2013年06月21日
_ [Traveler's diary] ポルトガル旅行(6):アルト・ドウロの Quinta do Vesuvio と Quinta do Noval 訪問
この日は、アルト・ドウロのポルトワインのキンタの訪問の日であって、今回のポルトガル旅行の、一番のハイライトでもある。
ポルトのガイア地区の試飲所だけではなく、ドウロ河上流のアルト・ドウロの葡萄園を直接訪れる素人の人はたぶんかなり少数。ボルドーのシャトーみたいに、一般の愛好家のヴィジットなんて普通受けていないだろうから、事前に各方面にお願いして、何とかアポントを取ってもらった。ポートの好みとしてテイラーとフォンセカだけど、キンタ・ド・ノヴァルのナシオナルの畑だけはどうしても見てみたかった。何とかその願いがかない、ノヴァルへのアポが取れて、もう1件ヴズーヴィオの畑と醸造所も見る事が出来る事となった。
取って戴いたアポイントは、10時にヴズーヴィオ、午後2時にノヴァルだ。ちなみに"Quinta do Vesuvio"は、今までずっと「ヴェスヴィオ」と呼んでいたが、現地ではこれでは通じない。「Vesuvio」は「ヴズーヴィオ」の様である。ヴズーヴィオは他のキンタに比べれば少々上流の方にあり、当初ポルトのホテルからの所要時間を二時間半とみて、朝7時半出発にしたのだけど、ヴズーヴィオに着いたのは11時少し前で、結局3時間以上かかった。お願いした運転手さんは、Antonio Carvalhoさん。高級なベンツで、ほぼ時間通りにホテルに迎えに来てくれた。彼はこの車で、この地方の観光ガイドをしているようだ。一日中一緒に居たけれど、とても良い人だった。運転も、結構安全運転で安心。
アルト・ドウロ訪問は、ポルトから結構遠いので、当初からなかなか大変だろうと思っていた。滞在するホテルを何処にするにしても、車で回る必要があり(これはワイン作っている所では何処でもそうだけど)、現地でドライバーかタクシーを雇わなければいけない。ポルトのキンタ訪問にはとにかくそれがネックだった。それを「ようこそポルトガル」で現地ガイドドライバーを紹介してもらえたのは、とても有り難たかった。
ポルトから高速に乗ってアマランテあたりまで、ここで高速を降りて狭い道をくねくね行く。すでにブドウ畑が広がっている。ここらはヴィーニョ・ヴェルデの畑になるらしい。実際にはここからレグアまで続くブドウ畑がヴィーニョ・ヴェルデのようだ。ここの田舎道を走っていると、道の脇のほとんどの家に、このブドウを庭木のように植えている。従ってそれは背が高い。日本で庭に松の木を植えるのとほぼ同じ感じで、家の庭の周りに数本の背の高いブドウの木が植わっている。これらはワインにするのだろうか?
レグア辺りからブドウの木の感じが変わってくる。良くボルドーやブルゴーニュで見るような仕立て方のブドウの木の列だ。だたし、山の急斜面にほんの細いテラス状を作り、そこに植えている。細いのでブドウの木二列がやっとと言う感じで、段々畑にもなっていない。山を見ると、山の斜面に間を開けてブドウの木の横筋が何本も走っている感じ。中には斜めの筋になって居る所もある。ドウロ河の両方の斜面にブドウの木が植わっているが、これだと耕作面積はそれほど稼げないだろう。それよりも、手入れや収穫は今までみたどのブドウ畑よりも大変だろう。
少しドウロ河の南側に外れてた道を行く。ドウロ河沿いに道があるかは分からないけど、二車線の割と広い道で、この道が一番の近道の様だ。山の向こう側でもやはりブドウ畑が続いている。あと見かけるのはオリーブの木のみ。
ヴズーヴィオでのアポントは、「10AM にSra da Ribeira (Vesuvio)にて、Quinta de Visuvioの醸造家Mario Natario(マリオ・ナタリオ)がお出迎えし、船で川を渡り、畑と醸造所へご案内致します。」との事だったので、その文面をそのまま伝えたのだけど、どうも運転手さんには上手く伝わっていなかったみたいで、彼はキンダ・ド・ヴズーヴィオの醸造所に直接行った模様。小一時間遅れた上に、なんだか待ち合わせの場所と違いそうなので、キンタに電話してもらおうかと思ったのだけど、元々電話番号さえHPに乗せてないので(ヴズーヴィオはmailのアドレスさえ調べても分からなかった)どうしようもない。キンタの建物らしいところに行き、車を降りてうろうろしていると、前から車が来る。その人に聞いて貰おうと、ドライバーさんに頼んで話を聞いて貰うと、有り難い事に我々を待っているはずのマリオ・ナタリオ氏本人だった。どうも川向こうで待っていたのだけど、来ないので一旦帰ってきた所らしい。もし時間通りにここに来ても会えなかった訳で、何が良かったのか分からない。
あとで自分は7?の生まれだが、ポルトのヴィンテージワインが無いと言っていたから、40少し前くらいか。ちなみに周りは恐ろしく静かな所で、その後色々見て回っている途中でも、誰にも会わないし、車が走ってるのも全く見かけない。
簡単な挨拶のあと、まずはすぐ、その彼の車に乗って山の上に向かう。坂が急で、テラス状になったブドウ畑の中、作業用の急斜面を車で上ってゆく。途中で色々解説もしてくれる。もう混植はしていなくて、ここの区画はこのブドウ、ここはこれ、あれは何々を植えていると言ってくれるのだが、見た目にはよく分からない。さすがにこの畑で働いてるやつだ。山の上はやはり見晴らしがよい。そこで、各ブドウ品種の特徴とか色々聞いてみる。
その後、車で最初に会ったあたりに行って、少し奥にある醸造所を見に行く。やはりかなり大きい。大樽がかなりな数並んでいる。反対側には、小さい、でもボルドーやブルゴーニュのよりは少し大きそうな古そうな樽がなた並んでいる、形もよく見るフランスのとは違うみたい。ちなみにこの樽1つが「1パイプ」、この単位はポルトについての本を読んでいると、良くできてきます。
次に上に上がってみると、大きな石の槽がならんでいる。間違いなく、足踏みでブドウをつぶす作業場だ。広いし、それにまたずいぶん有るのに驚いた。でも全部本当に足でつぶしているんだろうか?。そういうのは何でやっても同じな気がするけど。
その後また樽の並んだ所におりてきて、試飲。あらかじめテーブルに白いクロスにグラス、2000年のヴィンテージ・ポルトがおいてあった。マリオさんはソムリエナイフでボトルを空けて、試飲させてくれる。さすがにヴィンテージものは凝縮されており素晴らしい。プロでもない我々に新しいボトルを開けてもらうのには、少々きがひけたけど。日本からお土産を持って行ったせいか、あれこれ詳しい質問とかを色々したせいか、どうも結構気に入ってくれたらしくて、帰りに別の建物の前に車を止めて鍵を開けて入って行ったかと思うと、戻ってきたら手にした2007のヴィンテージものをお土産として渡された。
ヴズーヴィオは、ポルト生産地としてはすこし奥なので、来た道をかなり後帰り、小さな街ピニャに入り、ここで昼食になる。ドウロ河に面して景色の開けた、とても感じの良い岸にあるレストランで、なかなか良さそう。目の前の小さな岸に、ドウロ河クルーズの観光汽船が丁度停泊しかかっている。客は此処で下船し、しばし観光するのだろうけど、行くところあるのかなぁ?。料理は、2名様分からと但し書きが入った、魚が入ったリゾットを頼んだ。でこの料理、出てきた分量に本当に吃驚した。「深くてでかい洗面器に目一杯入っている」って感じ、注文量間違えたのじゃないかと、本気で考えてしまった。運転手さんは大体分かっていた様で、自分の分は頼のんでいなかったみたいだ。これがなかなか美味しかったので、結構食べたつもりだけど、3人で食べても結構残ってしまった。
此処での昼食が終わるとすでに3時である。既に1時間弱遅刻。ここからはノヴァルまでは近いので、そう迷惑はかけないだろうと思っていたのだけど、運転手が道を間違えたので、到着が4時少し前になる。私が持って行った、拡大した地図がかなり役に立った。
キンタ・ド・ノヴァルへは、昼食をとったピニャから北の方へ少し行った、ドウロ河の支流の東側だ。運転手は当然よく知って居るものと思っていたが、ナビを入れかけて見つからない様で車を走らせる。暫くすると道沿いにキンタ・ド・ジュンコが出てきた。私の地図では、このキンタは川の反対側だ。運転手も私の地図を見て、道を間違っていると分かったらしい。
また街まで戻って。橋を渡って支流の反対側を行く。十数分も行くと斜面の畑に「NOVAL」と書いた看板が見える。その上の建物がキンタ・ド・ノヴァルだ。ナシオナルの畑をもつ特別なキンタで、当然私にとっても特別。ポルトに来た目的は、そのナシオナルの畑を見に来たからと行って良い。下方の道を少し通り過ぎてから右に大きく曲がり、ノヴァルの建物への道に入る。ここはやはり特別で、まるでボルドーのシャトーへの入り方のように、建物への道は棚仕立てにされたブドウに飾られていて、瀟洒ですらある。建物に着くと、運転手さんが、ここから入るんだ、と言ってくれて入ると、若い素敵な女性が対応してくれた。その、Catia Mouraさんは我々の案内役であるらしい。戴いた名刺には"Marketing Communication & Hosting Manager"との肩書きにななっている。後で話を聞くと、フランス人なんだそうだ、ちなみにノヴァルは1993年よりフランスのAXIAの所有となっている。
まづ、テラスに出て、眼下のブドウ畑の説明を受ける。今日は快晴でとても気持ちがよい。各ブドウの木の品種を並べて植えた、サンプル列を過ぎて建物の上と言うか、背後に回る。ナシオナルの畑は、建物のすぐ背後だという。背後といっても急斜面にあるので、上方と言っても良い。その見せてもらった畑は本当に、想像以上に狭い。家の裏なので、鶏を飼っていたり、豚を飼っていたりもする。本当にそんな中にナシオナルの畑はある。その一列と、それに連なった少々下方に見える小屋の前まで続いているらしい。ナシオナルの畑のブドウの木は、木の根に近い方が他の木の様に太くなく、比べると少し弱々しく見える。樹勢も当然ながら弱いように思える。
「これがナシオナルの畑の印なの」と言われて見ると、脇の木の棒に、ようやく読める字で「NACIONAL」と刻印されている古いブリキか何かの金属板が付けてある。
畑を見た後は背後から家に入ると、ヴズーヴィオで見たのと同じような、石の槽が並んでいる。しかし一回り小さく、数も少し少ないかもしれない。しかしヴズーヴィオのが大きすぎた、とも言えそうだ。端に、足踏み破砕をシリコン樹脂とステンレスに換え、機械で代用する施設もある。普通そんなとこまで人力を使用する必要はないので、とても実用的な事だと思う。
その後、下に樽が並んでいる様子を見ながら、醸造所の脇の部屋に入ると、そこがテイスティングルームの様だ。結構広くて、多くの人が訪れる事を想定している様だ。テーブルの上には、テイスティング用のボトルが、、うーん、完全に10本以上は並んで居る。
ノヴァルでドライなスティルワインを作っている事は、ここに来る前に少し調べていて初めて知った。最初の3本はその赤ワインだ。(ポルトでない)これらも試飲しますか?、と尋ねられたが、結構興味が有ったのでYESと言ってしまった。最初は軽め、次のトゥーリガ・ナショナルのみ、3本目がその他の葡萄との混合らしいが、3本目の方がトゥーリガのみより複雑さもバランスも有って好ましい。これはなかなか良い。
その後は、ポルトが10種類ほど(たぶんそれ以上、ヴィンテージ物でも何種類かあった)並んでいるが、とても全部試飲できないし、実はあまり下位の物には興味がないので、「あと3種類ほどで結構です」とお願いした。飲まないで吐き出してゆけば大丈夫だろうけど、なにせ、この並んでいるワインは全部未開封で、この前行ったサヴォアの作り手での試飲とは違う。プロでもない私のためだけに全部開けてしまうのは、本当にもったいない事だ。それに一時間以上遅れてきているので、あまり引きずるのもどうかと思った(畑を見てる時はそうは思わないけど)。最初がLBV、次がいきなりタウニーの40年物、最後にヴィンテージ物(年度、記憶に無し)を試飲させて戴いた。
ポルトのホテルに帰ったのが、7時少し前。おおむね計画より1時間ずつ遅れた感じ。午後8時前から、やはり娘の先導で、レストランに。ネットで調べて評判の良い店らしい。古い建物の2Fで、こちんまりしている店だけど雰囲気が良い。サービスしているお姉さん二人は、本当にとても感じがいい。頼んだ料理も、とても美味しかった。
今回の旅行で行ったポルトガルのレストランは、星が付きそうな一流店には一度も行かなかった事もあるけれど(リスボンではファドハウスばかりだったし)、ポルトガルのワインしかリストには載っていなくて、そしてそのワインがまたとても安い。大体10ユーロから20ユーロだ(これ、レストランでの価格です)。ここでも、高めのヴィーニョ・ヴェルデを頼んだけれど、確か21ユーロだった。この旅行中、赤も白も何種類かポルトガルのワインを飲んだけど、トゥーリガの赤よりも、ヴィーニョ・ヴェルデの方が総じて好ましく思えた。