1999年8月 今月の印象に残ったワイン


夏お盆の頃と言えば、ここ徳島では言わずと知れた「阿波踊り」。8月12日から15日までの4日間、徳島は踊り一色になります。当然人出で混みますが、やはりこの時が徳島に来るのは一番面白い時期かと思います。

昨年に引き続いて、今年も大阪のワインバー(それも3店舗)のソムリエさんらが、お盆休みを利用して徳島に遊びに来ました。更に夜12時を回った頃には、お店が終わってから明石大橋−鳴門大橋を渡って駆けつけた、関西のシェフ2名(Y氏とK氏、共に超有名人!)も加わりました。

夜12時と言えばさすがに阿波踊りも終わっています、要するにみんなワインを飲みに来たんですね(ワインは全部私の提供)。しかし、とても楽しかったです。

まずは、7時過ぎから食事です。持ち込みのリーデルのグラスを各自手に持ってもらい、阿波踊りで人が一杯の賑やかな街頭を歩いて近くの寿司屋に。ワイングラスを片手に、ワインや酒をもう片方に持ったグループがぞろぞろ移動する様は普通では奇異かも知れませんが、この日ばかりは気にする者も少ないでしょう。

徳島の色々な魚料理と飲んだお酒は、

その後、別の場所で、合流したシェフ2人を加えて(夜12時からだよ)、 終わったら4時になってました、、

印象的なワイン多かったのですが、その中でも特に印象的だったのは唯一の日本酒の「松美ど里」です。福島の純米山廃のお酒なんですが、これは何と平成元年に送ってもらった物。つまり今年で8年めの古酒ですね。

この酒が熟成に耐えられることは、ある程度確認済みなので(10年以上於いてあったのを飲んだことがある)、出したのですが内心びくびく。でも飲んでみてびっくり、予想以上の素晴らしさ!、確かに古酒だからひねた香りや味は少しするけれど、全然大丈夫。色もグラスに入れると、先に飲んだデュマ・ガサと寸分違わぬ金色がかった透き通った色で、ワインじゃないかと思うくらいでした。ちなみに一升瓶の底の方に灰色の軽い澱が溜まっていました。(4、5日冷蔵庫の中でたてておいて良かった)。

昔、越の寒梅を3、4年おいてから開けたことがありますが、これはあまり飲めた物では無かったです。熟成させて意味が有るかどうかは、元のお酒の資質によりますね。

本当に美味しかったのは、ルイ・ラトゥールのモンラッシェ85でした。このワイン、幾らか買った中の最後のボトルなのですが、今まで3本あけて2本怪しい、と言う確率だったのですが、これは大変良いボトルでした。正にモンラッシェの名に恥じないワインで、大満足。

ピション・バロン70のマグナムは、まずまず良かったです。コルクが弱くなっている上に中が陰圧になっていまして、さわっただけでコルクが中に吸い込まれてしまったのですが、そこはメンバーの殆どがプロのソムリエ、コルクリフトの様な専用工具も使わず、紐だけでコルクを引っ張り上げました、さすが!。

ハイツのベラ・オークス90は、最近自分で飲んでも美味しいと驚いたワインですが、やはり美味しいと評判でした。いつの間にこんなに美味しくなったのか、うーん、早めに何本かあけてしまって損をしてしまった、、

グリヴォのリッシュブール88は、私が飲む前に無くなってしまいました。まぁ私は前にも飲んだから良いけど、、

ブラネール・デュクリュ82も当然良かったですが、やはり私はエルバッヒャー・マルコブルン76のベーレンアウスレーゼですね。いつ飲んでも美味しい!。

家に帰ったら5時前です。7時半には起きましたが、楽しかったせいか、翌日にはあまり残りませんでした(さすがに午前中は眠かったけど)。でも、長いお盆の夜でした。




Ch. Le Gay 1988

「ル・ゲ」と言う、これまた短い名前のシャトーは、ポムロルのワインです。所有者は、あのラフルールも所有しているマリー・ロバンさんです。

かつては、既に亡くなられたテレーズ・ロバンとの姉妹で、このポムロルの2つの畑から、ペトリュースにも迫るワインを作っていたのですね。(何だか、「バベットの晩餐会」の姉妹を連想してしまいます)

1984年にお姉さんのテレーズが亡くなって、畑は85年からは彼女の若い従兄弟のJacques Guinaudeauとその妻のSylvieによって(これはC.コーツさんの本に拠る、パーカーさんのボルドーには名前は同じですが、彼女の姪と甥となっています。)面倒見られているようです。

ラフルールに対し、ル・ゲのほうの最近のヴィンテージ(特に90年代)では、パーカーさんの評価は割と低めですね。この88年も86点と言う、これまた割とどうでも良いような点数がついていますが、私が飲んでみた分には大層素晴らしいワインでした。(90点あげちゃう)

確かに「押しだし」は強くなく、それほど力強さも感じないけれど、ボルドーの、ポムロルの良さに溢れたワインです。特に濃くもなく果実実も強くないのだけど、フィネスがあって「ワイン」としての魅力たっぷりでした。一人でゆっくり楽しむワインかな。




Stagliano Sangiovese 1995

98年12月のレポートで、同じスタッグリン・ファミリー・ヴィンヤードが作ります1994年のカベルネ・ソーヴィニョンの事を書きましたが、一緒に買ったサンジョベーゼです。こちらの方は、イタリア風に「スタッグリアーノ」となっていますね、ヴィンテージは95です。

実は、スタッグリンに目を付けて購入を申し込んだのは、こちらのサンジョベーゼが主な目的でした(スタッグリンのホームページに、このサンジョベーゼの先のヴィンテージについて、パーカーさんが書いた大変良い評論の引用がありましたので)。カベルネ・ソーヴィニョンの方は、ついでに買ってみた、と言うのが正直な所です。

買ったのは既に2年前ですが、95ですし、まだ飲むのには早いかと思い待っていましたが、こちらの方もそろそろ開けてみることにしました。

色はとてもクリアーで若い紫がかった色です。薄くは無いですが、特に濃いという事も有りません。テイストは酸味が綺麗で、まるでサンジョベーゼの見本の様な気がします。大変素直で、とてもクリーンな感じがするワインで、品質の高さが知れます。

だけども、あまりにもお手本の様で、綺麗すぎてちょっと面白みに欠ける気もしますね。果実実もそこそこの複雑さも有りまして、とても楽しめる、美味しい良いワインですが、何か個性のような物が足りない様に思いますが、それはねだり過ぎでしょうね。




Domaine de l'Eglize 1989

こちらもポムロルのワインです。ポムロルにはレグリーズ(教会)の名前が付いたシャトー名が幾つか有りますが、ポムロルの村の中心付近に教会があって、その回りの畑の様ですね。

ドメーヌ・デュ・レグリーズは普通はあまり見かけないワインですが、この89は1、2年ほど前デパートのワインフェアのリストに出ていましたから、飲まれた方もいらっしゃるかと思います。(私のこのボトルは、それより何年か前にアメリカから買ったもの)

10年を経て、とても良いワインでした。熟成したメルロの感じがとても良く出ているように思います。そういう意味では上のル・ゲに良く似ています。

最初は少しやわいところもあるかな、って思っているのですが、開栓後1時間ほどしてずっと良くなって、香りも、下草や腐葉土を思わせる深みを帯びてきて、なかな楽しめました。




Clos Vougeot 1992
Chopin-Groffier

高名な(だけどあまり見かけない)ショパン=グロフィエの唯一の特級畑、クロ・ヴジョです。私もショパン=グロフィエは、初めて飲みます。

期待して飲んだ結果は、「多分、とても良いワイン」と言うことです。何故「多分」かと言うと、残念ながらこのボトルはちょっとブショネだったんですね、、

で、ブショネのワインの事を何でここで書いているかと言いますと(他に取り上げるワインが少ない、と言うのもあるのですが)、結局半分近く飲んじゃったからです。

比較的軽度のブショネとは言え、アフターに残るいやーなカビ臭い香りとテイストはいかんともしがたいですが、それ以外のワイン自体の素性は大変素晴らしいものと判断できました。

もう1本有るので、こちらを開けるのが楽しみです。