1998年12月 今月の印象に残ったワイン


昨年(98年)秋に、イタリアのトスカナ地方に行った事は前にも書きましたが、どこかでワインを買いたいと言ったら、友人は私をシエナのワイン屋さんに連れていってくれました。

イタリアワインは、ことトスカナに限るとしても、まぁ本当に沢山あります。DOCの数くらいで済めばよいのですが、注目は各生産者が個々に作るVdTだったりしますから、これまた生産者の数だけ(いやそれ以上)有りまして、はっきり言って知らないのばかりです。

それでも、イタリアに行く前にガンベロ・ロッソの英語版を仕入れて、飛行機の中なんかで読んで行ったのです。そのおかげで、ショップで渡されたリストを見ても(トスカナの項に限ってですが)有る程度知った名前が並んでいまして(当然頭に入っていないワインも結構有ったけど)、店頭にはルーチェなんかも飾って有りましたがそれには見向きもせず、「日本で絶対手に入りそうに無い良いワイン」と言う選択基準で、幾らか買いました。

当初、本人は結構良い選択だと思っていたのですが、帰国後数ヶ月の内に、それは単なる思いこみに過ぎないことが判りました。つまり、「日本じゃ買ってない!」と思って買って帰った殆どのワインが、実際に売っていたのです。「これ売ってる、え、これも?、ええ、あれまでぇ?、前は売ってなかったのにぃ」って感じです。(「世界の名酒事典」には載って無いけど)

私は地方在住で、都会のワインショップはそう頻繁に見に行けないのですが、実際に売っているのを見なくても、東京のデパートのリストだったり、また誰かの試飲レポートに登場していたりします。(その人は多分どこか日本で手に入れたでしょうから、どっかで売っていた、と言うことですね)

ショックなのは、その価格がイタリアでの価格に比べて大きく違わないのです。私は半分ハンドキャリー、半分は後日配送にしたのですが、配送の場合、送料を入れると絶対日本で買った方が安い、って事になります。

ただ、救いなのは、実際に売っているのを見たワイン以外は、「日本で売っていた事がある」と言うだけで、今私が入手する事が出来ると言う訳では無いことですね。事実、ワインフェアのリストで見つけて、安い(現地とほぼ同じ)ので、もう少し買い足そうとしたのですが、限定で既に売りきれていたりしました。

良く知っている方々に聞いてみましたが、「(イタリアは本当に多くのワインが有りますが)良いと言われているワインで、日本に入っていないのは、まず無い。」らしいです。ただ問題はその数で、誰でもが手にはいるわけでは無いみたいですね。しかし日本のワインのインポーターって凄いですね。(下記レポートに有るように、カルフォルニアだけど、スタッグリンまで入って居るとは思わなかった)

今思えば、ルーチェとか、ラパリータとかを買って帰った方が、その値打ちがあったでしょう(両方とも売っていました)。敢えて無視して価格さえ聞かなかったのですが、いま日本で売っているような、超おバカな価格では絶対ないはずですから。




Cote Rotie 1986
Jamet

冬はワインを飲むには良い時期なので、昔買った結構想い出のあるワインを開けていますが、このジャメのコート・ロティもそう言う1本です。

このワインを買った頃は、ジャメと言う作り手も知らず(大変評判の良い作り手です)、86と言うヴィンテージがどういう年なのかも、全く知識無く、ただまだ買ったことが無いコート・ロティのワインと言うことだけで購入したのでした。

86はコート・ロティなどの北ローヌでは、それほど良いヴィンテージでは無いようですね。そのせいか、色は綺麗なルビー色でクリアーでありましたが、少々軽めで、どこか一本調子なところがありました。




Staglin Family Vineyard Cabernet Sauvignon 1994

カリフォルニアワインに興味が出てきた頃、インターネットでカルフォルニアのワイナリー紹介のホームページを沢山見てみましたが、そこで、メーリングリストの申し込みを受け付けているところが幾つかあって、インターネットで申し込みをしてワイナリーから直接買ったワインです(当然送料は結構かかります)。

それまでは全然知らないワイナリーでしたが、まず生産量が大変少ないこと(数百ケースだったと思う)、有る程度評価されていること、などから決めました。生産量が多い所だと、(もし売っていれば)日本の酒屋で買った方が安い事が多いですから。

ほぼ2年前に買ったワインで、暫く寝かせてあったのですが、若いとは思いつつも我慢できずレストランに持ち込んで1本開けてみました。

先にデカンタしましたが、デカンタ直後の試飲では、本当に大変濃いワインで、タンニンもかなり舌にあたる感じでした。最近の多くのカルフォルニアワインは早くからでも楽しめるように、柔らかく熟したタンニンを持つ様に仕立てたのが多いのですが、そのイメージは有りませんでした。

1時間ほどして飲み始めましたが、その頃にはタンニンはかなりまろくなっていましたが、かなり濃いことには変わりなく、その持つパワーは大した物です。最初はそのパワーに感心していたのですが、ただちょっと私には重すぎる感じで、(二人で飲んだのですが)最後には少々飽きてきた感もありましたが、1杯2杯飲む分には、大層美味しいワインです。


このページをUPする直前、神戸のワインショップに行きましたら、何とこのスタッグリン94が売っているでは有りませんか!!、これには正直驚きました(結構良いお値段ではありましたが)。日本ではまず売られないワインとして、選んだつもりなのになぁ。まぁ最近ワインスペクテイターでも大々的に取り上げられていましたから、仕方ないでしょうか。それにしても日本って凄いなぁ、、




Brunello di Montalcino 1988
Poggio Antico

今年の10月に実際に訪問したファットリアが、このポッジョ・アンティコです。詳細は「トスカナ旅行記」をご覧下さい。その、想い出を含めて開栓しました。

トスカナの88は本当に良い出来ですね。これはとても美味しいブルネッロ・ディ・モンタルチーノでした。




Nero del Tondo 1988
Ruffino

このワインは、何年か前、イタリアはコルチナ・ダンペッゾへスキーに行った時に買って帰ったワインです。コルチナのスーパーで高い方から1、2番目のワインでした。(と言っても大した価格ではないけど)

このネロ・デル・トンドはトスカナの有名な作り手ルフィーノがピノ・ノワールで作りますVdTです。やはり早飲み傾向のあるイタリアにあって、88が有ったので買って帰りまして、開けるのを楽しみにしていたのですが、このたび開栓してみました。

他のに比べて高かったし、ちょっとは期待して開けたのですが、結構軽いワインでした。ピノらしい美味しさは確かに有りますが、価格を考えると、香りにもテイストにも深みと複雑さ、つまり造形の深さに欠けていまして、ピノ・ノワールのテイストを持ったヌーボーみたいでした。(もうちょい安いワインなら、「なかなか美味しいじゃん」とそれなりに納得できるのですが、、)




Diamond Creek Red Rock Terrace 1989

このワインは95年に何本か買っての最後の1本です。1、2年ごとに飲みました。

最初に開けて飲んだときは、ただ果実実の厚いだけのワインと思っていました。でもこれは過小評価だったみたいです。数年保管しておくごとに複雑さを増し、最後の2本は全く見事なワインになってきています。(これが最後だというのは、とても残念)

前にも書きましたが、89と言う年はカルフォルニアではあまり良い年ではないのですが、この様な見事に熟成したワインになることは、(何本か飲んでわかってはいましたが)印象的ですらあります。(当然作り手も超一流なのですが)

それに比べると、個々の好みも当然有るでしょうが、今日のカルフォルニアワインは一般的に明らかに早くに飲まれ過ぎるような気がします。(そのどれもが、この様になるとは限りませんが)




Rosso di Montalcino 1996
Tenuta Friggiali

フリジアーリ(正確な読みは?、でもフリージアじゃないよ!)と言う作り手の、ロッソ・ディ・モンタルチーノです。

ご存じの方も多いでしょうが、高名なブルネッロ・ディ・モンタルチーノは収穫の翌年の1月1日より4年間の熟成を法律によって義務づけられています(内3年は樽の中)。つまり、この(1999年の)1月1日になってやっと1994のモンタルチーノが出荷出来るわけです。

長熟で名高いボルドーでさえ、昨年春には95が出てましたよね(出荷時が飲み頃かどうかは大いに疑問ですが)。それを考えると、モンタルチーノの生産者は、出荷までの期間がちょっと長すぎて大変ですね。(まぁ、シャトー・ディケムと言う例外もありますが)

それで、そう言う出荷時期の規制のないモンタルチーノで作られた(葡萄は同じブルネッロ種)DOCワインがロッソ・ディ・モンタルチーノです。地域も葡萄も同じなので、良い作り手の安いロッソ・ディ・モンタルチーノは、若くして飲むにはとてもお買い得となるみたいですね(と、ちょっと歯切れが悪いのは、ロッソ・ディ・モンタルチーノを自分で買って飲むのはまだ3本目だからです)。

さて、このワインは仕事の帰りにふと立ち寄った、地元ディスカウント酒屋で買った物です。近頃のワインブームで、こう言う所の酒屋にもワインが何十種類も並ぶようになりました。ラインナップは概ね2千円未満で、たまに3千円台のワインが有る程度ですが、よく見ると結構興味深いワインが有るんです。ワインブームのおかげで、ボルドー他、有名所は高くて買えなくなりましたが、こういう良いところもありますね。

この作り手は、全く知らないところでしたが、価格も安かったので(千円ちょい)買って帰ってその夜、すぐ飲んでみましたが、これがなかなか美味しかったです。ガンベロ・ロッソで調べたところ、評価は芳しくなかった(と言うか悪かった)のですが、モンタルチーノっぽい特徴もちゃんと感じられて、開栓後しばらくして余韻も長くなり、これはなかなか美味しかったです。価格を考えるとスッゴクお得です。

過去に飲んだロッソ・ディ・モンタルチーノは、一般的にはより評判の良い作り手の物でしたが、(一本づつしか飲んでいませんが)私はこちらが気に入りました。イタリアワインって面白いですね。