 1989

有名なオーブリオンの89です。このワインは、いわゆるパーカーのパーフェクトワイン(100点満点って事)ですが、別にパーカーさんじゃなくても、皆に非常に評価の高いワインです。

パーカー100点と言ったって結構半信半疑だったのですが、複数の知り合いから「オーブリオンの89は素晴らしい」と聞くに及んで、それじゃ少し買っておこうかと、機会があるごとに幾らか買ったワインでもあります。

よく見てみると、ヴィンテージ、小田急ハルク、東急本店なんかから買っていますね。以前のワインが安い時期だったのですが、1万3千5百円から1万5千円位しています。(高いのでいっぺんに沢山買えないから、数回に分けて少しずつ買った訳です)でも、今このワイン10万円位するみたいですね、信じられない!。

私としても初めてのむオーブリオンの89ですが、いやこれは全く素晴らしい。まず香りが典型的なグラーヴの、あの深く複雑なアーシィな香りで、それだけでいっぺんに参ってしまいました。(私のもろ好みなんです)

最初の一夏は蔵の中で過ごしたのですが、痛んだ風は全くなし、まだ少し若いかも知れないけど、とても濃厚で複雑で、恐ろしく魅力的。

カルフォルニアもオーストラリアも、いやグラーヴ以外の何処も、この特徴的な香りとテイストは決して持ち合わせることが出来ないでしょうね。

でも、あまり美味しすぎて、今のところ、かえって料理とは合わないかも知れません。




Querciolino 1993 (VdT)
Castello di Verrazzano

先のオーブリオン89も、楽しみだったけれど、本当はこのワインが一番の楽しみだったのです。恐らく私が持っているワインの中で、一番珍しいワインでしょう。

作り手の、ヴェラッツァーノはトスカナはキャンティに有る、歴史有る有名なワインの作り手です。高台の、大変風光明媚な所に有るらしいです。

昨年(97年)2月に、私はイタリアはコルチナ・ダンペッゾにスキーに行ったのですが、そこのホテルで最後の夜、サッセーロと言うVdTのワインを飲んでいたら、向こうのテーブルの奴がやって来て、そして、「家で作っているワインを飲んでいるので、、」と言うではありませんか!。

で、少し話をしたのですが、その中で、「うちはエノテカ・ピンキオーリ向けに特別なワインを作って居るが、そのクェルチォリーノと言うワインの88がスッゴク美味しいから、エノテカ・ピンキオーリに行ったら是非飲むべし」、と言う話をお聞きしました。

かと言っても、そうそうフィレンツェに行く機会もなく、まぁ知り合えたのをこれ幸いと、徳島に帰ってからワインを分けてもらえるように交渉したのでした。

普通では分けてくれない筈ですし、また量も少ないでしょうから、サッセーロを幾らか買って(これだって、今の所日本では入手不可能)、ついでにそのクェルチォリーノを少しでも分けてくれないかと、控えめにお願いしました。

恐らくいきなり「送ってくれ」と言っても、多分「送れない」と言われるでしょうから、全てはこちらから手配をしました。つまり、フィレンツェに居る知り合いに頼んで(仕事として、当然有償です)、細かい交渉、ワイン代の支払い、そして梱包と配送をして貰いました。

ワイン代はそれほど高価でないのですが、各種手数料、梱包料や配送費などがかなりかさみ、1本当たりのコストは、結構なお値段になってしまいました。(元々覚悟の上でした)

そんな訳で、結構想い入れもあるし、入手に相当手間がかかったワインですので、ちょっとやそっとでは開けるつもりは無かったのですが、大阪からイタリアワインのエキスパートの方がいらっしゃるとの事で、是非飲んで意見を伺いたく持参しました。

ワイン自体は、サンジョベーゼ100%のVdTです。開けて注ぐと、濃いけど透明感のありとても綺麗な赤色に魅了されます。

開けてすぐだったせいか、香りは余りたたず平板でした。テイストはサンジョベーゼ特有の酸が、大変特徴的でかつ顕著でした。今でも美味しいですが、飲むのがやはり少し早かったかも知れません。

力強さと言う物は見えませんが、全体的に大変綺麗なワインと言う印象強く残って、個人的には大変気に入りました。次に開けるのが楽しみです。




Condrieu, Les Eguets Vendange Tardive 1996
Cuilleron

これもまた珍しい、コンドリューの甘口ワインです。瓶は甘口ワインでは最近多くなった、500mlのボトルです。

コンドリューですから、葡萄はヴィオニエですね。つまりヴィオニエの遅摘みの甘口ワインです。

96とまだとても若いのですが、酸とのバランスも大変良く、とても美味しかったです。これも大変気に入りました。




Ch. La Croix de Gay 1988

「やっぱし、ボルドーのそこそこのワインはちゃんと熟成させてから飲みましょう。」と言う至極当たり前のことが、やはり良く分かるワインでした。

このワインをエノテカから買ったのは93年5月です。ポムロルでメルロ主体ですし、特別評価の高いシャトーでもないので、数本買って試しに1本すぐ飲んでみたのですが、やはり果実味が結構あり、「飲めないことは無い」と言う感じでした。

最初の1本を開けて、数年の間に飲むポムロルとして、すぐ追加の注文をしたのですが、既に全部売り切れとの返事で、ちょっと残念な思いをしました。

確かに結構美味しかったのですが、ただ、やはりまだ色々なテイストがバラバラな様なきがしまして、残りも少なかったので、それ以来ずっと飲まないで置いてあったワインです。

今開けて、やはり、まる5年間、熟成を待った甲斐のあるワインと思います。まだ充分な果実味を持っていて深いのですが、しなやかでバランスがとても良く、美味しいポムロルの見本の様なワインでした。

こう言うのを知ると、「飲めるから」と言って、あまり早く飲んでしまうのは、やはり凄くもったい気がしますね。

所で、元々あったこのクロア・ド・ゲイの畑の中で、場所が良く(ペトリュスとヴィユー・シャトー・セルタンの間と言う)、樹齢の高い葡萄の植わっている畑を、そのスペシャル・キュベとして82年よりラ・フルール・ド・ゲイと言う別のワインにして売っています。

これは素晴らしいワインで、このレポートには書きませんでしたが、82、86と89を飲んだことが有ります。(82は素晴らしいヴィンテージですが、ファーストリリースのせいか、これだけは際だった特徴の無いワインでした。)

良い畑を別にしたから、その分クロア・ド・ゲイが落ちたか、と言うとそう言うわけでは無い様です。むしろ良くなったそうですね。




Chassagne Montrachet "La Romanee" 1992
Verget

最近和食が多いため、白ワインを飲む事が多くなりました。以前は一人家で飲んでいたので、殆ど赤ワインだったのですが、、

そうして見てみると、在庫の殆どは赤ワインです。最近の価格高騰と、95、96とブルゴーニュ白の大変良いヴィンテージが続いたので幾らか買いましたが、その飲み頃は7、8年先でしょうか。

少しだけ買ってあった、92のワインを初めて開けてみました。作り手は、最近大変評判の良いヴェルジェです。

85あたりじゃないのかなぁ、と思うほどの、金色をした照りのある色をしていまして、びっくりしました。味もそれに準じたテイストで、結構大柄で押しのあるものです。

ピュリニーかシャシャーニュがと言われれば、全くシャシャーニュの白ワインと言う感じですが、これはヴェルジェの特徴かも知れませんね。

普段余りワインを飲まれない方と、和食を食しながら飲みましたが、大変好評でした。




Pouilly Fuisse, Clos de la Roche 1996
Domaine Saumaize-Michelin

PT(ピーター・ツーストラップ)セレクションとして、PTが選んだお勧めワインの中の1本です。

これは、美味しいワインですね。張りがあって、きらきらしています。若いからかも知れませんが、飲み続けると、深みとかバランスの点で若干不満も出てきますが、押しが強くこの価格(3千5百円位)では良い方です。

一緒に飲んだ方からはかなり好評でした。この後に、ルロアのピュリニー・モンラッシェ92を飲みましたが、私は村名ながらさすがにルロアととても感心したのですが、先のフュイッセの方が美味しかった、との評する方もありました。




Puligny Montrachet Les Folatieres 1989
Louis Latour

今月は白が比較的多くて、うち3本は良く似たクラスなんで、その対比が面白いです。

先のルフレーヴと同じ畑フォラティエールなんですが、全然やっぱり違います(ルフレーヴは思いっきり私の好み)。ですがこのワインは、これでとても気に入りました。

舌には全く重く無いのですが、とても繊細で美しいワインでした。酸のタイプが違うのでしょうか、極めて魅力的です。一口一口は強いインパクトは無いのですが、常に次のグラスに興味をも持ってしまいます。

こういうワインは一人でゆっくり飲んでみたいですね。




Ch. Branaire-Ducru 1982

先日、R.パーカーJr来日の折のイヴェント「パーフェクトワイン・テイスティング」に参加した時、シュバルブラン82を飲んで、既に飲み頃なのを理解しまして、やっと82も開けてみる気になりました。(82の在庫は少ないのですが)

このシャトーはラベルは"Chatesu Branaire (DULUC-DUCRU)"となっていますが、通常ブラネール・デュクリュと言われています。このラベルの名前の詳しい由来については、山本博さん著の「ワインの女王」に記載があったと思います。英語が読める方はC.コーツさんの"Grands Vin"に詳しく書いてある筈です(私も読んでいないので)。

因みに、このブラネール・デュクリュのラベルも80年代後半からちょっと変わりました。88年から所有者が変わった様ですので、それからかも知れません。それから、このワインはアメリカから買った物で、アメリカ向けラベルになっています。

このブラネール・デュクリュの82は4、5年前飲んで、多変美味しかったのを記憶していますが、今回も期待を裏切らない美味しさです。より開いていて、完全に熟成しています。

デカンタしましたが、開けてすぐはフレッシュな果実味がまだ綺麗に香りに残っていて、大変魅力的でした。それでいて、テイストは大変複雑で、ミネラルの成分を感じました。アフターもとても長く、良いワインでした。

ただデカンタ後、2時間ぐらいで香りも広がりも少なくなった感じでして、その位までで飲んだ方が良いみたいですね。