2015年01月12日
_ [book] 「絶対音感神話: 科学で解き明かすほんとうの姿」 宮崎 謙一
昨年暮れから、読んでいた本です。今2/3少し読んだところですが、本書の言いたい肝要な所は分かった感じですし、少々驚きも多いので、読了を待たずに日記に書きます。
私の様に、楽譜が読めない(つまり、見ても音の上下しか分からなくて、和音や旋律が特定できない)者にとって、「絶対音感」と言うのは、ごくごく素直に憧れでした。合唱団で歌ってても、ピアノとかで何度か弾いてもらって、きちんと音を取るまでは、正直全く歌えません。優れた音感、特に「絶対音感」をもし持っていれば、初見からでも、少なくても音は外さないでしょうから、キチンと歌えるし、それに凄く格好いいですヨネ。
この本を手にした時は、ごく単純に「絶対音感」にまつわる色々な知識の話の本だと思って買ったのです。著者はこの「絶対音感」を研究しているで、今まで行われた色々な実験や、その結果を経て、考察を加えています。
そこで本が明らかにした事は、相対的な音感「相対音感」こそが大切で、「絶対音感」は音大の試験とかには便利だけど、後年、絶対的な音感をすり込まれている事は、むしろ音楽認識の上で妨げにもなる可能性がある、と言うことのようです。
当初私などは、絶対音感と言えば、「比較する対象なしに、音階が分かる能力」と言う位にしか認識していなかったのですが、幼年時にキチンと絶対音階を教え込まれた人は、どんな音を聞いても、自動的に(無意識に)音階がポンポン出てくるみたいです。教わる時はA=440Hzとして教わるらしいので、もし実際にちょっとピッチが違っていたり(数ヘルツ位は良く有る話らしい)、ピッチを下げて演奏するのが良く有る古楽などに対応するのが大変なのは、認識が無意識下で行われることを考え合わせると、容易に分かりますね。更に、先に絶対音感を持っている故、相対音感をキチンと持たない可能性も有るとのことですから、、
この事は、現在の日本で、音楽大学入学者のかなり人が、幼年時に絶対音階教育されてそれを既に身につけていて、その上で音楽家を目指していることに対しての警鐘にもなりそうです。
追記(13日):本日読了
最後に行くに従って、色々な実験結果の考察をふまえ、本書の結論がより明確になっています。結局「絶対音感所持者は、ピッチが柔軟に変化する事が多い実際の音楽現場の中では、相対音感しか持たない人に比べると音痴とさえ言える」と言う結果に成っています。要するに、絶対音感をだけを目指す幼児教育は、あまり良くは無い、って事になりますね。
それは本の最初で示された、音を聞くと殆ど無意識にすぐさま音階名が出てくると言う、絶対音感所持者の特徴を考えると、しごく当然かも知れません。現在音楽大学入学者の大半が、絶対音感を持っているらしいですから、実際の一流音楽家達は、子供の頃から持っていた絶対音感の縛りを乗り越えて、演奏家として活躍している事になります。この本にも、その様な演奏家のケースを、2、3挙げています。
実際は、「絶対音感を目指す」と言う明確な早期教育ではなく、ヤマハとかの普通の幼児期音感教育で絶対音感を習得する事が多いらしいです。この本にはネガティブな面が多く出てきますが、音感がかなり鈍い私などには、あとで演奏家として苦労する事もあるかも知れませんが、早い内に絶対音感を身につけてたお陰で、その後の音楽に触れ音楽を操る場面においてそれが楽しくなる(容易に理解出来るので)、少なくても音楽が嫌いにならない面において、すこしは役には立っているのでは、とも思います。