昔は私もそうですが、ワインは1本ずつ買っていました。東京に住んでいた頃で、適当な保管の術も無かったし、自由になるお金もほとんど無かったからです。徳島に帰って、保管場所も何とかあって、別に依然とお金に余裕が有るわけでは無いのですが、気が大きくなったのでしょうか、幾つかのワインは3本以上買うようになりました。最初の1本は適当な時期に様子見で、2本目は飲み頃と思われる時期に、最後はそれ以降の楽しみに、とです。
一般に海外のワイン雑誌等では、概ねワインは1ケース単位で買うことを薦めていますし、そうしている方は多いようです。時間をおいて、1本ずつ飲むことによって、とても勉強になると言う理由もあるのでしょうが、日本では毎晩食事にワインを飲む習慣のある家庭以外では、普通の人には1ケースはちょっと持て余すのではないかと思っています。
しかしオークションなどでワインを買う場合、1ロットの本数が多い場合が多いし、後の配送の事も考えて、どうしても6本もしくは1ケース単位で入札せざるを得ないと言う理由もあります。
今月のワインは、偶然にもそういった、何本か買って、その後時を別にして複数回飲んだワインが殆どです。
変な話かも知れませんが、同じロットで仕入れたワインでも、複数回飲んで印象が同じワインもあれば、全然違うワインもあります。私の場合、どっちかと言うと違う場合が多いような気がします。
もちろんボトル差が有るでしょうね。それから時間を於いて、熟成が進んで居るのかも知れません。そのボトル差も、熟成のすすみ具合なんかの差も、共に何回か飲んで解る、とても興味深い事です。
それと、私思うのですが、どう言った時に誰と飲むかによってかなり違うように思います。
最近は東京に行くときは、事前にワインを(知り合いの)レストランに送ったり、自分で何本か持っていったりして飲んでいます。
ワインは静置しておくのが半ば常識化していますが、そう言う風に東京まで運んでって、友人たちと楽しく飲んだワインは、その常識に反して、どれもこれも素晴らしく美味しいのに気がつきました。
別にワインが場の主役でなくてもかまいません、気のよい友人たちとより楽しい食事の時間を過ごすために、美味しいワインはその最良のアシスタント役を勤めますし、また逆に楽しい雰囲気はそのワインの最良の味を引き出してくれるように思います。
ラヴィル・オーブリオンはすぐ隣のオーブリオン・ブランと共に、ボルドー辛口白ワインの最高峰と言って良いでしょう。
Ch. Laville Haut Brion 1982ただ生産量も少なく、やはりオーブリオン・ブランと共になかなか飲む機会の少ないワインですね。
82年まではラ・ミッション・オーブリオンと同じウォルトナー家の所有でしたが、83年よりミッションと同じく、オーブリオンのオーナーの所有となりました。
82は白は赤ほど秀逸とは評されていませんが、さすがにラヴィルは余韻も長く美味しかったです。
1ヶ月ほど前に届いたワイン。安いと思ってオークションで買ったのですが、昨今の円安ドル高、輸送料も含めると結構な金額になりました。
Echezeaux 1988 (D.R.C.)このワインは意外とちょっと未成熟な感じ、1年半ほど前にDRCワイン会で飲んだエシェゾーと感じがちょっと違いまして、期待が大きかっただけに、あれあれ、と思って、「ええい、ならもう1本だ」と次のルロアを開けてしまいました。
しかしこの5月に、もう1本を東京に持っていって飲んでみましたが、そちらはずっと良かったです。念のために、一緒に飲んだ良く知っている方に、「どうですか?」と聞きますと、「こんなもんじゃない?」と言う返事でした。
先に書いたとおり、DRCのエシェゾーの次に飲んだのですが、このワインはやはり良かったです。
Nuit St Georges "Aux Allots" 1989
Leroyこのワインについては以前にも書きましたので、詳しくは書きません。89のルロアは各種併せて6本位買って有ったのですが、もう2本になってしまいました。
これも最近届いたワイン。先のDRCと同じく、オークションにて安いと思って買ったのですが、なんやかんやで結局1本1万円近いコストがかかってしまいました。
Heitz Cabernet Sauvignon
Bella Oaks Vineyard 1990どうも未だに、1$=100円の感覚が抜けなくって、困ってしまいます。
ハイツは昔から高名な優秀なナパの作り手です。単一畑のワインとしてはこのベラ・オークスの他に有名なマーザス・ヴィンヤード(Martha's Vineyard)があります。
昔は有名だったハイツも80年代後半からは、あまりぱっとしない様ですね。そうは言っても、90のベラ・オークス、驚くような凝縮感や複雑さはありませんが、結構美味しいワインでした。
先月、ルイ・ラトゥールのドモワゼルの感想を書きましたので、今度は、同じ銘柄、同じヴィンテージのルイ・ジャドのドモワゼルを取り上げます。
Chevalier Montrachet "Les Demoiselles" 1985
Louis Jadotそんなに多くは買っていないのですが、こちらも複数本買っていまして、このワインも過去に数度飲んでいます。このワインに関しては、どのボトルも同じ様な印象です。
で、2つを比較すると、共に素晴らしい白ワインと知った上で、85はどうしてもジャドの方に軍配をあげざるを得ません。
ストラクチャーの見事さ、フィネスが更に備わって居るように思います。ちなみに価格の方も、近年のヴィンテージであっても常にジャドがラツゥールの少し上になっています。
1年半程前に、「59ワインだけを飲む会(フランス以外のワイン編)」と言うのを行いまして、その時も飲んだワインです。
Charles Krug Cabernet Sauvignon 1959以下で取り上げる数本のワインは、5月に東京に行った折にレストランで知り合いと飲むために、徳島から先送りしたり、徳島から担いでいったワインの一部です。
先月の53のボルドーではありませんが、このワインもテイスティングの段階で、「これは美味しい!」と思わず宣言してしまったワインです。
以前のボトルは、すでに果実味もかなり落ちている感じだったですが、このボトルは大違い。美しい果実味がまず感じられ、深い余韻が後を追いかけてゆきます。
こうなると、全く、良く熟成した秀逸なボルドーワインと、何ら変わるところが有りません。素晴らしいワインでした。
昨年5月にリリースされた、モラガの93です。モラガ・ヴィンヤードはカルフォルニアでもナパではなくって、ベル・エアーにあります。
Moraga Bel Air 1993作っているのは、この度飲んだカベルネ・ソーヴィニョンを主体とした赤ワインで、最近少量白ワインも作っているようです。(白はまだリリースされていないと思います)
私は良くは知らないのですが、この辺りは大変な高級住宅地だそうで地価もとても高く、こんな所でワイナリーをやっているのは、通常では考えられない由です。
生産量も少なく、メーリングリストに載せてもらう以外ではなかなか手に入らないと思いますが、私はこのヴィンヤードに訪問するという知り合いに頼んで、メーリングリストに加えてもらいました。
それで最初に買ったのがこの93です。ワインスペクテーターの評価は何故かあまり高くないのですがその他では好評ですし、生産量も少ないのでメーリングリストでもあまり買えませんが、新規リリースの94もこの5月に手に入れました。
そのメーリングリストと言っても、モラガは日本には送れないと言っていますので、自分で配送の手配を全て整える必要がありますし、本来必要でないカリフォルニア酒税も払っています。そうなると結構な値段についてしまうので、飲んで大したことが無ければ、来年からはやめよかなとも、思っていました。
で、このワインはとても美味しかったです。私の感覚では、93なんてとても若くてまだまだ手を出すようなヴィンテージでは無いのですが、これはもう完全に飲めるワインですね。
単に濃いだけのワインは、私は勘弁、なんですが、濃縮感がありながら全体として良いフォルムをしています。タンニンは相当有るんでしょうが、甘く熟成した性格を有していて、全く苦にはならないばかりか、かえって良いストラクチャーを与えています。
このワインは、著名なワイン醸造のコンサルタント、トニー・ソーターの手による物ですが、私はあまりカルフォルニアワインを各種飲んでいませんので、どう言うところが彼の特徴かは良く分かりません。
このベーレンアウスレーゼも東京に持っていって飲んだワインの一つです。澱が多い、古い赤ワインはなかなか持っては行きにくいのですが、その点、白ワインは比較的気が楽です。
Erbacher Marcobrunn Beerenauslese 1976今回も、甘口ワインはこのワインの他に、ムラン・トーシュ(Moulin Touchais)のアンジュー(Anjou)1959を持って行きました。(別に日に飲みました)
この両方とも、以前に飲んだことが有るワインですが、ムラン・トーシュの方がダントツに美味しいのが、これまでの何となくの印象なのですが、今回は全く逆でした。
このベーレンアウスレーゼは滅茶苦茶美味しかったです。最後に飲む甘口ワインは、本当に美味しい奴にあたりますと、それまでのワインを一気に蹴散らしてしまう威力があります。
このワインも何度目かのワインです。ここに書くのは2回目ですね。珍しいワインですが、その解説は、その以前のレポートを見てして下さい。
Vosne Romanee "les Gaudichots" 1988
Thierry Vigot-Battault畑の場所については、「(細かい事だけど)役に立つワイン知識」の項の中の「ヴォーヌ・ロマネについて」を参照して下さい。
飲むのは3度目となります。一番最初はなんか堅いだけだった様に思うのですが、だんだん印象が良くなってきます。
今回のはグラン・ヴァンを意識させる、見事なワインでした。もしかしたら、やっと飲み頃になってきたのかも知れません。