1999年3月 今月の印象に残ったワイン


例年の事ですが、3月にスキーに行って来ました。今年は昨年10月にイタリアに行った事もあって、海外スキーは自主規制で、北海道に数日行っていました。

スキーツアー自体は一人での参加なのですが、スキー場で友人と一緒する事になりました。そう言うこともあって、今回は自宅のセラーからワインを何本かもって行く事にしました。白は何でも良いのですが、赤はどうしても澱が少ないのを選ばなければいけませんね。持っていったのは次の3本です。

以前は、スキーって言うと、もう滑るばかりでその他のことは結構どうでも良かったのですが、さすがに40の声を聞く頃になりますと、昼間も以前みたいに休みなく滑ってばっかり居るわけにはいかないし(第一、既に身体がもたない)、夜とて美味しい物でも食べて楽しく在りたいわけです。

今年はトマムのアルファ・ホテルに滞在しました。昔、そう高級でないスキーホテルでの夕食には、内緒でワインを持ち込みして飲んでいたりしてましたが、さすがにこういうホテルでは「内緒で」って言うのは無理です。許可を求めても普通断られるケースが多いのでしょうが、駄目モトでチェックインの折聞いてみましたら、フロントの人が担当者に電話を繋いでくれて、こちらも「数年ぶりに友人と会うので、家のセラーから持参した」と説明すると、レストランの方にきちんと手配してくれました。最近は、ワイン持ち込みに理解を示してくれるところが多くなったみたいですね。

夜だけではなく、スキー場にもワインを持って楽しみましょう。大体のスキー場の施設にはロッカーが在りますので、最初はそこに置いておけます。

日本のスキー場の昼食をとる所(とてもレストランとは書けない)は、殆どがセルフサービスだし、食事の他に菓子やビールを買って休息している人もとても多いですから、ワインを持ち込むのにあまり気を使う必要は無いように思います。

混んでいない空いている時間を見計らって、プチ・シュバル89を開けて一服です(プラスチック製のワイングラスも持参)。夜とかに飲むと、ちょっとシンプルに感じるワインでも、こういう場面で飲むととても美味しく感じます。最近は次第に「リゾート」するようになりました(お金は大して使わないので、まぁ気分だけですが)。




Villa Maria Cabernet/Merlot Reserve 1991

2年前(97年)の6月にニュージーランドに行ったときに幾つか買って帰ったワインの内の1本です。

概ねNZでは若飲み傾向が強く、普通のショップではこんな古いヴィンテージのワインはまず置いていなくて、ヴィラ・マリアを訪れてそこのショップで手に入れたワイン(これが一番古かった)です。

ヴィラ・マリアの「リザーブ」の各ワインは、地元での評価でも常にトップクラスにある、NZを代表するワインと思って良いでしょう。こと赤ワインでは小さな作り手が多いNZですが、このヴィラ・マリアは比較的大手で、「このワインぐらい日本に輸入されないかな」と思っていましたら(安いクラスは昔から入っていましたが)、時折デパートのワインフェア案内で見かけるようになりましたね。

裏ラベルの情報に寄りますと、ホークスベイ地区のカベルネとメルロを用い、16ヶ月のマセラシオン、カベルネは新樽ないし1、2年使用の、メルロは1年物の、共にフランス産及びドイツ産のバリックにて熟成させたもの。1993年2月1日ボトリング、カベルネ78%、メルロ22%。

最初のテイストは少し堅い印象、加えて噛めるような感じ。既に8年を経ているので、あらかさまな果実実は落ちつつあり、濃いと言うより、凝縮した感じがしました。でも、しばらくしてのアフターは結構ボールドで、良いです。

ストレートな、「バリック使用カベルネ」って印象は有りませんで、なかなか好みです。全体として、タイトで凝縮感のあるワインと言う感想です。そこに、もっと大きな広がりが有ると最高ですが、それでもなかなか良かったです。




Brunello di Montalcino Riserva 1991
Val di Suga

ヴァル・ディ・スガのモンタルチーノは今まで日本では余り見かけませんでしたが、91のリセルヴァを売っていたので買ってみました。

昨年ポッジョ・アンティコを訪問した時、確か「DOCGブルネッロ・ディ・モンタルチーノは、瓶の形や大きさまでも法律で細かく規定されている」と聞きましたが、このヴァル・ディ・スガだけは全然形が違いまして、細高いスマートな瓶です。全く、こういう所が、イタリアなのかも知れません。

所でこのワインは、期待の割には以外とつまらなくて、まずは印象無しなのですが(有名な作り手なので、ラベルは載せておきます)、その場で代わって印象的なのが、このところ若めのワインを飲むときに、パンにつけて食べている、このオリーブオイルです。

オリーブオイルにパンを浸して食べる事は、昔某イタリアレストランで知りましたが、その時試してみたところ、「正直まずかった」ので、以後試してみる気になりませんでした。

それが、昨年10月イタリアに行ったときに、オリーブオイルがとても美味しいので、その事などをイタリアで案内してくれた日本人の友達に話すと、後で私が買ったワインを送るときに、一緒にオリーブオイルを2本送ってくれました。

彼の住まいはトスカナのキャンティクラシコ地区で、ワインは当然ですが、オリーブオイルとしても最高の地区、そして秋も終わりになると、彼もオリーブの収穫に出向くそうです。

そして、その報酬の一部として貰うのが、決して市販はされないこのオリーブオイルです。高さも揃ってもいない透明の瓶にコルクで栓をしてあるだけでラベルも無し、いかにも「自家用」ですね。

荷物が届いたのは12月半ばでしたが、開けて見てみると、驚いたことにその時期の気温でこのオリーブオイルは固まっていました。オリーブオイルって、温度が低いと固まるんですね。室温にしておくととけましたが、しばらくすると瓶の底に、白い澱がどっさり溜まりました。

それでまた、このオリーブオイルは実に美味しいのです。フレッシュな苦みと言うか、ヴァージン・オリーブオイル独特の味がとても魅力的です。とりわけ、イタリアワインとの相性は素晴らしく、このヴァル・ディ・スガとの場合、全くオリーブオイルの方が主役でありました。(この項の主役もオリーブオイルです)

ただ、特徴が有るため、どんなワインとでも合うわけではないです。概ね熟成したワインには合いません。特にピノ・ノワールとは良くないですね。それに対し、さすがにイタリアワインとは素晴らしく、その他、若いワイン(ピノを除く)とは大体良く合います。




Ch. Ausone 1962

このオーゾンヌの62、昔買ったすぐの時1本目を開けて、それが本当に美味しかったもので、ずっと次のボトルが開けられないで居ました。

先月知り合いの人が東京から来られたとき、2日目の夜は仕事の関係でお相手が出来なかったので、私本人の代わりと言うことで、この62を(自信たっぷりで)手渡して食事して貰いました。(前日彼は、美味しいオーゾンヌを飲んだことが無い、と言ってましたので)

後日感想を聞いたところ、「確かに美味しかったけど、もう柔らかくなっていて早く飲んだ方が良いワイン」である由。私は古酒好みで(そうなったのは友達が悪かったように思う、、)そう言うのは好みではあるのですが、前に飲んだのはまだフレッシュな果実実が少し感じられて様に記憶しているので、本当はどうかと思い、忠告通りに飲んでみました。

飲んだ感じは、たしかに概ね友人の言う通りでした。前のボトルが、特別保ちが良かったのでしょう。ただこのワインもとても良いワインです。上手く綺麗に年を経ていて熟成しています。香り高く、テイストはとてもデリケートで、魅力的でした。




Brunello di Montalcino 1992
Il Poggione

1992年は、ブルネッロでもあまり良い年では無いと思うのですが、このワインは存外に大変美味しかったです。(上のヴァル・ディ・スガとは逆ですね)

「存外に」と書きましたが、実はこのワインはイタリアワインの評価本「ガンベロ・ロッソ1998」では、3グラスでこそ有りませんが、"one of the best on the market"と英語版ではかなり誉めてありまして、まだ飲み頃の表記にもなっていません。

私も最近だんだんあまのじゃくになってきてまして、こういう評論はあまり素直に信じない様になっています。で、このワインも「ほんまかなぁ、92だよ」と、評論をあまり本気にはしてなかったのですが、やっぱり人の言うことも信じなきゃ駄目です、恵まれないヴィンテージとは思えない素晴らしさでした。

柄の大きな濃縮したワインでは有りませんが、とてもバランスが良く複雑なテイストで、一人で幾ら飲んでも飽きません(濃いだけのは、直ぐ飽きてしまうんですよね)。

いつも夜一人で飲む時は、まず半分をハーフの空瓶に移し次の日用にまわして、一日に半分しか飲まないのですが、このワインはその分も全部飲んでしまいました。




Ch. Calon Segur 1966

セラーで寝かせてあるワインの口を、ふと触ってみるとべったりしているボトルがありました。コルクが弱くなって、ワインが少しずつ浸みだしてきているんですね。

こういうワインは、早く飲まなければいけません。そう言うわけで、古いワインですが、状態も保証できないこともあり一人で飲んでみました(本当なら、誰かとでないと、開けられないのですが)。

ワインは既にミッドショルダー、開けてみるとキャップシールの所がベタベタになっていた割には、まぁまぁしっかりしたコルクでした。(折れることは折れましたが)

色はレンガ色、エッジにオレンジが入っていて熟成充分。ただし、心配したような酸化が進みすぎていたり、痛んだ様な感じは有りません。ちょっとこじんまりとしていますが、良く熟成感のでた美味しいワインです。

開けてすこしの位が一番良くて、さすがに1時間以上経ちますと少し落ちてくる感じでした。