トップ «前の日記(2007年09月20日) 最新 次の日記(2007年09月23日)» 編集

xiphioの備忘録


2007年09月21日

_ [book] 「ワープする宇宙」(原題:Warped Passages)リサ・ランドール著

物理の中で素粒子物理と言う分野が有るわけですが(かくゆう私も昔は素粒子屋さん見習い)、普通はなかなか難解なので、人気本と言うのはあまりでないのですが、著者が美しく魅力的な女性と言うことも有ってか、最先端にもかかわらず非常に売れている(らしい)本です。巷の人気本など普通絶対買わない私も、これは買って読んでみました。それで、本日一応読了。画像の説明

奥付を見ると第1刷が6月30日ですが、私が買ったのは既に第4刷で8月25日となっています。一回でどの位の部数を刷るのか知りませんが、月に1度以上刷っている訳で、要するに予想外に売れて居るんですね。

まずこの本の題「ワープする宇宙」ですが、面白い題ですよね。ワープなんて言葉が出てくるのはなんか変、と思っていたら、監訳者あとがきにも有るように、ここでの「ワープ」と言う言葉は「歪曲した」と言う意味だそうで(そちらがこの単語の元々の意味でしょうが)、決してスタートレック等SFに出てくる「ワープ航法」たらとは何も関係が無いようです。

「宇宙」の方は原題はPassagesですから半ば翻訳時の意訳です。意味的にはあながち間違いでもないので許容出来ますが、「ワープ」の方をそのままカタカナにしたのは、明らかに注目を惹くことを狙っていまして、翻訳題はあまり内容を端的に表しているとは思えません。本来ならば「歪曲した余剰次元空間」とすべきでしょうか。

内容は、相対論、量子論から始まり、ひも理論、ブレーンワールド、そしてランドールさんらの提唱する、ブレーンと歪曲した余剰次元の話へと進みます。ですから、かなり盛りだくさん、ページ数も600ページ超と多くて厚い本となっています。要するに近代素粒子論の流れと総論みたいになってまして(特に前半)、とても有り難かったです。その部分を取り出して本にしても、充分価値あるものだと思います。

私が読んだ感想は、とても良い本でした。でもかなり昔の話と言えども、一応大学では専門だったので(修士まで行った気がする)読めましたが、単に興味があるだけ、と言う人が読んで解るかどうか、挫折せずに600ページを読めるかはやはり疑問です。しかし、読み飛ばしても先に進めるところは、その旨の記述がありますので、それに従うのも一法です。

最後に出てくるランドールさんらが提唱しているモデル、そうなる理由の細かいところはおいておくと、説明も上手く、まぁ何となくヴィジュアル的に納得していまいます。

読んで「わかったような気になる」、その様にさせてしまうのは、やはりよく書けている良い本だからですね。(本当にわかるのは、まず無理ですからね)私も、数々の疑問を残しながらも、ブレーンワールドのこの理論、まぁ、何とか、わかったような気がします。(ホントかなぁ)

しかし、とってもよく売れているこの本、最後まで読んだ人、どれだけ居るのかなぁ、、