10月の始め、パソコン通信ニフティサーブのお酒フォーラムFSAKEが開設10年になったそうです。ワインの会議室が2つもあって、結構盛況です。別項でも書きましたが私は日本で初めて、アスキーがパソコン通信の実験を始めた頃からのネットワーカー(既に死語かな)で、ニフティにもFSAKEが出来る以前、料理フォーラムFCOOKの一会議室にてワインを話を色々していた時よりのメンバーでして、もう10年になるのかと感慨もひとしおです。(おまけにFSAKEのSysOpとはお互いパソ通始める前からの知り合いなんです。)
さて、その10年間よくよく考えてみれば、ワインをめぐる環境でも随分変化がありました。例えばその価格だけを考えても、その昔はワインは(日本だけですが)大変高価な物でしたし、手に入れられる種類も結構限られていました。ラトゥールなどのボルドー1級が大体三万円って感じでした。
一方当時ひとたび海外に目を向けると(主にオークションと言う手段でです)、ワインは驚くほど安かったのです。例えば自分でカタログを取り寄せたあるオークションでは、ムートン75の1ケースのエスティメイトが、$500から$700でした。(当時も1ドルが百二、三十円ってとこでしたかでしょうか、そして多分その位で落札したはずです。ちなみに私は買っていません、ハイ。)
そのうち国内で販売されるワインがいきなり安くなってきました。その最たる最後の時期が90のボルドーが出回りだした時期で、この頃は「今、ワインが本当に安いよ」と知り合いのソムリエも言っていた位です。今幾らするか知りませんが、90のラトゥールを1万1千円で買っています。その前、84ならボルドー1級はどれも全て6千円で、結構どこでも買えました。(悲しからずや、私は未だに当時の感覚が抜けず、91年以降の弱い年や、さもなければ未だ飲み頃に達しても居ない若いボルドー1級ワインが何万もするのには、未だに全くついてゆけません。)
その後は皆さんのご存じの通りです。アメリカの好景気とアジア等のワインブームを引き金に、ワインは(と言っても指標は格付けボルドーですが)世界的に高くなりました。アジアの景気は後退しましたが、世紀末気分も有るので、2000年を少し過ぎるまではワインの価格に大きな変化はないだろうと思います。
変わったところは価格以外にも、当然そのヴァリエーションの広がりや、その買い方などにも及んでいますね。私がインターネットに接続して、ホームページを初めて作ったのは1995年ですので、それからも既に4年を経ました。96年までに書いたページが結構あるのですが、それらのページを含めて、ちょっと現在の状況と合わなくなってきている所もあります、各記載データも古くなってるのもありますし、、。書き換えようと思っては居るのですが、実際にはなかなか着手出来ません。すいません。
パソコン通信でのワインの話も、実のところ採り上げるワインとかが昔とは全然違っている筈ですし、人もどんどん変わっているのですが、それでいて何となくあまり変わらないような気もします。(変な書き方ですけど)
結局、状況はすごく変わっても、ワインが好きな人の想いって、やっぱしあまり変わらないのかも知れませんね。
Alion 1994
昔神戸のあるワインバーで、「ヴェガ・シシリアが、新しく近くで作り始めたこんなワインが入ったのですけど」と言われてボトルを開けてみたのが、アリオンを最初に飲んだときです。随分と以前の話で、それはおそらくリリースされた直後のヴィンテージではないかと思います。誰もこんなワインの事は知らない頃でした。その時の印象は、確かに美味しかったけど、それまでのスペインワインに良く感じられた、少々野暮ったい所を持っていました(でもとても安かった)。それから数年、長らく飲まない内にアリオンもえらく高くなって、この94は6千円近くになっています。
でも価格が上がった以上にワインは良くなった様に思います。久々のこのワイン、一口飲んでみて、「アリオンってこんなに洗練された美味しいワインだっけ」と思ってしまいました。葡萄はテンプラニーリョですが、細部を考えずにいると、ワイン全体の印象はまるで非常に良くできたボルドーの様です。ヴォリューム感が有りながら荒々しいところが有りません。印象としてはペスケラに非常に似ています。
しかし杯を重ねると、その上に、スペインのワインを思わせる、血のテイスト=>照りつける太陽や情熱のエッセンスが確かに感じられます(これはペスケラに無かった印象です)。それでいて先に書いたように非常に洗練されているのです。アリオンって良いワインになりました。大推薦です(ただし安ければ)。
Ch. Brane Canteac 1964
うちの奥さんのヴィンテージのワイン。誕生日なので、と言うことで食事に出かけた折、持参しました。新婚旅行で行ったパリで買ったのをはじめとして、実はブラーヌ・カントナックの64は何度も飲んでいますが、偉大と言うほどでは有りませんが、なかなかチャーミングでいつもなかなか美味しいです。
パーカーさんの評では80点と言う、これまた相当悪い点がついていますが(パーカーさんはブラーヌ・カントナックが好みでないのか、評論はいつもすごく悪い。)、何度もこのワインを飲んだ私には、少々不当な評価と思われます。
Chevalier Montrachet 1991
Domaine Leflaive
Puligny-Montrachet Les Folatieres 1991
友人とワインを寿司屋に持ち寄って食事をしました。彼は私がルフレーヴが好きなのを知っていて、ルフレーヴのシュヴァリエ・モンラッシェ、私はドーヴネのピュリニー・モンラッシェのフォラティエールです。申し合わせは何も無かったのですが、奇しくも同じヴィンテージになりました。
Domaine d'Auvenayご存じの方も多いでしょうが、このドメーヌ・ドーヴネは、ルロアのマダム・ラルー・ビーズ・ルロアの所有するドメーヌです。つまりルロアと言うことです(ドーヴネはすべて自社畑のワイン)。最近のルロアのワインにはとんでもない値段が付いていましてとても買えませんが、何とか買えるのがフォラティエールかムルソー・ナルヴォー位でしょうか。それでもよその1級畑並の価格ですが、、
さて、同じ91なんですが、ルフレーヴはやっぱりルフレーヴ、すごく美味しいです。やはり完全に好みです。
フォラティエールもタイプは全く違いながら、最初は結構美味しいねぇ、と思いましたが、やはりルフレーヴの個性に寄り切られた感じです。
Nuit Saint Georges, Les Saint Julien - Les Plateaux 1990
オスピス・ド・ボーヌは有名ですが、オスピス・ド・ニュイと言うのも、あまり見かけることは有りませんが実は有ります。私も大昔、一度だけ飲んだ事があるだけです。
Hospices de Nuits, Cuvee Claude Poyen
Mis en bouteille par Maurice Chenu暫く前に買ってあった90を開けてみました。このワインはオスピスとは言え、ランク的にはACニュイ・サン・ジョルジュです。
やはり少々小ぶりですが、良くまとまったワインでした。村名ワインにしては、かなりしっかりしている感じです。その他特に印象に残ったと言うわけではないのですが、オスピス・ド・ニュイのラベルも憶えておいたほうが良いかと思い、載せてみました。
Ch. Ausone 1983
同じサンテミリオンのトップでありながら、世の中シュバルブランのファンの人は結構多いと思いますが(私の友人の中にも複数人います)、オーゾンヌのファンの人はあまり居ない気がしますが、どうでしょうか?。まずあまり見かけないのが、その第一の理由でも有るのでしょうが、これはその生産量の少なさに拠ります。実はオーゾンヌは、ペトリュスよりも少ししか作られていないのです。この点については、99年1月のオーゾンヌ87のレポートに詳しく書きましたので、良かったら読んでください。
で、私はちょっとあまのじゃくな所がありまして、「安く売っていれば」と言う前提の上ですが、見かければオーゾンヌを買っています。と言っても普通とても高いので、実はあまり持っていないのですが、、
この83は初めて飲みます。一般的評価もこの時期としては結構高く、期待して開けました。
第一印象は「とおっても、オーゾンヌしている!」と言う、とても客観的とは言えない感想でした。でも本当に「サンテミリオンのコート地区の、やはりオーゾンヌらしいワイン」でした。
色はオレンジが少々見られ、充分熟成していると判断できます。予想より早い熟成のようで、ちょっと意外に思いました。香りはとても複雑で立っているけど、明らかに普通飲むボルドーとは異質、やっぱりオーゾンヌです。
開けてすぐからテイストは充分、でもこの差を何と表して良いのでしょうか。このワインは決して「豊か」とは言えないでしょうね、果実味も枯れかけていますし滑らかでもありません。
でもとても奥深い物を持っているワインです。「豊か」じゃないけど、このワインの構成部品は驚くほど豊富です。ストラクチャーは網の目の様に広がってしっかりして、ミネラル分の多い、気概のようなものに溢れたワインです。
早くから豊かで甘く、飲みやすくてとても美味しい最近流行のワインとは、殆ど対局にあると思われます。(最近のオーゾンヌは変わってきたみたいですけど)
「良いか悪いかはあなた次第、オーゾンヌはそんなワイン。」、、って所です。
Ch. Ducru Beaucaillou 1982
さすがに素晴らしい!、これこそ優秀なメドックのお手本の様な感じがします。色はまだかなり濃く、最初のテイティングではまだタンニンが感じられ、充分な熟成にはまだ少々時を要するとおもわれます。
従って、今の段階では包み込む様な香りや広がりは、特には感じられないけれど、とにかく高い次元でのバランスの良さが特徴的です。
極めて洗練されていて、かつとても印象的なこのワインは、いわば今はフィネスの固まりと言って良いかも知れません。既にとても美味しいけれど、もう少し熟成を経ればもっと素晴らしいワインになるのでしょうね。
Chevalier Montrachet 1993
これは飲ませてもらったワインですが、ニーロンのシュバリエモンラッシェです。90年代前半、ブルゴーニュ白は91と93があまり良くない年らしいのですが、それだからこそ、開けてみる事が出来ると言えます。
Dom. Michel Niellonでも、このワインはやっぱりまだ堅いです。美味しいのは美味しいですが、真価を殆ど顕わしていないのでは、とさえ思います。
なぜなら、少し前、同じ93ニーロンのシャサーニュモンラッシェ・マルトロワを飲んだのですが、今の段階ではこちらの方がずっと開いていて楽しめました。
ニーロンのシュバリエモンラッシェを飲んだ経験は過去に1、2度しかないので、この後どうなるかは、正直予想がつきません。
Ch. l'Arrosee 1988
先のオーゾンヌの幻影を追想すべく、ラロゼの88を開けてみました。購入は92年、今は既に無い神戸の酒販店で買ったワインです。ラロゼを飲む機会はあまりありませんが、そのどれもが結構美味しくて、結構私のお気に入りのワインとなっていますが、この88もとても美味しいです。
オーゾンヌほど深淵では有りませんが充分深く複雑。とても豊かで余韻も長くサンテミリオンはコート地区の特性を充分感じさせて見事。オーゾンヌ83と張り合ってもそうひけはとりませんね。(値段は数倍違うけど)
買ったときの状況をはっきり憶えているワインの一つですが、美味しくて、7年間にわたって保管していて良かったと、しみじみ思いながら飲みました。
Grands Echezeaux 1990
世界的にみると、日本人はブルゴーニュが大変好きだそうですが、私もブルゴーニュのワインに関しては深い愛情を抱いています。
Domaine Gros Frere et Seour今やカルフォルニア、オレゴンをはじめとして、北部イタリア、オーストラリアやニュージーランドをはじめとする各地でピノ・ノワールは栽培され優れたワインが出来ていますが、ブルゴーニュのワインに代わるワインはやはり無いように思いますが、それは私だけの想いでしょうか?。
その中で、ワインバーなんかの市場として今一番不足しているのが、カルトなカルフォルニアワインと、飲み頃のブルゴーニュである由。
東京に行った時などはは95とか96とかの若いブルゴーニュを飲む事が有りまして、若いのにそれでもとても美味しく飲めて、感心する事が多いのですが、やはり「飲み頃」を迎えたワインは良いです。
グロ・フレール・エ・スールは今はグロ家の弟さんの方らしいですね。お兄さんのミシェル・グロの方のワインを飲んでみたいのですが、こちらは手持ちがありません。
最近本などでは、グロ家関連のワインの中では大柄でマッチョなタイプ、と言われていますグロ・フレール・エ・スールですが、今回飲んだこの90年のグラン・エシェゾーはあまりそういう感じは無く、ストラクチャーとフィネスに富んだ素晴らしいワインの様に思いました。
このワインも5年ほど前に買ったワインですが、ブルゴーニュの場合、良いワインが後年になって出回る可能性はかなり少ないため、愛好家はリリースと共に買う必要性があります。保管もボルドーに比べれば格段に難しいし、悩ましいワインではありますね。