1999年4月 今月の印象に残ったワイン


暫く前から、この「今月の印象に残ったワイン」の最初は、幾行かの文章で始めています。私は、別に「巻頭言」を気取っているわけでも何でもなくて、このページは幾つかのラベル写真を含みますのでロードに少々時間がかかります、それでそのロードが済むまでの間の時間潰しとして読んで戴ければと、無い頭をひねって何か書いている訳です。(まぁこんな事を書くぐらいですから、今月はあまり書くネタが見つからなかった、と言うことですが)

私自身の最近の話題と言えば、「ワインを買わなくなった」と言うのが、話題らしい話題でしょうか。昨年暮れあたりから、余り買っていないように思います。(それでも、幾らかは買っているけど)

また、このところ95、96とブルゴーニュに良いヴィンテージがあり、価格高騰はブルゴーニュに波及しました。そろそろ出始めた96のブルゴーニュの赤は、昨年見かけた95の2割くらいは高いように思います。

一部のプレミアム・カルフォルニアワインは、ちょっと常識を外れた価格で売られているようですし、昨年よりは幾らか下がり気味とはいえ、ボルドーも依然高いと思いますし、「今後一体どうなっちゃうのか?」と思わないでいられません。

ただ、高くなっているのは有名な超一流ワイン(まさしくコレクターズ・アイテム化しているよねぇ)で、「そこそこの価格で、美味しいワイン」と言う範疇でみると、今は以前に比べて本当に沢山のワインを選べるようになっていまして、依然として「ワインは安くなった」と思って良いのではないでしょうか。




Harrier Rise Vineyard
Uppercase Kumeu Merlot 1996

ニュージーランド(以下NZ)、オークランド近郊で産する赤ワインです。96年にNZに行きまして、NZワイン(特に赤)のファンになってかえってきました(詳しくは、「xiphioのニュージーランドワイン・エトセトラ」を見て下さい)。

普通には、NZと言えば白ワイン(特にソーヴィニョン・ブラン)が有名ですが、実は赤も総じてレヴェルが高く、なかなか素晴らしいのです。ただ、生産量が多くないため、多くは国内で消費されています。最近、日本でもプロヴィダンスと言う赤ワイン(とても良いらしいけど凄く高い)が紹介されていますね。

このワインは、旅行の折に買ったワインではなく、最近NZの酒屋さんに注文して送ってもらったワインです。この所のNZの赤ワインの傾向として、メルロが人気みたいですね。以前はカベルネ・ソーヴィニョンとのブレンド用だったのですが、この数年でメルロ単一品種の、それもラパリータやマセトゥを目指したようなワインが増えています。

日本では多分売っていないでしょうから、作り手の詳しい解説をしても意味無しかもしれませんが、一応記しますと、ここはオークランド北のクメウ地区にありまして、数年前までワイタケレ・ロード・ヴィンヤードと名乗っていたワイナリーです。

生産者はティム・ハリスと言う人で、弁護士でもあり、ワインライターでもある由。「ウィークエンド・プロプリエテ」と言う言葉がありますが、この様に他に本職(どっちが本職か判りませんが)がありながら、自分達の手に負える程度でワインを造っている人がNZでは結構多いです。(従って生産量は少ない)

かなり若いワインですが、概ねNZワインは早くに飲めるはずだし、メルロでもあるし、それに何本か買ったので1本目を開けてみました。

現地価格NZ$30です。NZのワインとしてはちょっと高めではありますが、日本円で考えると安いですね(2千円ちょいですか)。濃い色、テイストはまだタンニンがかなり感じられます。「NZのメルロ」と言うと「もう飲めそうなかな」と言う先入観がありますが、実際は違っていました。

今は深く沈んでいますが、中身は詰まっている感じです。時々経験します「堅いけど、置いて於いて本当に良くなるかどうか計りかねる、、」と言うのとは違って、これは開くとかなり良くなると思います。残った分を後日飲みましたが、とても美味しかったです。




Morey St Denis 1er cru
"Les Monts Luisants" 1990
A. Pernin-Rossin

そう言えば、ペルナン=ロサンって、最近あまり見ませんね。94年に買ったワインです。

モレサンドニの1級畑、モン・リュイザンはここらでは一番高いところに有る畑の由。その為に土地が貧弱で、モレサンドニの白ワインが植わっている所でもあるようです。

この時期のブルゴーニュワインとしては、ちょっと例外的なくらいの濃い色です。香りは閉じていて大きくは立っていません。最初のテイストも同様で、「飲み頃はあと5年後なんだろうか」と思ってしまいました。でもあまりしっかりしたボディを感じないので、これから長く置いて於いてどうなるかは不明ですが。

これも後日残りを飲みましたが(開栓後、当日飲みきれないと思われる分は、すぐハーフボトルに移しかえてバキュバンで空気を抜いておく)、特に広がりやアフターが出ているわけではありませんが、しなやかさが出て、これも美味しかったです。やはり、もう少し先のワインなんでしょうか?




St Nesbit 1990

今月2本めのNZの赤ワイン。この、サン・ネスビットこそストニィリッジと並んで、少し前のNZ赤ワインの最高峰であったのです。

このサン・ネスビットの作り手、トニー・モロイも上のハリアー・ライズの作り手と同じく、本職が別にありまして、本に依れば有名な"tax lawer"(税理士?)だそうです。

カベルネ・ソーヴィニョンとメルロと言うボルドースタイルのこの素晴らしいサン・ネスビットは、近年その畑がウィルスにやられてしまい、結局、全部植え替えを余儀なくされてしまった様です。その後も、新たに植えた苗木が小動物に荒らされてしまったりと散々だったみたいですが、現在やっと畑の立て直し中で、新たにメルロ、カベルネ・フラン、プチ・ヴェルド、マルベックが植えられ、ファーストリリースは2004年になるとの事。

従って、現在サン・ネスビットは大変入手困難。やっと手に入れたのがこの90です(良くできたのは91ぐらいまでみたいです)。現地価格でNZ$100、有名なストニィリッジと並んで、一番高価な部類です。

色は幾らか熟成したボルドーの呈で、すでにフル・マチュア。柄の大きい開いたワインで、非常に良くできたポイヤックかサンジュリアンが熟成した感があります。しなやかでリッチでプルーンの風味、アフターは例外的に長く複雑でシダーの香りの、大変素晴らしいワインでした。

開栓後30分、1時間と、弱くなるどころか、だんだん開いてより豊かで、有る面官能的(こう言うところはボルドーとちょっと違うかも)ですら有りました。ボルドータイプでは、今年一番のワインと言えます。期待はしていましたが、正直こんなに素晴らしいとは思いませんでした。




Ch. Fourcas Dupre 1988

フルカ・デュプレは、いわゆるメドックの格付には含まれていませんで、とても良いワインですね。

昔私がワインを飲み始めた頃、82のフルカ・デュプレをまだかなり若い時期に飲んで、「飲むのが早すぎて今は充分楽しめないけど、とても良いワインだ」と実感したのを良く憶えています。

この88は、既に10年を経てもう飲み頃にさしかかったワインで、とてもきめ細やかでバランスのとれた、良く出来たメドックの典型のような、大変良いワインです。実力的には、3級から4級のものは充分もっていますね。




Charmes Chambertin 1991
Bermard Dugat

ベルナール・デュガの91は、昨年7月にジュヴレイ・シャンベルタンVVを飲んでいますが、その様子からはもう充分飲んで良いようだったので、今年は「真打」のシャルム・シャンベルタンを開けてみました。

「ブルゴーニュは作り手で選べ」と言うのは昔から言われている事ですし、もちろん私も真理だと思いますが、やはりテロワールの差もかなりなものだと言わざるを得ません。

葡萄を栽培する畑の土壌等について、最近では「重要なのは水はけで、それ以外の土壌の差はさほど関係ない」とさえ言われている様ですが、こう言うワインを飲むと、そう簡単に言い切って良いものか、と言いたくなりますね。(テロワール至上主義もちょっと首をひねりますが、、)

当たり前と言えば当たり前ですが、若干シンプルにさえ感じたジュヴレイ・シャンベルタンVVとは全然違います。ワインのもつテイストの深さが1段も2段も違う感じで、見事な特級畑のワインです。




Musigny 1993
Joseph Drouhin

もう飲めるかなぁ、と思って開けてみましたが、はなっから「まだ全然」って感じでした。かなり濃い色、ブルゴーニュにしては異例なほど筋肉質な感じがするワインですが、総体的にかなり閉じています。

ワイン評論家のクライブ・コーツさんの雑誌ではかなり誉めてありまして、最後には「Bravo!」と書いてあります。確かに大変凝縮したワインですが、どうもボルドーのワインで良くある「閉じている時期」なのか、香りも立っていません。

経験として、この手の若いワインを多く飲んでいないので、やはりこの先どうなるか私にはちょっと予測できません。素晴らしくなってくれることを期待します。(でないと困る)