1999年6月 今月の印象に残ったワイン


最近ワインブームの継続とともに、ワインセラーについての記事が結構目に付くようになりましたね。「ワインが好きになる」=>「ワインを買うようになる」=>「ワインを保存するようになる」と言う、ごく当たり前のストーリーの結末なんですが、問題は、ワインについてはその保管が一番大変な事である、と言うことです。

住宅事情の悪い日本においては、普通の選択はワイン用の冷蔵庫(所謂、ホームセラーって奴)を買う事でしょうが、それがまたえらく高価なのがまず第一の問題です。それでも地下室を掘ったり、トランクルームで管理してもらうとかの他の方法よりはずっと楽なので、そこそこ売れているのだと思います。

私は持っていない事もあって、ワイン用冷蔵庫がどうのこうのとはあまり言えないのですが、最近色々聞き及ぶにおいて、「この手の機種において一番大切なのは、『温度変化が少ない』だの、『振動が少ない』だの言うことよりも、第一に『壊れない』って事ではないだろうか」と思うに至っています。

「ワイン用冷蔵庫が故障した」と言う、あまり想像したくない事は結構起こるようでして、実際そのような話はよく聞きますね。yy-wineの吉田さんの所も、一度故障したようですし、またパソコン通信でも何度か聞いたことがあります。近くのレストランでも高価な業務用のワインセラーが故障していますし、私の知り合いも最近ふと見たら冷えてなかったそうです。

中には、「気がついてみてみると、温風が吹き出ていて、中の(極めて高価な)ワインが高温のためみんな吹いてしまっていた。」などど言う、身の毛もよだつ怪談話(実話ですが)もあり、とても他人事とは思えませんね。

最近目にした各ワインセラーを採り上げた記事でも、機能面での主張はありますが、「中のワインの安全性」についての記述は全くないですね。本当はこれが一番大切かもしれないのに、、

「機械はいつか壊れるもの」、当たり前なことですが忘れがちなことです。家庭用冷蔵庫の様に頻繁に出し入れするものは、故障してもすぐ分かりますが、ワインセラーなら数日そのままにしておくことも有るでしょうし、また高価なワインを数多くお持ちの方は被害も甚大です。セラーをお持ちの方は、何かの対策は考えた方が良いかもしれません。毎朝夕にチェックして毎日飲む、って言うのが一番楽しそうなんですが、現実的には警報機をつける事でしょうか。

ちなみに私の場合なんですが、うちの組立セラーは大型のため最初から空調機が2機ついていました(最近のIWAのカタログでは、1機になっています)。私は断熱効果をあげるため回りに断熱材を張りましたが、そうしたら空調機1機だけで何とか大丈夫になりました。(真夏では18度になるけど、たとえ2機使ってもせいぜい17度くらいにしかならない。1、2度位なら、私は電気代節約をとってしまいます。)

現在は、その使ってない1台を、室温が20度を超えたときに初めて作動するようにしてあります。(この空調機はワイン専用で20度と言う設定はできません。それで別に温度センサーとリレーを作り、セットしてあります)これで、もし使用中の空調機が故障してもとりあえずは20度少しにしかならない筈です。気がついた時点で後付のセンサーとリレーを取り外せば、そちらの空調機で運用できます。後は、そのバックアップの空調機まで故障しない内に、壊れたのを取り替えればよいのです。




Chassagne Montrachet "Clos de la Maltroie 1er cru" 1993
Domaine Michel Niellon

ずいぶんと昔に買った、ニーロンのクロ・ド・ラ・マルトロワです。良くニエロンと言う人が居ますが、本当はどうなんでしょうか?。

細かい印象は忘れてしまいましたが(ごめんなさい)でも、とても美味しいシャルドネであって、とても気に入った事は確かです。93のニーロンでもプルミエ・クリュならもう飲めますね。とても美味しかったです。これが、今でもこのワインを買った時の値段で買えれば、幸せだと思うのですが、、




Philip Togni Cabernet Sauvignon 1994

トニのワイン。買った当時(97年3月)はあまり名が知られていなかったみたいで(すでにパーカーの評点は良かったですが)、それほど高くなかったのですが(5千円くらいだった)、何だか今はえらく高いみたいですね。

でも、このワインは最近のカルフォルニアの優良ワインの典型みたいな感じで、甘く熟したタンニン、ラズベリーやプラムの要素、等々、やはり美味しいです、もう完全に飲めますね。これも上のと同じ、昔と同じ値段で今も買えれば、本当に幸せと言えます。




Concerto 1993
Castello di Fonterutoli

イタリアのキャンティの作り手、フォンテルトリが作りますVdTです。VdTは各作り手が、セパージュや作り方の制限を受けず自由に作ったワインですが、今はその方に良いワインがあったりして、人気があります。

名前も自由に付けるので、VdTの数だけ名前があるのですが、でもそこに良いワインが多いものですから、消費者はまずその名前を覚えなければなりません。そして付加知識として一つ一つに作り手の名前やら、セパージュとかを知っておく必要が有ります。覚えなければいけないことは、ボルドーなどの比ではありませんね。

いろんなVdTの名前がありますが、私が好きな名前が、このコンチェルトや、あとサンマルコやグリフィなんかです。特にこのコンチェルトと言う名前はとても良いと思うのですが、フォンテルトリはコンチェルトと言う名前のワインはもう止めるみたいですね。折角名前が売れているのに、なんだかもったいないような気がします。

で、この93のコンチェルトは、サンジョベーゼ80%、カベルネ20%だそうです。以前のパーカーのバイヤーズガイドにはカベルネ主体とあったのですが、いつの間にか変わったみたいですね。こういう風に、同じ銘柄でも知らない間にセパージュ変わってしまう事はイタリアでは良くあることで、さすがにイタリアやなぁ、と思ってしまいます。

テイストは最初の一口から、濃く美味しいです。少し経つと、中にとてもしたたかな酸が有ることに気がつきます。この酸の見事さが、濃いだけの凡庸さに陥るのを防いでいるのでしょう。さらに暫くして、芯の強さや複雑さが見えてきます、これは20%ほど入っているカベルネゆえでしょうか。1時間してアフターも長く、大変魅力的。優良トスカナワインの見本みたいな感じがしました。




6月に、私主催のワイン会を一度しました。ブラネール・デュクリュの垂直で、66、70、71、79、81、82の6本を6人で飲みました。結構ラベルが痛んでいるワインが多かったのですが、中身は悪くなったようなワインも無く、とても面白かったです。

普通ブラネール・デュクリュと呼びますが、前にも書きました通り、ラベルにはシャトー・ブラネールとしか書いてありません(少なくても66年以降は)。その為に最近出た、R.パーカーの「ボルドー」の新版には「シャトー・ブラネール」の名前で出ています。(前のは、「ブラネール・デュクリュ」だった)

何かボルドーシャトーの名簿みたいなのには、ブラネール・デュクリュと載っているらしく、その名で通っています。先ほど知り合いの方が直接シャトーのオーナーに、正式にはどちらが良いのかと聞いたところ、しばらく考えた後「ブラネール・デュクリュ」と答えたそうです。でも、どうやらデュクリュ・ボーカイユと混同されるのが嫌らしくて、本当はブラネールと呼んでほしいみたいですね。

まず、79と81を一緒に出しました。熟成が進んだ感じ、2つの差はあまり感じません、ちょっと小ぶりだけど、「とても良いサンジュリアン」って言う感じがします。

次に、70と71を一緒に出しました。色は70が濃いのですが、70は先に期待した割にはいまいち単調な感じを受けました。一方かなり熟成が進んだ感じの71ですが、デリケートさの中にフィネス、広がりもあって、なかなか素晴らしい。

次は66、これは文句無く素晴らしい。先の71に加えてしっかりとしたストラクチャーを持ち、かつ香りの広がりも、テイストの広がりも大きい。

最後に82を出したのですが、熟成感があるこれまでのワインと比べて、82だけはそういう意味では異質。色も特に濃く、深くまだ沈んだところがあります。先にこれだけで飲んだときにはとても美味しく飲めたのですが、先のワインの後では、飲み頃はまだ先、と言う気さえします。先にこちらを飲んだ方が良かったかも、、でも美味しいワインでした。

私自身も、皆さんの人気も、一番は66でした。次に、すでに下り坂に入っていると言って良い71を推すのは、私ぐらいだったでしょうか。

66の画像を載せましたが、これは「ニコラ」のワインですね。見づらいと思いますが、フランスのワイン屋ニコラのスタンプ入りのラベルになっています。(滲んでいますが赤い丸スタンプみたいなのがそうです)

ニコララベルのワインと言うのは、昔はわざわざこういうラベルにしてニコラがシャトーから買って保存していたらしいですね(後年、飲み頃になってから高く売るために)。つまり、長らくニコラの倉庫にあったワインと言って良いと思います。(そこらの事は、私の聞きかじりなので、確証はとってないのですが)

まだ有るかどうか分かりませんが、10年ほど前、新婚旅行でパリのニコラに行った時には、このニコララベルの古いボルドーが幾つもありました。

この66のブラネール・デュクリュは、他のワインとともにアメリカから私の所に来たのですが、前のオーナーはこのワインを(おそらく80年台になってから)ニコラから買った思われます。それ以降の状況は分かりませんが、66のこの素晴らしさは、ニコラワインであった事で、結構納得できますね。





Caymas Cabernet Sauvignon 1991

ケイマスは、ルーツをたどれば禁酒法以前にもワイン作りをしていたワイナリーの様ですね。新たな創立は1971年です。(ちなみに「ケイマス」とはインデアンの種族の名前だそうです)

良いワインを作るワイナリーとして昔からとても有名なんですが、何故か日本にはほとんど入っていないみたいで、モンダビやリッジなんかに比べて、日本での知名度は悪いみたいです。

カルフォリニアのカベルネを、70年80年代から高品質なワインを作っていたところと、ハーランやアラウホなど90年以降の新興ブティックワイナリーのワインとあえて分けて、「クラシック」と「カルト」とするならば、これは完全にクラシックな方のワインです。

とてもボルドーライクなカルフォルニアカベルネですね。91年でも、決して飲み頃とはまだ言えないと思います。最初は比較的閉じ気味でしたが、開栓後暫くしてとてもおいしくなってきました。このワインは「レギュラークラス」でして、上位に「ケイマス・スペシャル・セレクション」が有ります。こちらも飲んでみたいものです。