1997年12月 今月の印象に残ったワイン


Sandbicher Riserva 1993 (Heinrich Lun)
Pinot Nero Dell'Alto Adige



本年(1997)2月に、イタリアはコルチナ・ダンペッゾにスキーに行ったときに買って帰ったワインの一つです。

とにかく全く知らないワイン。荒井さんの本やパーカーさんのにも載っていなければ、ガンペ・ロッソ(Gambero=Rosso,イタリアで出ているイタリアワインのガイド、凡そ、千ほどの作り手と、その主要なワインについての記述がある。当然イタリア語。)にも載っていないワインです。

ラベルからわかることは、銘柄が"Sabdbicher"、作り手が"Heinrich Lun"で、ラベルにBozenとあるのは地名でして、アルト・アディジェ州の中心都市ボルツァーノ市の事です。DOCはアルト・アディジェで、使用ブドウはピノ・ネロ(ピノ・ノワールの事)です。

アルト・アディジェ州はイタリアでも最も北で、南チロル地方とみられ、歴史的にはオーストリアの一部であった過去がありあして、現在でも大半がドイツ語を話している州だそうです(公用語も2カ国語)。

スキーで滞在したコルチナはヴェネト州ですが、地域的にトレンティーノ=アルト・アディジェに近く、その辺りのワインが多く見られました。また、スキーをしている人でも、ドイツ語をしゃべっている人がとても多かったです。

コルチナの町のお店で買った物ですが、結構高い目を買ったつもりですが(そりゃ高いのはGajaなんかも売ってたが、地元のワインを買わないと意味がないですからね)、それでもこのワインは16000リラ、日本円で千円ちょい、って所でしょうか。

全然聞いたこともないピノ・ネロのワイン、あまけにそんなに高くない、、と、余り期待しないで飲んだのですが、これが、とっても美味しいワインでした。かなり見事なピノ・ノワールと言っても良いと思います。

明るいカラー、低い酸、ソフトで有りながらしっかりしたテイストと香りで、感じとしてはどちらかと言えばボーヌのワインに近い印象でしたが、葡萄の品種の特徴がでている良いワインでした。

アルト・アディジェは各生産者も小さく、生産量もそれほど多くないために有名になれないようですが、それでも色々調べたりしていますと、なかなか良いワインが多いようです。本当に、これだからイタリアって侮れません。


追記:

この項をアップロードした後に、ヴィノテークの1月号に、アルト・アディジェの小さなコラムが有るのを見つけました。アルト・アディジェの(日本に輸入されている)ワインとして、アロイス・ラゲーデル(Alois Lageder)の紹介もあります。(ヴィノテークはどこまでが本誌記事で、どこが広告記事か、分かりませんが)

そこに有った、ラゲーデルの輸出部長の弁では「アルト・アディジェはイタリアで最上のピノ・ノワール(ピノ・ネロ)を作る地域。あと数年したらここのピノ・ノワールは国際的に有名になりますよ」との事。

確かに、私もこのワインを飲んで、その言葉がセールストークばかりで無いことが、良く分かりました。


追記その2:

私が飲んだこのワインは、全く情報のないワインと先に記しましたが、後で、"The Wine Atlas of Italy"(Burton Anderson)と言う本を見てましたら、アルト・アディジェの"Wines of The South Tyrpl"の "WINE HOUSES/MERCHANTS"の所にほんの少しですが記述がありました。

> H.Lun , Bolzano. Full range of wines, some under the name sandbichler.

たったこの一行だけです。ちなみに上出の アロイス・ラゲーデルも同じ所に載っていました。ここは大きいところらしく、もうちょっと解説があります。


Concept 3 1986 (Nobilo)


このワインは、97年6月にニュージーランドに行った時、オークランド郊外の作り手、ノビロに行って直接買って帰ったワインです。

このワイン、ヴィンテージが86年なんですよね。NZでは、赤ワインでも非常に早飲みの傾向が強く、レストランなんか行っても、リストに載っているのは全て(97年時点で)、94以降でした。

NZは元々ワインの生産量もそれほど多くないし(特に赤は)、加えて幾らかワインブームの気が有りましたので、すぐ掃けてしまうらしく、ワイナリーに行っても、リリース後の在庫は殆ど無いようです(ショップでも同じです)。もちろん、マロラクティック発酵をバリックの中で行うなどして、リリース後すぐでも、充分飲める様にも作っているようです。

それで80年代のワインなど何処でも見た事が無かったので、珍しさ故ついつい買ってしまいました。帰って、裏ラベルの解説を読んでみると、このワインはイギリスで瓶づめされたワインなんですね。

それが、NZに舞い戻っている所を見ると、察するにイギリスで売れ残ったワインなのかも知れません。その裏ラベルの解説には、1993から1996の間に飲んでくれと書いてあります。

あまり期待もしなかったし、その思い通りのワインでした。やはりちょっとばかし飲み頃を過ぎている感は有ります。果実実は既に落ちて、かといって、ワインを支えるストラクチャーもあまり有りません。そんなに高くも無かったし、それを考えれば決して悪いワインではありません。ただやはりもう少し早く飲んであげた方が美味しかったでしょうね。


Starling Vineyards Diamond Mountain Ranch 1992


これは地元の酒屋で買ったワインです。例年の事ですが、12月はワインを余り飲んでいないので、こんなのも取り上げてみました。

スターリング・ヴィンヤードは1969年創業で、最初からヴァライアタルしか作らないと言う(当時では)高級志向のワイナリーで有る由。最初はコカコーラ・アトランタ、83年よりシーグラムの傘下と、常に大手資本のヴィンヤードです。(以上、田辺由美著「カルフォルニアワイン」より)

そのせいか、ここは見学に訪れる者には、結構面白く、また便利に出来ているようです。97年秋のTarzan10/22号のワイン特集には、スターリング・ヴィンヤードの建物の様子の解説が詳しく載っています。この雑誌につきましては、「xiphioのワイン雑記帳」中の、「97年秋冬、ワイン特集雑誌&ムック本、総まくり」をご覧下さい。

スターリング・ヴィンヤードとしては、この上に格上の「リザーブ」が有りますが、私はまだ見た事が有りません。

これも、ちょっとは期待したのですが、まぁまぁ普通の美味しいワインです。深みや複雑さが足りませんが、それは要求過多と言うべきでしょう。


Grands Echezeaux 1988
Rene Engel


"Engel"と書いて、「アンジェル」(本当のところは「アンジェ」でしょう)と読むようです。間違っても「エンジェル」と読まないようにしませう。

2本目ですが、1本目は(多分経路中の保存が悪かった)飲むのがつらいワインでしたが、こちらはOKです。いつもながら、ワインのボトル差は毎回認識を新たにします。

ただ2日目になると先のボトルとほぼ同じです。今年のボジョレ・ヌーボーを開けて、ブレンドして遊んでたりしてたのですが(でも結構面白い)、結局はヌーボーだけで飲んでしまいました。


1997年で一番印象に残ったワイン。

3月に飲みました、Philippe Remyの Chambertin 1976 です。これは本当に素晴らしいブルゴーニュでした。詳しくはリンク先の97年3月の今月の印象に残ったワインのページをご覧下さい。

1997年で、自分で買ったワインで、一番まずかったワイン。

保存が悪かったり、酸化が進行して飲めなくなったワインや、ブショネのワインは除きますと、Louis Chevallierの Pommard 1995 です。

このワインは9月にやまやで2千円少々で買った物。買う時から、決して「美味しいワイン」を意識して買ったワインでは有りませんでした。(そう言う意味では、自業自得、かな?)

では、どうしてこのワインを買ったかと言うと、このワイン、ラベルが布地に刺繍してあるラベルで、単にそれがとても面白かったからです。(95は割と良いヴィンテージだし、早めに飲めばそれなりに美味しいかも、とも思った)

正直、単に「何かの話題になれば面白い」と思って買って、その通り早めに開けたのですが、それがまた予想以上に、のっぺりした、何の面白みもないつまらないワインで、がっくりです。大昔飲んだドメーヌ・パランのポマールを思い出しました。