最初に、、

この原稿の殆どの部分を最初に書いたのは、もう1年位前の事になります。何度も読み直しては、ほんの少し書き直したりしましたが、結局の所ずっとホームページに公開する事が出来ず今に至りました。

理由は、たとえ「・・よもやま話」とタイトルを付けたからと言って、専門家でもない、またあまり経験も知識もない単なるど素人の私などが、一番議論尽きないワインの保存についてあれこれ書いてしまって良いのか、と自問していたからです。

本文にも書きました通り、この問題に個人として正確と思える意見を持つ為には、非常に幅広くて、かつ長期に渡るワインについての経験が必要でしょう。実の所、私も確信が持てる事柄は殆ど無く、私が以下に書ける内容は、結局の所多くの方々の意見の単なる積み替えに過ぎないないからです。

本当の所は、「結局の所ワインとて嗜好品、自分の思いのままに、、」と書きたい所ですが、そう開き直るにしては、熟成させるに足る良いワインは結構高価です、やはり何かと気を使う事でしょう。

それに何時までも隠しておいてもしょうがないので、結局の所こんな「おことわり書き」を添えて公開する事にしました。「こんな意見が有るんだ」と言うぐらいの、軽い気持ちで読んでいただければ幸いです。御意見等有りましたら、是非お聞かせ下さい。


ワインの保存、よもやま話


ワインは保管に大変気を使うべき品物である事は、大方の人が御存知だと思います。ワインをついつい多く買いすぎてしまった場合や、非常に良いワインだけれどちょっと飲むのには若すぎるワインを買ってしまった場合など、保管をどうしようかと思い悩む事は誰しも良くある事です。

ここのページでこれから書くことは、表題通り「ワインの保存、よもやま話」であって、「ああですよ、こうですよ」のガイドではありません。何故かと言うと、私も良くわからないからです。その実状はおいおい説明して行きましょう。


まず通常ワインの保管の時に気を付ける項目として、通常あげられているのは、

など、でしょうか。
一般的に言われていることを、それぞれ簡単に解説しますと、まず温度はあまり高いと(敢えて温度は此処では書かない)、魅力無いワインになってしまうし(熱にあたった、とか、熱が入ったとか言う)、低すぎると熟成しないから駄目。温度変化が激しいと、やはり駄目。湿度が低いとコルクが乾いてしまうから、駄目。振動はワインに良くないから、振動が無いところでないと駄目。保管はコルクが濡れるように寝かして置いておななければ駄目。などなど、それこそ一杯条件が出て来ます。

でもこれだけでは、実際にはどうしたらよいか、困ってしまいます。だいたいワインの熟成とかは、10年スケールなので、

誰も本当の事はわからない

のではないかと思います。「何々してたら駄目になった」と言う事例は明快で説得力が有りそうですが、本当はそれ以前から悪かったのかも知れませんし、ワインはボトル差が有るので、単なるはずれのボトルだったのかも知れません。それに、わざわざそれを確かめる様な事は、普通の人はやりませんよね、もったいないし。

つまり或る結論を出すために、様々な経験を集約するにしても、また実際に実験してみるのも、とにかく時間がかかりすぎますし、そもそも自分で保管するまでの経路の状態も良くわからない場合が多いので、なかなか本当のことは分からないのです。

それで、一般的にそういう保管についての質問が有った場合、色々な返答の仕方が有ると思いますが、結局の所、

一番厳しい条件を言った者勝ち

なんですね。例えば温度一つとっても、「20度越えなければ、まぁいいんじゃないかなぁぁ」と誰かが心の中で思ってみてても、隣で「とんでもない、14度でなけれはいけない!」と言う人がいれば、普通の人は敢えて何も言う事は出来ないわけです。

「いいや違う、違いがわかる僕にはね」と、周富徳風(ちょっと古いですね)に言われてしまえば、まぁそれまでで、私の様な者には全く反論は出来ません。事実、「日本に来ているワインは(旅をしているから)どれも本来の物でない。」と言い切る方もいらっしゃるそうです。


それで「誰も本当の事はわからない」時はどうするかと言いますと、とりあえず「歴史的に見て、巧く保管できていると思われ続けている環境」を模倣すれば、まずはそれで良いと考えられます。

具体的には、歴史有るシャトーのセラーとか、イギリスあたりのお城のセラーです。「シャトー蔵出し」の古いワインは評判が良いですし、そんなお城のセラー提供のワインは非常に良いと言う噂です(飲んだこと有りませんが)。とりあえず許容範囲は不明でも、これまでの歴史が全てを説得してくれる筈です(と、皆信じています。少なくても悪くは無いでしょう)。そういう事柄から揃えた、一般的に言われています条件を列記してみますと、

となります。でもこれって大変ですよね。でもこれらにも敢えて違う意見が有るのも事実です。


まず温度と温度変化ですが、急激な温度変化が無ければ、結構暖かくても大丈夫(みたいよ)と、会話の中で出てくる事もよくあります(とても文には出来ません)。私のセラーの場合、真夏はどうしても18度位になってしまいますので、私自身がどう思っていようと結果として容認している形にはなっています。(本当は私も、簡単に出来るのなら14度固定にしたいのですが)

今のセラーが出来る前は、ワインは蔵の中に入れて有りました。蔵といえども夏は暑くなります。外気が34度なのに中が20度なんて事はなくて、27、8度にはなります。一夏二夏越えましたが、ことボルドーに関しては概ね大丈夫な様な感じです(ただし熟成はだいぶん早い様に思います。またブルゴーニュにはつらい条件みたいです、まねしないで下さい)。最もそれは、私の感覚が鈍いだけかも知れませんし、私はそれを否定しません。


温度変化については、急激な温度変化は明らかに悪いみたいです。化学的と言うより、物理的にワインが吹いてしまったり、コルクがもち上がったりするので、その後遺症が大きいのかも知れません。ただこの事に関しても、私は温度変化の激しい所にワインを保管した経験が無いので、本当の所は良く解りません。もちろん実験するつもりも有りませんが。

もう少しゆっくりした、一年周期程の温度変化に関しては意見が分かれる所です。どちらにしても無い方が良いと言う方も居ますし、少し有った方が良好に熟成する、と言う方も居ます。ここまで来ると、どっちでも良いような気がしますが、私のセラーは夏は18度、冬は10度弱なので、先と同じく私自身がどう思っていようと、結果として後者を容認している形にはなっていますね。


湿度については結構重要視する方も多いようです。いつか、湿度管理しなかった某セラーのワインが、その為にある時一斉に駄目になってしまった、と言う怪談話も聞きました(みんな飲んでみたのでしょうか?)。

まず湿度が高い方に関しては、高くて悪い訳は無いと思いますが、余り高湿度だとラベルが黴だらけになってしまいます。地下にセラーを作ると、湿度が高すぎて逆に湿度を防ぐ工夫が必要になる様です。またワイン作り手の地下セラーは、湿度が100%近いそうです。普通、瓶の物もラベルを貼らずに保管しますし、樽ですと蒸発分も馬鹿になりませんから、それが良いのですね。

さて下限をどの位で容認するかは難しい所です。一応上記では70%と書きましたが、60%以上と書いて有る本もあります、65%以上と言うのも、75%以上と言うのも見た様な記憶が有ります。でもそこは余り真剣に考えない方が良い様に思います。本当の所、そのぐらい測定器の誤差範囲なんですね。

余談ですが、私はセラーの湿度を計るため、測定タイプの違う湿度計を3種類ほど買いましたが、現在65%を示すのも有れば、80%を示すのも有ります。精神安定上一番高いのを信じることにしています。(因みに温度計も3個ありますが、みんな1度づつ違います、結構いい加減です。)


澱が舞ったり、液面が大きく揺れる程の振動は、何となく酸化を早めそうな気がしますが、弱い微震動はどうなんでしょうか?。冷蔵庫を改造して簡易ワインセラーにする案でも、コンプレッサーの振動を心配する方はとても多いようです。



ここらについては「ワインがわかる」と言う本にマット・クレーマーさんが書いています様に、小さな微震動なら影響無いとする方もいます。彼の意見も説得力有るものですが、無いなら無い方がやっぱり良いでしょうね。

ちなみにこの本は、多少マニア向けではありますが、とても面白い本ですので、興味が有る方には是非一読をお勧めします。


保管にしても、ワインは寝かして保管するのが常識化していましたが、やはり、マット・クレマーが上記の著書にて、「そんなことは無い!、立てて置いて大丈夫」と言い出しまして、ちょっと話題になったことが有ります。

どっちが正しいか意見色々で、私も解りませんが、まぁ寝かせて置いて於いて悪い、って事は聞きませんから、寝かせて保存して有ります。


この混迷の渦の中で何を信じるか、と言う事になりますが、結局の所、自分で出来る範囲の事も考え合わせて、保管を考えた方が良いかも知れません。誰かさんが書いた条件がクリア出来なければ、まずは一応リスクも考慮しながらも出来る範囲での保管を考えるべきです。そして一つずつ自分で確認し納得して行くことでしょうか。(そして私に教えて下さい。)

常識的な所で、一等わかりやすい安全な方法は、ワイン専用冷蔵庫を購入する事でしょうが、それとて、「ワイン専用冷蔵庫では、一時的な保管は出来ても、熟成させることは出来ない」と言う意見を多く聞きます。私は持っていないので何とも言えませんが、温度と湿度をコントロール出来て、振動も少なくしている高価な専用装置でも、何処か不備はやはり有るんでしょうね。